結婚が持つ、美しい矛盾
週末、妻と二人で過ごした。
桜を見たり、買い物をしたり、カフェでぼんやりしたりした。
そんな中、妻がポツリと呟いた。
「あなたと結婚してよかった」
僕も、同じことを考えていた。
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結婚は素晴らしいものだと思う。
ガラクタが宝物に変わる。毎日に、キラキラした光が溢れ出す。
しかし、である。
こんなに素晴らしいものなのに、僕らはたいてい、人生で一度しか結婚を経験することができない。
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もちろん、離婚すれば、結婚を複数回、経験することもあるだろう。
逆に、一度も結婚することがないまま、生涯を終える人もいるだろう。
でも、僕たちは基本的に、「一人の人と、一度だけ結婚する」という価値観のもとに生きている。
こんなに素晴らしい結婚を、一度しか体験できない。そういう矛盾を抱えた世界だ。
この矛盾を、僕たちはどう解釈したらいいのだろう?
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実は、こうした矛盾は、結婚に限った話ではない。
そもそも、「人生」自体がそういう設計になっている。
山あり谷あり、時には絶望と出くわすこともあるけれど、それも含めて人生は素晴らしい。
しかし、この素晴らしい人生も、僕たちは一度しか経験できない。
死ねば、すべて終わりだ。
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では、逆に考えてみよう。
つまり、一度しかできないから、それを素晴らしいのだと感じられる。
人生をともに過ごす、たったひとりを選択すること。
それが一致した時の感動。
ありふれた自分にも与えられる、運命。
僕らは、この素晴らしい結婚を、一度しか経験することができない。
しかし、たった一度だからこそ、それを美しいと感じられる。
この矛盾は、計算し尽くされた黄金比なのだ。
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週末に見た桜は、まだ綺麗に咲いていた。
あと一週間もすれば、それも散ってしまうのだろう。
しかし、決して悲しくはない。
散ってしまう桜は、だから、僕らがそれを美しいと感じる理由になる。
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