感情の旅

生まれたての感情を、心地よく伝えたいなって思う。

傷つくのがこわくて、あるいは大人な自分でいようとして、感情をガマンしてきたことがたくさんあるけれど、それってあまり環境にやさしくないのではと思い始めたから。

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例えば、親、恋人友人、あるいは社会が、あまり自分をかまってくれないとする。

まず寂しい。でも、言ってもしょうがないからか、重いと思われたくないからか、寂しい気持ちを表現するのをガマンする。

すると、だんだんと寂しさに悲しみがまじってくる。なぜ自分はこんなに寂しいのに一人なんだ・・と悲しくなってくる。西野カナとか聞いて（わたしは聞いたことないけど）、ちょっと涙を流してみたりする。切なくて、悲しくて、ロミオに会えなかったジュリエットのように胸が引き裂かれる。

でも、今こんなに悲しくて震えていることを、表現しない。イタいと思われるかもしれないし、「だから何？」と言われたらショックだし、弱い自分はだせないし、悲しい気持ちを表現するのをガマンする。

そして、悲しみつかれた後に、だんだんと不安が持ち上がってくる。私のことを大切に思っていないんじゃないか、本当は遊びなんじゃないか、くびになるんじゃないか、軽んじられているんじゃないか、今頃だれかとあってるんじゃないか、Facebookはオンラインになっているのか・・・携帯でもあれば見てしまいたくなる。ちょっと、おどろおどろしい感じになってくる。

でも、こんなに不安で今にもSNSをハッキングしそうなことを、表現しない。やばい奴と思われたくないし、嫉妬はするよりされる方がいいじゃない、とか考えているかもしれない。こんなダメな自分はだせないので、不安な気持ちを表現するのをガマンする。

不安のあとは、怒りがやってくるかもしれない。そもそもなぜ自分がこんな仕打ちをうけないといけないのか、相手は愚鈍すぎるしわがままだ、自分の魅力をわかっていない。でもこんな怒りをぶつける機会をもてないままでいるとしたら・・・最後は「悟り」なのか「虚無主義」なのかよくわからない無気力がやってくるかもしれない。

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感情をガマンすると、感情は居場所をうしなって、違う形に変化していく。寂しい気持ちを抱く自分を許せない時、それは悲しみに。それも許せなければ不安や怒りに・・・といった具合に。

こうやって、自分の中で決めた「自分は◯◯であらねばならない」というMYルールのもとに、感情は生まれて、裁かれて、却下されて、代わりのものに形を変えていくことがある。感情は旅にでる。

旅にでてしまった感情は、姿形をかえて、やがて周りの人も、自分でさえも、生まれたときの姿を忘れてしまう。生まれたての感情は、旅をすすむにつれ、何層にも鎧をかぶって、だんだん重くて、かたくて、ちょっと怖い感じになる。

逆に、今自分が、あるいは目の前の誰かが、ある感情に包まれているとする。その時あらわれている感情の旅の軌跡を辿ってみよう。「あいつを許せない」「絶対に間違っている」「もう死にたい」・・・今はこんないかついトーン（感情）をしていたとしても、旅の初めでは「一緒に遊びたいな」「かまってほしいな」といった可愛い感じだったかもしれない。熟成された感情のほとんどが、旅のはじめはそんなもんだ。

カウンセラーの仕事の一つは、一緒に様々な形に姿をかえた感情をみて、旅の軌跡を振り返り、生まれたまんまの感情、すなわち今ある感情の原点に立ちかえることだ。そして、一度却下され押し込まれてしまった感情を、今一度ゆっくり味わって表現してみて、その感情を手放していく。さらに、その感情を生む原因となった、自分の中で決めたMYルールを調整することもある。

ここで私が提案したいのは、カウンセラー顔負けの心理分析力をつけましょうってことでは勿論なくて、もっと自分や他人にとって、わかりやすい自分になるのもいいんじゃないのってこと。

「結局人の心はわからない」と希望をこめて信じているので、皆で心理分析力を鍛え上げる以上に、シンプルに感情表現しあえる環境作りの方が、エコなんじゃないのってこと。

だから、生まれたての感情を、心地よく伝えたいなって思う。

「生の感情を表現することは、子供じみている・相手を傷つけるから、感情はガマンしないといけない」という常識があるとすれば、そんなマッチョ（？）な生き方を、私は自分の人生では採用しない。

子供じみている・相手を傷つけることがあったとすれば、それは表現方法の問題なのだから。

だから、傷つけたりムカつかせたのなら、潔く謝るし、できる範囲で改善する。それでも、寂しいとか一人でいたいとか、好きとか好きじゃないとか、傷ついたとかウケたとか、できるだけ面白おかしく、押し付けがましくなく自由に、これからも言葉や態度で表現していきたい。

感情の表現を一生ガマンしつづける人生と、最初はうまくできなかったとしても心地よく感情表現していこうとする人生だったら、後者の方が生産的で軽やかで、私好みである♪

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