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炭と墨
炭と墨に毒された男は、今日も、筆を動かしている。
せっせと、使い古されたマット紙に筆先を滑らせる。
男は、本当は「墨」と書きたい。だが、何度やっても文字が潰れてひとつのかたまりになってしまうため、「炭」で代用している。
炭、炭と書く男は、決して楽しそうではない。
むしろ辛そうに、苦悶そうな表情を浮かべ、男は薄い墨に先をひたす。
使い古されたマット紙は、真っ黒になっては真っ白になり、真っ白になっては真っ黒になる。
炭と墨に犯された男の肌は、今にも弾けそうなほどにぶすぶすとくすぶっていた。
くすぶりながらも、男はマット紙に筆を滑らせる。
滑らせて、筆のちぢれた毛が全て抜けおちるまで、男が弾けてしまうまで。
マット紙は、ただただこう叫びたいのだろう。
あのぅ、自分、あんま書道には向かないん・・すけど・・・