ふすまトンネル
ふすまに穴が開くと、そこはふすま列車のトンネルになるのだ。
真夜中、誰もが寝静まった後、ふすまの穴は一瞬丸く暗く大きくなる。
その、数秒しか現れないふすまトンネルを通り、ふすま列車が
「ふす、ふすま、ふすふす、ぼー、ふす、ふすま、ふすふす、ぼー」
と汽笛を鳴らしながら、サイよりも速く、ふすまからふすまへと走り抜けていく。
まるで示し合わせたように、ふすま列車が近づくとふすまトンネルの門が開く。
でもたまに、ふすま列車が走りながらふすまの壁に迫ってきたとき、寝ぼけたふすまトンネルが門を開けるのを忘れるときがある。
そうなると、ふすま列車は見事にふすまの壁に激突するのだ。
押し入れの整理をしていると、全く見覚えのない、さびれた小さな列車が見つかるときがあるかもしれない。