益虫詐欺
「僕は益虫です、どうか、命だけはお助けを」
農作物にたかるカメムシは、涙ながらに訴えかけてきた。
こいつらは正真正銘害虫だ。
だが、どうにも断れず、結局僕はそのまま野放しにしてしまうのだ。
まあ、益虫と言っても、結局は畑に害を及ぼすんだろうな、と思ったが、意外にも彼らは恩を仇でうるつもりはないらしく、草の汁を吸うこともなく、大人しくしていた。
思ったよりもカメムシというのは良いやつなのかもしれない。
ある時、畑に水をやりに来ると、トマトをなめくじがしゃぶっていた。
思わずひっぺがすと、僕の手の中でなめくじは騒いだ。
「私は益虫です。どうか、どうか命だけは」
僕ははあ、とため息をつくしかなかった。
前のカメムシのこともあり、結局僕はなめくじをも見逃すことにした。
だが、その考えは甘かった。
数日後、全てのトマトが消えた。
トマトの苗に張り付くなめくじは、でっぷりと太っていた。
やられた、と僕は思った。
後で、なめくじとカメムシは共犯だったということがわかった。
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