
からなしつむり
無意識だったんだ。
カタツムリなんか引っ張り出すつもりはなかったんだ。
酔い潰れて家に帰り、目が覚めるとぬるぬるしたうずまき殻が落ちていた。
そしてその横には、なんとも貧相な、干からびたカタツムリのなきがらが横たわっていた。
殻のないカタツムリは、なんだかさきっちょの方が細っちょろくて、何かに似ていると思ったら大根の根っこだった。
あ、見てはいけないものを見てしまった。
目を背けようにも、これは自分がやったことなのだろうから、どうにかせねばならない。
このカタツムリだって、好きでこんな裸体をさらして干からびたわけではないのだから、罪滅ぼしをしなければならない。
とりあえずその殻を、水道水で綺麗に洗い、エタノールを染み込ませたティッシュで磨いた。
そしてカタツムリの体をそっと持ち上げると、飛び出た目をチョンと押さえて、殻の中にしまった。
その今にもちぎれそうな体の先っちょはするすると殻の中に収まっていった。
これがなんともクセになる感覚だったのだ。
ついつい止まらなくなり、ずっとカタツムリを殻の奥の方へ、奥の方へと押し込んでいってしまう。
カタツムリの体はなんの抵抗もなく、押されるがままに殻の奥へと潜り込んでいく。
指が届かなくなるはずなのに、もっともっと深くまで・・
ぐんぐん、ずるずる・・・
自分ごと、殻の中に入ってしまったという事実に気づかないまま、俺の一生は終わった。