ラッパからもぐら
ラッパから出てくるのは、いつだってもぐらと決まっている。
だから必然的に、金管楽器のコンサート会場からは、もぐらが次々と這い出てくるのだ。
吹いている途中に、手元から止めどなく溢れ出すもぐら。
どこから出てくるのかは不明なままだが、掃除しても掃除しても、中には何も詰まっていない。
どうしたことか、演奏中にしかもぐらは出てこないのだ。
たまに、愛用のラッパから出てきたもぐらが、他の演奏者のもぐらと恋に落ちることもある。
そうなった場合は、温かい目でうちのもぐらを応援する。
その恋が成立し、もぐらたちが正式な夫婦になった場合、自分も、相手のもぐらの元親である奏者と恋をする事ができるのだ。
・・だが、今のところ、うちのもぐらは全員恋に奥手なのか、なかなかアプローチをせず、そのうちに相手はどこかへ行ってしまう、ということの繰り返しだ。
それと同時に、自分にもその手の話は一向に回ってこない。
もぐらは主人に似ると聞いたが、到底信じるつもりはない。