リンゴ爆弾
どうやら、リンゴが逆さまになると、世界は滅びるらしい。
全てのリンゴ畑には監視員がつきっきりになり、リンゴが木から落ちて逆さまになるのを防いでいた。
町中にポスターが貼られ、「リンゴを逆さまにするな」と言う文句は、挨拶よりも耳にする回数が多くなっている。
リンゴを回収して、埋めるなりなんなりすればいいだろう。
でもだめなのだ。
どうやら、リンゴを埋めると、宇宙ごと滅びてしまうらしい。
何故こうも、リンゴの存在は変わってしまったのだろう。
少し前まで、甘くてみずみずしくて、可愛らしい果物だったのに。
今では真っ赤な時限爆弾そのものである。
街からは活気がなくなり、皆、リンゴのない家の中でひたすら震えて過ごすしかなかった。
そのうち、潰れた店、古い家の老朽化が進み、街はどんどんさびれていった。
一体何年間、人に会っていないだろう。
そこで気づく。
もしかすると、もうこの世界は滅びているんじゃないだろうか。