アイルランドに行きたい。この教会で、この音楽を聴きたい。
ここ最近ずっと繰り返し聴いているのがこちらの音楽です。昨年11月に出会いました。
ビオラとピアノのデュオですね。アイルランドの教会で演奏しています。
ビオラ奏者は Caoimhín Ó Raghallaigh です。日本人には絶対読めないと思うのですが、カタカナで書くと、クイヴィーン・オラハリッグさんです。アイルランドの方のお名前の発音は、まったく謎に満ちています。
ピアニストは Thomas Bartlett です。こちらはアメリカの方で、トーマス・バートレットさんです。うんうん、発音は分かりやすい。
ビオラとピアノのデュオって、私は初めてです。とっても柔らかで優しい雰囲気ですね。それぞれの音が、低音すぎず、高音すぎず、ちょうどいい。どちらがメイン、またはベース、という分担は感じられず、二人してのびのび演奏しています。
教会で、というのもいい。ダブリンの教会です。行ってみたいなあ、アイルランドに。この音楽を聴きに、この教会へ。今年はもう終わってしまったけど、伝統音楽のフェスティバルを開催するような教会みたいです。
この二人はCDもリリースしています。ありがたいことに、すべて youtube で聞くことができます。
こちらの曲もとても素敵。冒頭のピアノが本当に柔らかな音をしています。
こちらも気づくとyoutubeの画面を眺めたまま、ぼんやりと聴いてしまいます。映像のせいか、雨を見ている気持ちになる。
二人の音楽は、全体的に少しけだるいアンビエントな雰囲気ですが、ところどころ、キラキラっと光ったり、ワクワクするようなリズムになったりします。そこがいい。
この二人は元々、The Gloaming/ザ・グローミングというバンドのメンバーです。The Gloaming は、アイルランド出身者とアメリカ出身者から成るバンドで、アイリッシュ伝統音楽と現代音楽が融合したような世界観を創り出します。私なんかにはうまく説明できないけれど。
The Gloaming では、このライブが好きです。
私が世界で一番凄いと思っているフィドラーであるアイルランド出身の Martin Hayes/マーティン・ヘイズがリードする曲です。The Gloaming の曲はボーカルが入ることが多く、マーティン・ヘイズのフィドルも少し控えめな印象なのですが、この曲は珍しくインストのみ。フィドルとピアノが絡み合う部分にはうっとりします。
ちなみに「私が世界で一番凄いと思っているフィドラー」は、マーティン・ヘイズの他にスコットランドとデンマークにも一人ずつおりまして、その二人についてもいつか書きたいと思っている次第です。もうね、みんなみんな世界一。
マーティン・ヘイズは、アメリカ出身のギタリストの Dennis Cahill/デニス・カヒルと共に何度か来日しています。二人のライブを間近で体験したときには、なんというかどこか遠くへ連れていかれるような感じがしました。曲の始まりと終わりでまったく異なる場所にいるような感覚になるのです。
こんな海外のフェスに行ってみたかった!
マーティンがどんどんトリップしていく先に、デニス・カヒルがギターを抱えて食らいついていく感じ。二人がしっかり見つめ合っていることから、この瞬間に二人して音楽を創っていることが伝わってきます。
アイリッシュ音楽はよく「官能的」だと表現されるのですが、私はこの二人の音楽でその意味が分かるような気がしました。音楽を介した愛の交歓を目撃したような。
いつかもう一度、彼らの来日ライブを楽しみにしていたのですが、残念ながら、本当に残念ながら、2022年にデニス・カヒルが亡くなってしまいました。その当時、マーティンは「Letter To Dennis」と題した長い長い文章をFacebookに公開しています。
もう、マーティンとデニスのライブを体験することはできませんが、こちらの二人の音楽は、いつか、アイルランドで、あの教会で、聴くことはできないだろうかと希望を持っています。
ビオラとピアノで創り出される柔らかで優しい世界に浸ってみたいものです。