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手紙の時間

手紙が届きました。鳩居堂の封筒と便箋で。ハリがあるのにやわらかな手ざわりの便箋に、とめ・はね・はらいも丁寧な文字が並んでいます。平仮名の「す」の筆跡が印象的で、二画目の丸く返した線がとても大きな円を描いています。それがふんわりとして可愛らしく。

返事を書きます。嵩山堂はし本の封筒と便箋で。電子メールに比べて、手紙は少しばかり緊張します。選ぶ言葉だけでなく、文字の形までもが「私」なのですから。いろいろな筆記用具で、いくつかの文字を試し書きします。これも慎重になります。選ぶ筆と便箋の相性までもが「私」なのですから。自分を多面的に試されているようで怖いのですが、このドキドキは嫌いではありません。言葉を簡単にコピペしたりデリートしたりできない難儀さえ楽しんでいます。

手紙を書きながら、ふと考えます。手紙をくれたあの人も、こうやって一文字一文字を大切に重ねて綴ってくれたのかと。そして想像します。いつ、どこで、どんなふうにして手紙を書いてくれたのだろうかと。書き損じた一枚があったのだろうかと。相手を思うこころがどんどんと広がっていくこの時間を、とても豊かに思います。

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