未経験の僕が仕事を辞めて学習塾を開校する話その10―損益分岐を考えよう
損益分岐を考えよう。
損益分岐点の計算は,いろいろ試行錯誤しました。
想定する生徒数と授業料のかけ算で売り上げは計算できます。
固定費用を計算すれば,それで損益分岐は出ますが,授業料と上限の生徒数をどのくらいに見積もるかが悩みどころです。
僕の場合,コンセプトがコンセプトですし,
成績アップ!とか○○高校合格!を目指さないと断言してしまっているので,正直言うと,生徒数は簡単には増えないだろうと思っていました。
なので,とりあえずの目標を1年以内に黒字化することとしました。もしも生徒さんがひとりも来なかったら,ゼロからやり直しだと思っていましたが,なんとか目標達成できました。ホントに感謝しかありません。
個人塾さんでも,当月から本気で集客すれば10人ぐらいは集まるかもしれません。今なら僕も,やり方次第で当月10人ぐらいは集める自信はあります(中には1年で50人とか集めている凄腕塾長もいます)。ただし,やりたいことがやれなくては本末転倒なので,生徒数だけに執着しないで欲しいと思います。
そして,ゆっくり時間をかけて地域の信頼を得ていくほうが,中長期的にはうまくいくと思っています。
目標をどのくらいにおくか。
まずは目標の年商を考えます。
目標の年商は 10,000,000 円。
利益率 70% として,粗利 7,000,000 円。
多いと感じますか?
それとも少ないと感じますか?
何を求めるかによりますが,僕にとっては十分です。
一千万の年商で,利益が7割取れるような仕事はそんなたくさんないと思います(※一般に個別指導塾の場合,人件費がかかるので利益率70%は難しい印象です)。
コストをなるべく掛けずに,一千万の売り上げを目指す。
今のところ僕にとってはこれで十分だと考えています。
後述しますが,ひとつは立地条件が悪く,生徒がたくさん集まらないことが想定できることと,ふたつ目にテナントの規模を考えると生徒数の上限を高く見積もれないためです。
三つ目として,なにより生徒がたくさん来ると,僕がいちばんやりたいことがやれなくなるからです。
(※ちなみに学習塾の経営者の平均年収は500万ぐらいだと言われています。)
年商が一千万円超えたくない理由は他にもありますが,まぁ僕の場合は立地条件が最悪で,かつ場所を変えることができないという条件を最初から背負っていたので,集客は半ば諦め気味で考えてもいました。
なので,生徒数は30人を上限としています。
これって一般的な学習塾を運営するにはだいぶ少ない数字なのです。大手フランチャイズの運営する学習塾では100人規模の生徒をかかえることを想定していますから,それと比較してもものすごく少ないです。
でも,たくさんの生徒が見込めないから仕方ないんです。
でどうしたかというと,単価を上げました。
ひとりあたり30,000円ぐらいの単価で計算してみましょう。そうすると単純計算で単月900,000円の売り上げです。
900,000円 × 12ヶ月 = 10,800,000円
目標値は達成できるでしょ。
客単価をあげると生徒に負担がかかるので,可能な限り下げたいと思うのは人情でもありますが,提供側の負担も考えなくてはいけません。
同じサービスをずっと続けていかなくてはいけない使命と責任がある以上,いたずらに安価に設定して,安定したサービス供給ができなくなる,みたいなことにならないようにしなくてはいけません。
もちろん目標年商を増やすのなら,単価か生徒数を増やす必要があります。僕の計算では年商が足らないとすれば,生徒数の上限をもっとたくさんにして,集客に力を入れなくてはいけないですね。
集客には商圏内の戸数と世帯年収,対象となる年齢の人口,また,付近に学習塾がいくつあるか?や地域の教育熱みたいなものも絡むので,そういったそもそものニーズがどれぐらいあるのかを無視して計画しても,計画倒れになること間違いなしです。
想定する生徒数を甘く見積もるとたぶん痛い目にあいますね。
繰り返しますが僕の場合は集客が相当たいへんそうだったので,単価を上げて計画しています。単価があがれば集客はさらに難しそうだと思うかもしれませんが,わずかでも必要としてくれる層は必ずあります(もちろん見合うサービスを提供することが前提ですけれど)。
個別指導は単価を上げやすいですし,集団指導は生徒数上限を上げやすいです。これらはしかし,塾をつくっていくうえで重要なファクターなので単純に売上額だけの問題にしてほしくないですね。
固定費を見積もる
さて,固定費を考えましょう。
学習塾の場合,そんなにたくさんの固定費はありません。なので,会計処理が得意でないひともがんばれば自分でできます。
・家賃
・光熱水費
・教材費
・人件費
・印刷費
・通信費
・広告費
ぐらいでしょうか。
規模によるので,コストの幅はものすごく広いでしょうね。
僕の塾では,もろもろ含めて固定費1ヶ月250,000円ぐらいです。
客単価を30,000円で計算すると,生徒9人で黒字化します。
損益分岐点を考えると,客単価30,000円に設定すると割と早い段階で超えます。生徒9人ぐらいならなんとかなりそうだ,と思いませんか?
しかし客単価30,000円はどう感じるでしょうか。
一般に学習塾の授業が一ヶ月30,000円と聞けば,少し高額な気がしないでしょうか。
これもメインターゲットをどこにおくか,どのような内容にするのか,どのぐらいの時間をかけるのか,といったコンテンツ次第なのですが,現実的に「雰囲気」はすごく重要で,中学生の一ヶ月分の授業料が3万円と聞けば,なんとなく高いような気がしてしまうものです。
そうするとやっぱり集客には響くんですね。
まとめ
正直,このあたりのお金の話は,迷いに迷いました。
ただこれって塾のコンセプトを体現する大事なことなので,損益分岐点だけで簡単に決められる話でもないですしね。
単価だって2万円ぐらいにしたいなーと思ってもいましたが,実際に始めてみると3万円でも安いんじゃなかろうかと思うこともあります。
うちの場合,ほとんどの子どもたちが毎日来て3~4時間は居ます。
そうすると時間単位で計算してみると,3万円だとしてもものすごくお得な金額なのですよ。
のわりに,他と単純比較して高いと思われてしまうのでなんとなくモヤモヤはしてます。
けれども
結局はどんな塾にしたいのかと,そのためにはいくらお金がかかるのかと,最終的な売り上げをどのぐらいにしたいのかを考えて,こねくりまわして単価を決めていかなくてはいけません。
その価格で生徒が来てくれるかどうかも考えなくてはいけませんし,どのあたりがちょうど良いのかは本当に吟味しなくてはいけません。
いずれにしても損益分岐は重要です。
考えても考えても,考えすぎるということはありません。
いっしょに悩みましょう。
その11へ続く
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