ポン太 虹の橋を渡る 14年間、ありがとう!
(サムネール=左から長女の華ちゃん、末っ子ムック、長男マッシュ)
韓国から帰国して、冷たくなってしまったポン太と対面することになった。
ポン太は既に亡くなってから4日。リビングの犬用のクッションの上に保冷剤を引いてもらって横たわっていた。
チャムシル・アリーナでLINEを受け取ってから、
「ポン太はもう死んでしまった」
という事実を、事実として受け止めながらも
「なんでポン太に寂しい思いをさせてしまったんだろう」
という気持ちは、ますます大きくなるばかりだった。
オーストラリアに行った時は吠えなかったらしいから、すぐに帰るということを分かってくれたとばかり思っていた。
でも、ポン太は分かっていたんじゃなくて、我慢をしていたんだと思う。
お薬をもらっていた持病は、順調に快方に向かっていたし、薬の量のコントロールもうまく行っていた。
にもかかわらず、ストレスで急性心不全を発症して死んでしまった。
僕は、主治医の先生に聞いてみた。
「どうしたら、心不全を防げたのでしょうか?」
例えば、僕が韓国に出張に行かなければ、死は防げたのか?
出張がもっと短かれば、死は防げたのか?
などなど。
先生の答えはこうだった。
「言おうと思えば、いろいろと言えることはあるかもしれません。でもそれは、何を言っても結果論に過ぎない。早めに手を打っていたとしてもダメだったかもしれないし、大丈夫だったもしれない。持病もあったし、年齢も年齢でしたし、打つ手が無かったわけではないけれど、手を打っていれば絶対大丈夫だったともいえないですから」
そうなのだ。
先生も、ここ数年に渡って毎月、血液検査をして、数値の上がり下がりから薬の量を減らしてみたり、もとに戻してみたり。白内障の目薬をもらって点眼していたけど、右目に緑内障がでてしまい、目薬が二重になってしまったり。
妻にも、薬と目薬はメモを作って申し送ってから出かけたのだ。
みんな、持ち場持ち場でやれることをやって、それでもポン太の命を守れなかった。
人間側にも、仕事があり、出張があり、一緒にいてあげられない時もある。
それでも、ポン太はぼくに一緒にいてほしかったのだろうし、それを一生懸命に僕に伝えてくれた。
ぼくもそのメッセージは受け取っていたけれど、一緒にいないということが、ポン太にとって死ぬほどのストレスになってしまうことがあるなんて、想像が及ばなかった。
ポン太は、僕の帰りを玄関で待ったっり、家にいるときでもふらりと僕の部屋にやって来て床で寝ていることもあった。
ドアが開いてない時は、僕の部屋のドアの外側で僕が出てくるまで静かに待っていてくれた。
大切な人のそばに、一緒にいたい人のそばにいる。
それが大事だし、そうすることが幸せだし、安心なんだ。
ポン太はいつだって、そうやって態度で示してくれていた。
「ごめんね、ポン太」
僕は、喪に服したことで、謝りたい気持ちが、感謝の気持ちに変わりつつあった。
「ありがとう、ポン太」
今は、まだ悲しいけど、楽しいこともやまほどあった。
ポン太を初めて群馬で見た日のこと。
あまりの可愛さに、すぐに連れて帰りたい、とブリーダーさんに伝えたとき、
「生後2ヶ月は母犬と一緒にすごさせないといけないですから、年が明けたらもう一度お迎えに来てくださいね」
と諭されたこと。
今回の件でも、妻がいの一番にブリーダーさんにポン太の訃報を連絡してくれていたこと。
主治医の先生が、ポン太のために立派なお花を送ってくれたこと。
うちの塾の生徒さんが、「今まで ありがとう ポン太くん」
と絵を描いて持って来てくれたこと。
随分、多くの生徒さんがポン太やムックを見て、
「ウチも犬飼いたい!」
と親におねだりしてくれたこと。
ポン太のおかげで、すごくたくさんの人たちが幸せをもらったこと。
それは、そのまま僕の幸せでもあったこと。
ご飯を食べて、散歩して、しっこをして、抱っこされて、撫でられて、眠る。
当たり前のことが、一番大切なことなんだって、
普通のことが、実は掛け替えのないことなんだって、
なくなってみないと、あることの幸せに気づけないって、
みんなポン太が教えてくれた。
だから、ありがとうなんだ。
韓国から帰った夜、僕は、保冷剤の上で冷たくなってたポン太を触って、とてつもなく悲しい気持ちになった。
だから、その日はポン太の横で一晩中でもポン太を撫でていようと思った。
翌々日に、ポン太は骨になってしまうと分かっていたから。
「ぽんちゃんは、ずっと一緒にいるんだよ」
そう教えてくれた友達もいた。だからさよならとは言わないよ。
ポン太が一緒にいてほしかった時、いっしょにいてあげられなくてごめんね。
僕がポン太にそばにいて欲しい時、いつもそばにいてくれてありがとうね。
今は、ポン太は、すごく幸せな一生を送れたと信じられるよ。
また、会おうね!
こんなにそばにいたかった僕たちなんだから。
4部作 完