ネガティブ・ケイパビリティを発揮することで物事の見方は変わる
突然ですが、皆さまにとってあまり聞きなじみのない言葉かなと思いますが、我々人間は大なり小なりこの能力を持っています。
今回は、この言葉について、書いてみようと思います。
ディスカッションの中で感じること
私は今、働きながらですが、大学院生をしています(2023年3月時点)。
あと1年、修士論文を書き切れば、おそらく卒業&MBAを取得できるはずです。
授業は、一方的な講義形式の授業もあれば、ほぼ学生同士のディスカッションという授業もあり、お互いに学びを深められるのが醍醐味かなと思います。
ディスカッションの授業では、自分の考えをどう述べるか(相手に伝わる方法を考えたり、互いの意見を尊重し合う話し合いを意識したり)、みんなの意見を受け止めて自分の中でどう消化させ、建設的かつ発展的な発言に変えていくかを大事にしています。ほぼ社会人の学生でみんなの背景が違っているので、ディスカッションは大いに膨らみます。授業の時間が足りないくらいので、時間外でも自主的に行うこともしばしば。
ちなみに、ディスカッションは討論や議論を行うことを意味し、ディベート(勝敗を決める話し合い)とは異なるので、毎回正解のない中で話し合いをします。
そうなのです、テーマとして提示されるケースや自分たちが抱える課題に対しての解決策が、明確に出てくることはほぼありません。
結構もやもやを抱えながら、道を切り開いていく作業が続くわけです。
【ネガティブ・ケイパビリティ】って何?
どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力
性急に証明や理由を求めずに、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることが出来る能力
大学院の教授からご紹介いただき、ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力 (朝日選書) という本と出合いました。
精神科医の先生が書かれた本ですが、とても面白く、あっという間に読み切ってしまうくらいでした。(最近購入した他の本は、すべて開いて閉じてを繰り返すだけなのにwww)
そこに、「ネガティブ・ケイパビリティ」は、英国の詩人ジョン・キーツが兄弟に宛てて書いた手紙に出てくる言葉として世に誕生したと、書かれていました。
我々人間は、持っている知識や経験から、問題に直面したときに、言葉で理由付けをして結論を出すことで、心の安定を図ることが出来ます。この「ポジティブ・ケイパビリティ」は、もちろん必要な能力です。
しかし、先入観から、実はまだ見えていない課題があるかもしれず、”それ”を見落としてしまうこともあります。
この考え方を知って、なんだか少しほっとしました。
もやもやと向き合う
日常生活における会話レベルでも、もやもやを抱えることってありますよね。
言いたいことがうまく表現できなくて、まわりの人たちから「あの人何考えてるのかよー分からん」って思われてるんじゃないか、なんて気にしている人もいると思います。
逆の立場のことも。話を聞いているけど「何を言っているんだろうこの人は」と思う場面に遭遇することもあると思います。
表現することも大事ですが、逆に聞き出す力もとっても大事です。しかしそれが誘導になってしまったら本心が分からなくなり、元も子もありません。
これらをうまくバランス取るコミュニケーション能力を身につけたら、クライアントとの会話の中(ビジネス)にも生かせていけるのではと思いました。
デジタルマーケティングというお仕事をしている中で、コンサル的な仕事が増えてきた近頃は、”クライアント担当者が聞いてきたことに答えを提示” ”○○をすると□□になるからやりましょうという提案”の前に、少しでも何か引っかかりを感じたら、一度自分の中でじっくり振り返るようにしています。
クライアント担当者が抱えている隠れた問題が、担当者にも私にも実はまだ見えていない可能性があるんじゃないだろうかと。
もしも根本は別にあるのに、その場しのぎの表面上の問題解決しかしなかったら、対処の意味が薄れてしまうからです。
なぜなぜ分析
根本原因を探る手法として、【なぜなぜ分析】というのもあります。
表面的に浮上してきた問題に対して、なぜそれが起きたのか原因を見極めようとする、さらにその原因に対して次の「なぜ?」を、一般的に5回(5回じゃなくても、行きつくところまで行けたらOK)繰り返すことで、直接原因だけではなく背後にある根本的な原因にたどり着くと言われています。
クライアントのビジネスを考える時(提案書を作る時)に、私はよくそれを意識しながら、紙に書き出すようにしています。
デジタルの仕事してるなら、PCで直接入力する方が早いのじゃ?と思うでしょう!
ところが、紙に書き出す意味ってあるんですよね。ひとりブレスト的な?いらない紙にひたすら殴り書いていきます(笑) 順序も何も関係なく。すると、なんとなく方向を指し示せるようなカテゴリ分けが出来たり、思いついた事項の相関関係が見えてきたりします。
次はそれらに順序を付け、さらに深掘りしていくため「なぜ」を繰り返します。
ふと思い出したのですが、小さな子どもって、「なんで?」「どうして?」を繰り返す時期があります。大人はいちいち答えるのが面倒になったり、しどろもどろになったり・・・
そう考えると、子育てで起こる【なぜなぜ分析】と向き合うには、【ネガティブ・ケイパビリティ】は欠かせないものかもしれませんね。
ネガティブ・ケイパビリティを意識する
話が脱線しましたが、
標題のように、ネガティブ・ケイパビリティを上手に使うことで、物事の見方が変わり新たなことを発見できることもあれば、もちろんいつまでも答えに行きつけない場合もあります。その時は、ありのままを受け入れるしかありません。
本の中では、シェイクスピアや紫式部がこの能力に長けていたと書かれていました。芸術家や作家がそれぞれの分野で、悶々と抱える様々なこと(自己)を表現するまで悩み耐える能力が、それなのだと考えます。
近年、インターネットの普及で何でも手軽に検索が出来てしまい、何らかの答えに行きつくまでの時間が短くなりました。たくさんのことを短時間に処理してしまえるので、忙しい日々の生活には欠かせません。便利さはメリット以外の何物でもないのですが、一方で時間をかけて考えるという機会が減ってしまっているのも事実です。
少し意識してみるだけで、今までは真正面からしか見ていなかったものを、違う角度から見ることで、形や景色が変わるかもしれませんね。
最後に
長々と書いてきましたが、私の性格は非常にせっかちで、じっくり物事や人と向き合うのが苦手です。。しかしこの本を読んで、先日”夫婦喧嘩”で実践してみました。自分の中のもやもやと向き合うのですが、なかなか常人には気力のいる能力ですね。ウーン・・・(笑)
近頃は、chatGPTが人気で、様々な利用シーンを紹介されている記事を見かけます。確かに便利で、私も時々質問を投げかけてみます。あっという間に答えが返ってくるので、相棒というか壁打ち相手にはもってこいです。
進化するテクノロジーを利用することは、もちろん利便性の面でメリット大きく、良いことだと思います。しかし反対に、あーでもないこーでもないと右往左往できるのは、AIにはない人間らしさと思います。
人によって、場所によって、タイミングによって、向き合うものは異なってきますが、少し時間に余裕をもって考えを深めるのも、人間として重要な能力だと思いましたので、本記事にまとめてみました。
お読みいただいた皆さまの心に、少しでも響くと嬉しいです。
※筆者の所感が多く含まれています。ネガティブ・ケイパビリティについて深く知りたい方は、是非本をお読みいただくことをお勧めします。
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