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外出が億劫になる双子の親が「自宅から声でつながる」場

双子育児は外出の機会がめっきり減ります。双子用ベビーカーは大きすぎて使いづらいし、抱っことおんぶだと体力が必要でしんどい。1人は抱っこ、もう1人はベビーカーで出かけても、途中で片方がぐずり、結局、2人同時に抱っこしたまま立ち尽くすこともありました。

それに荷物も膨大です。2倍のおむつ、2倍の着替え、授乳期だったら哺乳瓶と粉ミルクも。背中はパンパンのリュック、前には赤ちゃん、そしてベビーカー。常に両手がふさがり、トイレに行くこともままなりません。

写真は、スーパーのカートに乗る双子(生後2カ月ごろ)。2人とも「乗りたい」とわめき、一つずつ押しながら買い物することもあります。

スーパーのカートに乗る双子。2人とも「乗りたい」とわめき、一つずつ押しながら買い物することもあります(生後2カ月ごろ)


多胎児の親は孤立しやすいと言われていますが、きっとそんな物理的な障害があるからだと感じます。自治体などの子育て支援のイベントに行こうにも、なかなか行けないのです。

そんな中、多胎児家庭を支援するNPO法人「つなげる」(兵庫県)が10月から、バーチャルオフィスツール「oVice(オヴィス)」を利用した音声チャットサービスを開始しました。

バーチャルオフィス


パソコンやスマホのウェブ画面上で自分のアバター(分身)を動かして、他の参加者に話しかけたり、会話を立ち聞きしたりできるサービスです。参加者は双子・三つ子などの多胎児家庭の保護者だけ。本名も表示されないので、気軽に相談したり、体験談を話したりできます。アプリのダウンロードも不要です。

双子の親としては、何より自宅でスマホから参加できる
、というのが大きなポイント。苦労して出かけなくても、タップするだけで「部屋」に入れて、同じ境遇の親たちと会えるそうです。

「つなげる」代表理事の中原美智子さんは「テキストが苦手な人も音声チャットなら参加しやすいし、他人の会話を立ち聞きするだけでもいい。大切なのは、(苦労しているのは)私だけじゃないんだ、1人で頑張ってもどうしようもないんだ、と気づくことなんです」と語ります。

試験運用中はスタッフがいる間だけ使えますが、いずれは24時間オープンにしたいとのこと。参加者は「この前はじめて双子とファミレスに行った」という3歳児の親に「何が必要なのか知りたい!」と0歳児の親が聞くなど、気軽な子育て談義に花が咲いたそうです。

「つなげる」はほかにも、LINEを使ったテキストチャットサービス「ふたごのへや」や、Zoomのビデオ通話による「つなげる相談室」を運営しています。「双子育児はちゃんとできなくて当たり前。行政や保健師さんも含め、いろんな支援やサービスを借りていいんだ、と伝えたい」と中原さん。

利用の問い合わせは「つなげる」の公式LINEから。寄付などはこちらから受け付けています。

「2人抱っこ」する筆者。双子がぐずったり眠ったりすると、いっぺんに抱えなければならないことも。(生後10カ月ごろ)

「2人抱っこ」する筆者。双子がぐずったり眠ったりすると、いっぺんに抱えなければならないことも。(生後10カ月ごろ) 

【書いた人】金子淳。2006年から新聞記者をやっていて、いまは外信部で国際報道を担当しています。2017年、インドに赴任中に男女の双子が生まれました。「里帰り出産」でしたが、双子は生後3カ月のときにインドに連れていきました。千葉県船橋市在住。共働きで、家庭では料理と子供のお風呂が主な担務です。