こっこ。

つらつらとコトノハを。 夢と現実の狭間で自分が描きたい世界をかけたらいいなぁ、とか。 コメントいただけると泣いてよろこびます。

こっこ。

つらつらとコトノハを。 夢と現実の狭間で自分が描きたい世界をかけたらいいなぁ、とか。 コメントいただけると泣いてよろこびます。

最近の記事

beautiful world #11

「そう、なるべく早く、うん・・・そうだね、そのあたりは任せるよ」 そう言って通話終了のボタンを軽くタッチした。 運転席からミラー越しにみえた心配そうな顔。 「大丈夫だって」 「ですが、慧さま・・・これではあまりにも・・・」 「人の優しさは時にうざったくもあるだろう?」 渋った顔をした運転手の羽山は、あんまりです、と言いながらハンドルを握る手に力を込めた。 「じゃあ、病院よってくれる?」 「かしこまりました」 ーーーーーー 「・・・こんにちは」 あらぁ、と太陽のよ

    • Breath story 6

      いつまでも過去を引きずってはいけないと思っているのに、ふとした瞬間に引き戻される。 そしてそれが、いつまでも火種となって心の隅っこに消えずにいて、いつかしら私を悩ませる。 ”泣いていいんだと思います” そう言われたときには涙がこぼれ落ちて、地面に水玉模様を作っていた。 娘の前では絶対に泣かないと決めていたし、これ以上心配をかけたくもなかった。 少しずつ大人になる娘が、私の気持ちを酌んでくれるようになって、少しずつではあるけれど愚痴を溢すようにはなった。 それでも、泣いて

      • Breath story 5

        「なんかやっぱりこのマンションやだ・・・」 「何かあったの?」 違うけど、違うくもない、なんて娘の実有は呟いた。 ここは、職場からも近くて立地もいいのに破格だった。 事故物件じゃないかと思うくらい、低所得の私たちにでも賃貸として入居できるくらいだった。女の子一人育てるにはある程度のセキュリティも必要だったし、即決した。実際住んでみてわかったことは、暮らしに余裕のある人たち、いわゆる富裕層に当たる人が多いこと、1LDKと言っても十分に広いので二人で住んでいるのは私たち家族く

        • beautiful world #10

          その手を包み込んだ俺の手に、温かいものがこぼれ落ちてくる。 水玉模様になれば、少しは笑ってくれるだろうか、そんなことを考えながら思うんだ。 「なーんか、すげー頑張ってるんだな、ひとりで」 そんなことないって首を振る小さく縮こまったこの子を放っておくことすらできなくなった。 「頑張るなら見守らせて、でも頑張れないって思うなら頼って」 涙声で、やっぱり優しいんですね、リョウさんってというから、誰にでも優しいわけじゃないけど、優しいことで誤解されるのならどうしていいかわかん

          Breath story 5

          避けられているのだと気づくのにさほど時間は掛からなかった。 いいタイミングですれ違うのに、目線も合わせずまま軽く会釈をして消えていく。 まるで存在を消すかのように。 ポケットの中のくるみボタンのついたヘアゴムは大事にそこにあるけれど、だけれどこうも避けられていると渡しづらい。 そんなに初対面の印象が悪かったのか・・・いやもしくは僕の仕事柄のことなのか・・・ありとあらゆる可能性を考えているけれど決定的なものはない。 「何か・・・?」 ポストの前で腕を組んで固まっていた僕

          自己紹介

          遅ればせながら自己紹介というものを。 こっこ。です。 恐らくこの名前を知っているということはどこかで繋がったことのある方かもしれないし、そうでないかもしれないです。 コトノハアソビが大好きなアラフォー女子です。 注意:アラフォーの定義がイマイチですが、アラフォーとします。笑 私は小さな頃からいろんなことを妄想するのが大好きでした。 夜ベッドに入るとき、お気に入りで1軍のぬいぐるみを枕元に置いて、いろんなはなしを繰り広げていくのがとても好きでした。 いつか、その言葉たちを

          自己紹介

          Breath story 4

          私の仕事は尋常ではないスピードで毎日が追われていく。 マルチタスクの速度にうまく乗れない人は、相性が悪いと判断される、そんなシビアな環境だ。決してつまらない仕事ではないにせよ、自分の意に反して就職をして3年、これが与えられた環境なのだから贅沢は言わないと心に決めている。 私は真面目だ。 真面目なのは認めるけれど、いつも頑張っていると言われる。 頑張らないと評価されない生活をしていた私にとって、頑張らない私は私ではなく価値がない。 頑張って当たり前、お気に入りにならないと望

          Breath story 4

          Breath story 3

          世の中には手を出していいものと、駄目なものがある。 それは小学生でも習ったし、幼稚園の時にも習った。 ”人のものはとっちゃだめだよ” って。 簡単なこと。道徳的なことだから、当たり前なこと。 人は皆、持ち物に名前を書いて、それが誰に属するかを示す。 そして大人になった今、記名することなんてほぼなくなったけれど、どこかで線引きされたその道徳心の元で、日常が成り立っていく。 あのヒトは誰かのものだった。 どこかでわかっていたような気もするし、そうであろうという予測も簡単に

          Breath story 3

          beautiful world #9

          後で話がしたい どういう意味なのかいく通りも考えた。 私が曖昧に昼間のバイトでの諸事情を混合しているから。 私の知らないところで、ひょっとしたらリョウさんに迷惑をかけているのかもしれない。 楽しいお酒を飲みたいお客様の前で、ボーッとしている私を察知したかのように、カウンターからリョウさんの視線が私の目を掴んだ。 注意される、と思って縮こまりそうな気持ちになりそうだった私の気持ちなんて他所に、リョウさんはとても困った顔をして、店では見せないような柔らかい笑みをこぼした。

          beautiful world #9

          Breath story 2

          ソーシャルディスタンスというワードが世の中に一瞬にして浸透した。 人は皆距離感を保ちながら自己防衛をする。 マンションの階下にある郵便受けでもいつもなら挨拶くらいはしていたのに いつからかよそよそしい態度になっていく光景をよく見かけるようになった。 疑いを緩めないことが人の生活においていいことなのかどうか僕には曖昧なボックスにソートされたままだ。 夕方遅くに事務所から呼び出された帰り道、少し前を歩くのはいつものあのヒトの後ろ姿だった。 朝よりもちょっぴり猫背になってい

          Breath story 2

          Breath story 1

          こんな世の中を誰が想像したんだろう。 時間が欲しい、なんて軽く望んていたあの日がこんな状況で実現した。 自宅待機。 そう命じられた僕は、どうこれから過ごすことが正解なのかわからなかった。 ただ毎日ここから聞こえる日常の音をひろっていきながら、 ああ、みんな必死に生きてる、ってそう思えた。 僕だけではなく、みんな、明日が見えない薄暗いトンネルの途中を生きている。 バタバタと玄関の音が開け閉めする音がした。 同じフロアの誰かが、これから仕事なのだろう。 どうしても仕事をしな

          Breath story 1

          Breath prologue

          笑ったキミ。 優しく微笑むキミ。 少し困った顔のキミ。 キミの顔はいくつあるんだろうか。 そして 今、まるでなかったかのように、疲れをグッと内に隠してドアノブを握ろうとしている。 ***** 僕の仕事はイレギュラーだ。 時間なんてあって無いようなもの。 それに追い討ちをかけるかのように、世の中が騒ついている今、僕は案外ステイホームを楽しんでいるんだと分かった。 当たり前に、朝起きて、トースト焼いて、ちょっとうまく焼けた日なんか鼻歌歌いながらバター塗って。 いや

          Breath prologue

          砂嵐

          ため息しか出ない。 ため息しか出ないんだもん。 右手を伸ばしてリモコンを手にしたら、四角いマークの部分を押して 砂嵐の画面をただ見ていた。 でもしっかりまぶたの裏に焼き付いてる。 残像ってこういうこと。 わかってる。 わかってるのに。 隣であぐらをくんだまま頭をわたしの肩にのせた彼は規則的な寝息を立てていた。 疲れてる、んだよね。 仕方ないなぁ、なんて思っていたら寝ていたはずの彼がふわっとわたしに覆いかぶさった。 え・・・? 無意識? 「・・・やだよ、こ

          beautiful world #8

          beautiful world #8 で、どうして開店早々この人がいるのだろうか。 「はい、じゃあ僕はあんまり飲めないからさぁ、生搾りがいいなぁ〜」 なんて言いながら、テーブルの上のグレープフルーツを器用に投げていた。 はいはい、と渋々返事をすると、僕一応お客様だからね?なんて極上の笑みを見せた。 「翠ちゃ〜ん」 次は何?と思いながら、はい、と返事をすると 「そろそろ僕の名前ちゃんと覚えて?」 話したよね、僕の名前のこと、と距離を縮めてきた。 「彗星のスイに

          beautiful world #8

          シグナル

          隣で鼻歌歌うその横顔がたまらなく好きで、思わず手を伸ばしてしまった僕の指とぴくっと反応したキミの体。 運転中なんだから!なんてぷーっと膨らむ頬。 「運転中に鼻歌歌う方が危ないよ」 大丈夫、大丈夫なんて右の人差し指はハンドルの右上でリムショットのように動いていた。 「ういちゃん、それあの曲でしよ?」 うん、そうだよ、なんていって一緒に歌いだす。こんなにいい歌だったかな?なんて考えるよりも先に、一緒にいて、すぐ手の届くところにいて、なんだか楽しくなるこのやり取りが3割増

          beautiful world

          beautiful world #1 あの雲の先に、いるの、かな。 呆然と立ち空をみて。 煙突の先の煙が空の色に混ざっていく瞬間、儚さと、悲しみの色でぐちゃぐちゃになる。 「…翠」 「大丈夫心配しないで」 そう隣にいた母に伝えた。 割と裕福な家庭に生まれ 割と裕福な育ちをしたけれど 小学校も中学校もまわりの友だちと一緒に公立へ進んだ。 だって身の丈知らずだし。 だって裕福なのはわたしではなく父であり、父が築いた会社だから。 まもなく会社が傾き、大学は諦めようかと

          beautiful world