
産qレース 第三話
2月の某日。
今日は、まさえが誘ってくれた飲み会の日だ。
やすこは、朝から体が重く、体調が悪い。
「なんだか背中がいたいんだよなぁ…」
触ると何か触れる。鏡でみると大きな湿疹が数個できている。
「やばい。
昔、この症状は教科書でみたことがある。。」
急いで近所の皮膚科を探し、受診した。
「帯状疱疹ですね。ストレスとか疲労が溜まるとなりやすいので、ゆっくり休んでください。」医師から伝えられ、とぼとぼと重い足取りでかえる。
『こんな日に限って。。。』やすこは、ため息をついた。
ストレスの原因なんて数え上げたら、切りがない。9人のスタッフで、三人が産休育休中。その穴埋めをし、実習生の指導をし、色んなスタッフから指摘を受ける勉強会の準備、そして、上司がやるべきな委員会の出席とほぼ夕食は病院。帰りは、9時近くだ。通勤も遠し、大体要領だっていい方ではない。残業代以外に増えるものはないし、心身ともに削られる。
「疲れるし、いいことないなぁ…」
夜19時、寒い銀座の隠れ家的な飲み屋さん。
その日の飲み会は、まさえと以前の飲み会で知り合った徳川公さんと徳川さんの友人との飲み会だった。
徳川さんとその友人は内科医で、徳川さんはお医者さんには珍しくハットとスーツで着ていた。飲み会は、病院あるあるなど他愛無い話で時間が過ぎた。
飲み会の間も、やすこはお店が寒いのか悪寒がするのか、寒くてしかたなく、ホットウーロン茶ばかり飲んで、話も相槌と愛想笑い程度で気が利く会話などできなかった。
『今回もだめかな。』とやすこは再びため息をついた。
帰り道、来た時に被っていたハットがないのに気がついた。歩く速度が速い徳川さんに駆け寄り、
「帽子をかぶってませんでしたか?」
「本当だ。気づかなかった!良く気がききますね。」と徳川はやすこに笑顔で応えた。