コロナ禍を乗り越えた奇祭:石取祭とおせっかいワーケーションの挑戦(三重県桑名市)
「お祭り好き集合っ!」に集った仲間たち
三重県桑名市で毎年行われる伝統的な祭り「石取祭」。その勇壮な祭りは「日本一やかましい祭」として知られ、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。しかし、コロナ禍で2年間も開催が休止されました。そして、3年目の一昨年(2022年)、祭りの存続を懸けて石取祭保存会は慎重ながらも開催を決断しました。しかし、真夏の大規模な祭りにおいて、感染防止策や熱中症対策が十分に取れるのか不安が尽きませんでした。
参加を決断した西矢田町では、自治会長の矢田が「祭に医療者が同行してくれれば、もっと安心できるはずだ」と考え、「お祭りコミュナスワーケーション」という新たな取り組みを提案しました。これは、地域に医療のサポートを提供するコミュニティナースが祭に参加し、感染対策や熱中症対策を担いながら地域の一員として活躍するという、斬新なワーケーションの企画でした。
祭りと医療が交わる瞬間
「石取祭」では、毎年多くのけが人や熱中症患者が発生し、救急搬送が絶えません。そんな中、全国から集まったコミュナスたちが西矢田町の専属救護班として参加することが決まりました。彼らは祭りの現場で医療サポートを提供しながら、地域の一員として交流を深めるという前例のない挑戦に取り組みました。
一昨年(2022年)のワーケーションでは、コミュナス4名が勇敢に集結。初めての挑戦ということもあり、町内もコミュナスもお互いに手探り状態で始まりました。「伝統的な祭りにどう受け入れられるのか?」「看護師として何ができるのか?」そんな疑問を抱えながらも、彼らは祭りに寄り添いました。
祭の途中で体調不良者が続出する中、コミュナスたちは適切な距離感で支援を行い、徐々に地元住民に頼りにされるようになっていきます。ついには「袢纏」を着ることを勧められ、祭りの象徴である「太鼓」を叩く機会までもらいました。地域に受け入れられ、仲間として認められた瞬間でした。
2年目に向けた飛躍
ワーケーション2年目(2023年)には、懐かしい再会から始まり、祭の初日から「太鼓」のお誘いを受けるなど、コミュナスの存在が祭の一部として根付いていました。副祭事長からも「医療サポートはもちろんだけど、まずは祭を楽しんで」との言葉をかけてもらい、彼らはもはや外部の支援者ではなく、祭の仲間となっていたのです。
2023年は、西矢田町だけでなく、周辺6町内の体調管理も任されるようになり、地域全体にワーケーションの取り組みが広がりました。祭りの終了後、石取祭保存会の委託運営を受ける救護班の責任者からは「全町内に(西矢田町のコミュナスワーケーションのように)専属の救護班があれば良いのに」という声も聞かれ、コミュナスの活動が地域に大きな影響を与えたことが実感されました。
地域に広がる「おせっかい」の力
石取祭は、コロナ禍で祭りの担い手が減少し、参加者の高齢化や後継者不足など多くの課題を抱えていました。そんな中、コミュナスの支援は大きな安心感をもたらし、地域の人々にとって誇らしい存在となりました。外部の視点からではなく、「こころいき」を持ちながら地域に深く関わる彼らの姿勢は、伝統を守りながらも新しい風を吹き込むものでした。
この祭りを通して、「おせっかい=節度ある介入」が、地方の祭りにどれほど大きな影響を与えるかを実感しました。2024年のワーケーションにも期待が高まる中、彼らはさらに祭を支える存在として進化していくことを期待しています!
追記)
3年目となる2024年も8月2日〜4日にお祭りコミュナスワーケーションが開催されました。インタビューも交えた動画が公開されています!
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