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日本国憲法と親父の一番長い日は三行に要約できるのか?

ELYZA DIGESTという長文要約AIがリリースしてたので早速試してみることに。これは東大松尾研究室発、DEEP LEARNINGのプロフェッショナル集「ELYZA」が実験的に提供をはじめたもので、ニュース、会話、議事録、小説など。どんな長い文章も3行に要約できるという。日本には長々としたテキストが多い。要約してくれるのはありがたい。試した結果は今後の学習材料にもなるらしい。どんどん試そう。

デジタル庁の平井大臣メッセージを要約
長いといえば、偉い人の挨拶。話題のデジタル庁のHPから、この人のメッセージを省略してみる。

AIによる(平井大臣メッセージ)要約結果
平井卓也氏が、デジタル庁の3つの柱に重点的に取り組みを語っている。行政のデジタル化、医療・教育・防災をはじめ、産業社会全体にわたるデジタル化。誰もが恩恵を享受できるデジタル化、誰もが恩恵を享受できるデジタル化など。

「デジタル庁の3つの柱」と前置きしながら、数えてみるとなぜか4つの柱がある。「誰もが恩恵を享受できるデジタル化」が2回出てくる。リフレインが叫んでる。要点を絞らない政治家独特の言い回しに、AIが振り回されている結果なのかも知れない。そもそも3行といいながら、PCだと4行、スマホだと6行。742文字が107文字に縮小されているものの、あまりグッとくる要約ではなかった。

僕が惹かれるのは、無難な表現よりも固有の言い回しだ。平井大臣が「デジタルで人助け」する道程を「武士道になぞらえ「デジ道」」であると変な命名をしてるのが気になった。これを無視して要約することは出来ない。「スマートフォン一つで、役所に行かずともあらゆる手続きがオンラインでできる社会を作る」と大風呂敷を広げているが、その効果が「マイナンバーカードの普及等」と、何だか寂しい。僕が求める行政のデジタル化は、ずばりインターネット投票。これを積極的に行うことで、お年寄りで固めた組閣が崩れる。これから本格化する高齢化社会を支えるのは、若者たちである。自分たちの未来を、自分たちのリーダーシップで切り拓いて欲しい。だから、この高らかに謳うメッセージのなかにネット投票が含まれていないことを、デジタル庁の今後の動向とともに注視しようと思う。

川田十夢による(平井大臣メッセージ)要約
デジタル庁の三本柱。行政、医療・教育・防災を含む産業社会全体、情報格差の払拭。デジタルで人助けしたい。平井は武士道になぞらえ「デジ道」と呼んでいる。ネット投票の是非が含まれていない。注視しよう。

日本国憲法を要約
日本国憲法が施行されたのは1947年5月。74年前のこと。国を問わず、憲法が存在するのは権力者の暴走を防ぐため。長い時間をかけて、僕たち市民が要求してきた結果生まれたのがこの立憲君主制。だから、改憲を政治家が口にする度に、国民は注意する必要がある。一方で、長年にわたって憲法を改正していない国は日本だけという話もある。ドイツではもう63回以上も更新されている。国際情勢、生活環境、あらゆる変化に憲法が追いついていないというのも事実。クイズみたいにわかりやすい正解がある話題ではないが、まずは出題内容を正確に把握するために日本国憲法の全文を要約してみる。

余談だが、日本国憲法の全文のテキストの有無を検索して探したところ、衆議院と参議院のホームページそれぞれに全文が掲載されていた。このニュアンスをラーメンで例えると、大勝軒から暖簾分けされた弟子たちのお店が、こぞって山岸一雄さんと並んで撮った写真を店頭に飾ろうとするのに似ている。日本のラッパーが、Zeebraとの関係性をラップバトル中に「ジブさん」という言葉とともに潜ませようとするのにも似てる。ちなみに、そのジブさんはかつて「悪い奴は大体友達」とヒット曲のなかで公言していたので、正しく継承できていると言える。日本国憲法の話に戻る。

AIによる(日本国憲法全文の)要約結果
日本国民は、憲法を確定し主権が国民に存することを宣言した。憲法は人類普遍の原理に基く、主権は国民に由来する。国民は、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して生存を保持しようと決意した。

ここでは憲法の構成をずらっと並べるべきではないか。要領を得ない。要約の対象が全文だと、あまりに広大なのかも知れない。では、各章ごとではどうか。まずは第一章、天皇に関する部分から要約してみる。

AIによる(日本国憲法 第一章 天皇(第1条~第8条))の要約
天皇の地位と主権在民、天皇の権能と権能行使の委任、天皇の任命行為。天皇の権能と権能行使の委任、天皇の権能行使の委任、摂政の制限など。天皇は内閣の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。

露骨にうまくいってない。「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」という言葉が入ってないと、ひとつ前の明治憲法(大日本帝国憲法)との違いが明確にわからない。細かな要件よりも、大まかな定義を三行には要約すべきだ。このAIによる要約では、アメリカ(GHQ)と日本が戦争責任をどう捉え、どのように戦争回避を憲法としてリ・プログラミングしたのかが、見えてこない。生まれたてのAIサービスに、先の戦争のことまで背負わせるのは酷だけど、ここは日本人としてしっかり把握しておきたい。僕なりに明治憲法のあらましと日本国憲法の第一章にあたる第1条から8条までを読み込んで要約してみた。

川田十夢による(日本国憲法 第一章 天皇の)要約
前法では、天皇は陸海軍の最高司令者であり、国家予算も宣戦布告の宣言の権利も握っていた。現法では、天皇は神の子でも国家元首でもなく日本国の象徴である。その地位は国民の総意、あるいは国会の議決に基づいている。

「国民の総意、あるいは国会の議決に基づいている」と、国民の総意=国会の議決という大前提が崩れていることを要約として入れなくてはいけない現実を改めて残念に思う。戦争責任を天皇だけに集約するのは間違っている。軍部の暴走や政治家の思惑、国際情勢など。戦争の原因を上げたら要約しきれない。憲法は戦争責任の是非を明文化するものではない。どのように権力を分散させれば再び戦争を繰り返さないか。国内外の人間が歴史考証をして、様々な国の憲章を参考にして、知恵を絞って組み上げたのが日本国憲法だ。象徴という言葉が、長い年月を経て軋んでいること。大前提だと思い込んでいる世襲制のあり方。国民が支払う税金を使った皇室維持の是非だって、無視できない。僕はこう要約したけど、国民の数だけ要約の結果は変わってくるはずだ。異議を唱える人がいたら、ぜひ自分の考えを自分自身の場所で明らかにして欲しい。

我ながら、大掛かりなお題に手を出してしまった。真面目な話になりそうだと思って、大勝軒とジブさんの余談を入れておいて良かった。まだ日本国憲法の一章を要約したに過ぎない。頃合いをみて、またこの問題には取り組むことにする。次に、日本の芸能史に燦然と輝くあの長文の名曲を要約する。

さだまさしの親父の一番長い日を要約する
noteの読者層は、20代から40代が多いという。うっかりすると、さだまさしの『親父の一番長い日』を知らない読者もいるだろう。まずは、僕の要約を示したあとで、AIによる要約を検証する。

川田十夢による親父の一番長い日の要約
妹が生まれた。弟はまだ小さかった。親父は初めての娘がうれしくて、一週間かけて名前を考えた。大切に育て上げた娘を、下さいと言ってきた若者には殴らせろと言った。最後は妹の手をとり、教会の祭壇へ送り出した。

1979年に発売されたこのシングル曲は、テレビドラマ化もされた。いくつもの家族の父親が、娘を送り出す気持ちを重ねた。ほんの少しの暴力を助長した。ひとつ前のシングルは関白宣言。この曲も、さだまさしのトークも、長い。日本国憲法と同様に、いつかこの問題にも取り組むことになるだろう。

AIによる親父の一番長い日の要約
親父が妹の誕生を知った親父は、一週間もかけて娘を育てた。親父は妹の初恋は高校二年の秋、相手のバレー部のキャプテンはよくあるケース。親父は妹の選んだ男に間違いはないと信じていたのも、親父だった。

妹の初恋に、親父が執拗に絡んでおり滑稽だ。親父は親父だったという重複のレトリックも、日本語としてオカしい。AIを擁護するわけではないが、シンガー・ソング・ライターによる歌詞の世界は、歌い手ごとに文法があり、語彙ごとの思い入れがあり、とても数値化し難い。メロディによる抑揚の要素もある。議事録のように要約できないのは理解する。ただし、一週間かけたのはあくまで名前をつけるのにかかった時間であって、親父が妹を育てた期間が一週間だったわけではない。そうだったら、娘さんを下さいと言ってきた若者を殴る権利はない。憲法にこそ明文化されていないが、何かしらの法律に問われるはずだ。

長文要約AIに関する文章のまとめ
日本国憲法も、親父の一番長い日も、AIはまだ三行に要約することは出来なかった。憲法と天皇の歴史的背景、さだまさしを含む親父の気持ち、そしてシンガー・ソング・ライター特有の言い回し、メロディとコード進行に含まれる抑揚までは把握できていない。親父の一番長い日には「兄貴として」「親子として」「親父として」「息子として」 など、どの立場でエピソードを語っているのかを補足する歌詞が、節目節目で登場する。憲法を要約するときも、誰の立場で要約しているのか。明確にする必要があるかも知れない。国家として。

 ELYZA DIGESTという名の長文要約AIは、まだ生まれたばかり。デモの一般公開にあたって、本来は大掛かりなモデルを用意しなければならないところ、小さなモデルを使わざるを得なかったことも影響している。8月26日のデモサイト公開から5日間で、訪問者数は13万人を突破。デモサイトPV数は404,718に上り、要約数は145,309回。要約精度のユーザー判定は、投票総数17,611に対して成功が8,518、失敗は9,093という結果だったと同社は発表している。従来の抽出型ではなく、生成型のAIがここまで出来るのは、正直驚きだ。未来に期待。第二章(戦争の放棄)以降の日本国憲法と関白宣言については、また別の機会に検証する。人間による自問自答とAIによる要約は続く。

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