ダウ90000のコント「ワンピース」を見て鬱になった

人と映画を見るのは嫌いだ。

映画館には基本的に一人で行く。
一人でその作品と向き合い、上映後にはFilmarksやTwitter、noteなどで他人の感想を読み漁りがら、前述の媒体に己の批評を残す。
それが私なりの、映画に対する真摯な向き合い方である。

たまに人と映画に行くにしても、同伴者は自分と同じぐらいその作品に対して熱量を持っている友人や家族であることが絶対条件である。

8月25日木曜日。
ダウ90000の公式YouTubeチャンネルに、「ワンピース」というコントがアップされた。

8分しかないので、まずはとにかく当該のコントを見てほしい。

アップ当日は忙しく、私は翌日の26日金曜日に動画を視聴した。
タイトルを見た際には、洋服の「ワンピース」についてのコントかと勘違いしていたのだが、どうやら漫画の方の「ワンピース」の劇場版についてのコントらしい。

コントの簡単なあらすじは、ワンピースが大好きな蓮見さんが、ワンピースに大して思い入れのない吉原さんとデートでFILM REDを見に行き、後悔するというもの。
私自身ワンピースは原作漫画1巻しか読んだことがない（つまりは全く分からない）のだが、それでも十分面白かったし、ワンピースが好きな人ならさらに面白く感じると思う。

「ワンピースが、目的じゃなくて手段になっちゃったなあと思って」。
蓮見さんは、大してワンピースが好きではない吉原さんとのデートに、ワンピースの映画を利用してしまったことを、上記のように表現する。

「好きな作品は、真摯な態度で鑑賞したい」という、何かしらのオタクなら抱いたことがあるであろう気持ちに共感すると共に、その気持ちを端的な表現でうまく言語化し、コントに仕立て上げる蓮見さんの才能に感嘆した。

そうやって時に共感し、時に爆笑しながら、そのコントを見ていた。オチの寸前までは。

コントのクライマックスで、蓮見さんは学生時代ワンピースを映画を一緒に見に行っていた友人たちと出会う。
FILM REDを見たばかりの友人たちを、蓮見さんはご飯に誘うが、全員彼女との予定があると言い、三々五々散っていく。
そんな友人たちの姿を見た蓮見さんが吉原さんを追いかけるところで、コントの幕が下りる。

このラストを見たとき、自分がもし蓮見さんの立場だったら、吉原さんを追いかけることはできない、絶対に無理だと、痛感した。

私にとって、人生で一番優先される物事はいまだに趣味で、趣味をないがしろにしてまで対人関係に注力はできない。
だから世間一般の人に比べて友だちは少ないし、蓮見さんと同い年で今年25歳になるのに、いまだに恋人ができたことはない。

そんな自分に突き付けられる現実は残酷で、仲良くしてくれた学生時代のオタク仲間たちは、恋人ができたり、結婚したり、子どもができたりして、次第に趣味への熱量がオタクレベルから人並みに落ち着いていく。
そんな周囲に比べて、私はオタクのまま。

周囲の人間と自分を比較し、ひどく劣等感にさいなまれながらも、それでもどうしても趣味への執着を捨てることができない。
そんな私はこれからも、中田ヤスタカやCAPSULEのことを知らない、自分とは価値観が違う人たちのことを一人勝手に見下しながら、サブカルクソ女として生涯孤独に生きていくのだと思う。

このコントを見た金曜日の夜、そんな負の感情が頭にこびりつき、一向に入眠することができなかった。
たかだか8分のコントで、自分の対人コミュニケーションに関するコンプレックスや、卑屈な感情が全て表に引きずり出されてしまったのである。

公開から1日遅れで視聴して良かった。あしたがお休みで良かった。
就寝から数時間、そう呪文のように唱え続けてやっと、眠気が訪れた。

8月27日土曜日朝。
きょうは、春風亭一之輔師匠の独演会とバイきんぐ単独のライブビューイングを一人でハシゴする。
充実した1日になる予定なのに、まだ気分が晴れなかった。
Instagramを開くと、サークルの同期が、結婚相手であるサークルの先輩と2人で線香花火をしているストーリーがあがっていた。

「私に今後、趣味を手段にしてしまうほどに好きだと言える人ができることはあるのだろうか。」
そんなことをふと思いながら、私はあの子の自転車vol.9の配信チケットを購入した。