#03 カラフルになった生地胴たち ~生地胴に定義ってあるの?
noteを書いている皆さんはだいたい同じだと思いますが、私は書きたがりです。
書くことで考えがまとまったり、ポジティブになり、ストレスも解消できたりします。
いろいろ書きたいことはあるのですが、もう少し生地胴に関する導入の話を続けます。
これも導入に過ぎず、ネタはまだまだ持っています…
■同じ生地胴は存在しません。まさに唯一無二。
前回少し触れたとおり、生地胴は、何も施されていない素地の状態のものを言います。
革目そのままなので、表面はザラっとしています。
よく見ると、血管のあとや毛根がわずかにのこっていることもありますし、加工の過程でできた傷などもそのままです。
1台1台の表情は全て違います。
同じ生地胴は世界に存在しません。
それがまた愛着を湧かせてくれます。
■生地胴と呼ばれるさまざまな胴たち
最近はカラフルな生地胴が多く
「これ、本当に生地胴なの??」「あれは生地胴ではないよ」という人が出てくるようなものも存在します。
たとえば、素地の状態のものに拭き漆をかけたもの。
「生地胴」と言われると、まずこのタイプを思い浮かべる人もいるでしょう。最もオーソドックスと言えそうです。
拭き漆は、木工細工や食器、家具によく見られます。
元々の素材の風合いを残したまま、表面をなだらかにし、丈夫にしてくれる塗りの技法のひとつです。
「拭き漆をかけた時点で生地胴ではない」と話される職人さんもいますし、剣道愛好家にもそういう方はいるでしょう。
結論を急ぐ前にもう少し見てみましょう。
このタイプもすっかり市民権を得ました。
赤生地胴、紺生地胴といわれるタイプです。
これは、革自体は素地のままですが、竹と革の間に挟んである布を「白」ではなく赤や紺にすることで、色を出しています。
生革を成形した状態のものは半透明なので、布の色が透けて見える、というわけです。
その色の出方も革の状態によって違うので、これもやはり1台ごとに表情が変わってきます。
ただし、ずっと使用していると竹と布の接着度が変わってくるので、段々と色が薄くなっていく場合があります。これも個体差なので、もともとの接着の度合いや革目の状態で変化の仕方は異なります。
では次のタイプです。
これもまた根強い人気があるタイプですね。
拭き漆に色を加えたものです。茶色っぽいもの、赤っぽいもの、青っぽいものなど、いろいろあります。オシャレですね。
最近出てきた、革に漆を拭いたものではなく生革の状態で染めた「染め生地胴」というタイプです。カッコいいですね。
■質問殺到⁉︎生地胴の定義を教えて!
このほかにも拭き漆を磨きこんで鏡面に仕上げたものなどもあったりして一言に生地胴といっても、いや、一言でまとまらないほどの種類があります。
10年くらい前までは、素地または拭き漆くらいしかなかったのですが、生地胴の人気が高まるのと比例して選択肢も増えました。
すると私のところにも質問が寄せられるようになりました。
「生地胴の定義ってあるの?」
「コレは生地胴じゃないよね?」
その都度公表してはいませんが同様の質問はすぐに数えられないほどの件数に及びました。
私は倶楽部の管理人ですが、鑑定 をと言われると難しいです。
そもそもその道のプロの皆さんがお店で「生地胴」って言って販売されているものを一愛好家の私が「違う」とも言えません。
困り果ててしまった私は、何人かの職人さんや生地胴を多く販売するお店の店主さんに連絡を取り、生地胴の定義について相談してみました。
すると、皆さん口をそろえたのが
「革の雰囲気が残っていれば生地胴」
という解釈でした。
高崎にある銘店、西山剣道具店の二代目さんは
「生地胴を好むようなセンスを持っているのですから、本来のものをわかっていながらあまり拘り過ぎずに楽しむ余裕があっていいと思います」
と話してくださいました。
そうか。それでいいんだ。
生地胴倶楽部の管理までしているのだから、生地胴の定義は?と聞かれればビシっと応えられるようでなくては…
そう思っていたのですが、西山さんのお言葉で何かスッキリした感覚がありました。
それ以降、あまり難しく考えず、
「革の雰囲気が楽しめればいいと思いますよ♪」
と、答えています。
そして私自身もそういう感覚で楽しむようにしています。
ただし「本来の意味合いはわかっている上で」という言葉を私の中では大切にしています。
そうはいっても、オーナーズクラブの管理までしているのだから、もっと胴の塗のことは詳しく知っておきたいという気持ちも高まりました。
そこで西山さんをはじめ複数のプロの方に相談し終えた翌日、ちょうど休みだった私は「日帰りで旅行に行こう」と家族を誘い、漆職人の仕事場を訪ねるのですが…それはまた別の話。
「で、オススメは?」
こういう立場なので、生地胴を手に入れたいという方からよく相談を受けることがあります。
生地胴は一点ものですので、できれば現物を見て「これだ!」と思ったものに飛びつくのが良いです。
やはり素地の状態のものは色が明るいので勇気がいるのでしょうか。
色味が入ったものを選ぶ人が多いですが、私はやっぱりこれだと思います。
「迷ったら素地(塗り下)」
生地胴に憧れる人ってやっぱりこのキレイなクリーム色の胴台のイメージに憧れている人が大半です。
色味のものを手に入れてもしばらく経つと「やっぱり素地の台が欲しい」と言う人が少なくありません。
私自身もこの源流とも言える素地の胴台が一番カッコいいなと思いますし、最初からこのタイプを手にした方が満足感は高く得られると思います。
なぜ、この明るい素地のタイプの胴台に惹かれるのか?
それは剣道具の色合いに秘密があるのですが…それはまたの機会にします。