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シュニッツラー「カサノヴァの帰還」Arthur Schnitzler:Casanovas Heimfahrt


「そこ(寝室)には憧れの女(マルコリーナ)が彼(カサノヴァ)を迎えんと腕を広げていた。剣を手から放し、マントを肩からすべり落とすと、彼を己れの幸福の中に身を沈めていった。」

 稀代の色事師カサノヴァも、齢53を迎え忍び寄る「老い」の不安を隠せない。故郷ヴェネツィアへの望郷の思いを抱きながらカサノヴァは各地を遍歴している。

 あるとき、滞在中のマントヴァで若い女学者見習いのマルコリーナに出会い欲情にかられる。昔の武勇伝を知る中年の女性達は今でもカサノヴァに秋波を送るが、信仰深く学問に身をささげる若きマルコリーナは、カサノヴァがいくら恋を仕掛けようとも、一向に乗ってこない。しかし、カサノヴァは、神に背き背徳感を感じる尼僧との逢瀬やお堅い貞女など手ごたえのある恋が好きで諦める気配はない。

 マルコリーナには、実は秘密の恋人の少尉ロレンツィがおり、二人が逢引しているのをカサノヴァは目撃し激しい嫉妬に襲われる。ロレンツィが侯爵に借金をした際、その肩代わりをする代わりに、ロレンツィにマルコリーナとの逢引の手はずをさせ、カサノヴァがロレンツィのマントをはおり、自分がマルコリーナの寝室に忍び込み、彼女をものにする。そうとは知らず情熱的に応える可哀想なマルコリーナ。ロレンツィは自責の念に駆られカサノヴァに決闘を申し込むのだった。

 官能文学を書くのが得意なウィーン世紀末の作家シュニッツラーだけあって、文章の端々に官能の香りが漂ってきて、ドイツ文学でないような印象受けました。夢の話がたくさん出てきてフロイトの影響を感じます。カサノヴァは男前ぶりより、いやらしさ&卑劣漢ぶりが描写から伺え、女性から大顰蹙を受けそうな内容でした。

BGMはカサノヴァの故郷ヴェネツィアにゆかりのあるヴィヴァルディを想起して、ヴァイオリニストクレーメルの「エイトシーズン」にしました。ヴィヴァルディの「四季」とピアソラの「ブエノスアイレスの四季」をカップリングした面白い企画構成で大変気に入っております。クレーメルが弾くピアソラの四季は大人の官能があり、カサノヴァの世界観にも合うように思います。

Las 4 estaciones portenas: Otono porteno (arr. L. Desyatnikov)

https://www.youtube.com/watch?v=H8ed6RAnF2s

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