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クラウン*ベスのアメリカ体験記 vol.15

エリザベスが綴ります


テキサス州の南の先端でカーデンサーカスをクビになり、何時間ものドライブの末スティーブのホームタウン、サウスキャロライナ州に無事に帰りました。仕事のストレスや旅の疲れを癒した後は、次の仕事探しです。日本の木下サーカスでパフォーマンスをしていた時は、アメリカの広大な大地をキャンピングカーで移動しながらクラウンが出来たらどんなに面白いだろう、と思っていました。私達のキャンピングカーでのサーカスの経験は、1週間も経たないうちにつぶれてしまった最初のサーカスヴァレンティノ、ポスター張りばかりでなかなかパフォーマンスをさせてもらえなかったカーデンサーカス。キャンピングカーでいろいろな自然に触れられたのは良かったけれど、クラウニングに関しては私が描いていた想像とはとてもかけ離れて、不満いっぱいでした。

精神的にも肉体的にもまずはフルタイムでクラウンができる環境に自分を置いてみたいと感じるようになり、私のもう一つの夢、いつかアメリカのリングリングサーカスでフルタイムでパフォーマンスがしてみたい、という気持ちに一気に傾いていきました。クラウンカレッジジャパンに在籍していた頃、カレッジ内にはリングリングサーカスのクラウンたちがサーカスでパフォーマンスをしている写真が幾つも壁に貼られていました。それを毎日見るたび、実際のサーカスは観客も大勢で歓声もすごいんだろうなと想像し、いつかこのサーカスでパフォーマンスできたら楽しいだろうな、と思いを巡らせていました。スティーブはリングリングサーカスは、1988年に1年間アメリカ国内のブルーユニットでパフォーマンスして以来です。それ以降は日本での仕事が中心だったのでもしリングリングサーカスで採用されたとしたら約10年ぶりです。1988年のリングリングサーカスでの楽しかった思い出を思い返してサーカスにクラウンの空きがあるか聞いてみようということになりました。リングリングサーカスのキャスティング担当兼副プロダクションマネージャーでもあることで世界中のサーカス関係者からもよく知られている、ティム.ホルスト氏に来シーズンのキャスティング状況を早速電話で連絡しました。やっとスティーブはホルスト氏と直接会話をすることができました。ホルスト氏はスティーブのことはよく知っていて、知らないのは私のことだけ。スティーブは私のクラウンとしての経歴を伝えました。私のアメリカでのイミグレーションのステイタスを聞かれて違法の形で滞在していないかどうか確認されました。それからサーカスでは列車に住むことになりますが、ショーにでている動物以外はペット禁止。

スティーブと私は将来ジャックラッセルテリアのグロックとルーシーと一緒にショーをするつもりでいたので当然リングリングサーカスに連れて行くつもりでいます。いつも一緒に生活してトリックの練習をしている犬達は、この時点ではまだ毎日ライブショーができるほどのベテランではありません。ホルスト氏は「犬達は芸ができるんだろうね?」と問うと、スティーブは自信満々で「もちろんできます!」「それなら列車に一緒に住んでもよろしい」とホルスト氏から正式に許可を得ました」ホルスト氏、犬達を連れて行きたかったために偽った返答をしてごめんなさい。私達はリングサーカスに行ったあと徐々に犬達をサーカスに慣れさせていけばなんとかなる!と真面目に信じていました。(実際その通りになりましたが)当時リングリングサーカスは、ブルーユニットとレッドユニットが2つのルートでアメリカ全土の主要都市を興行していきました。このユニットは異なったテーマのショーで2年かけてアメリカ全土を回ります。1年目のルートは巨大都市を回るコース。フロリダ州を出発して北に向かい都市をめぐっていきます。そしてニューヨークで長めに滞在した後は西海岸を目指します。カリフォルニア州の都市を南から北へ回ります。もちろんロザンゼルスやサンフランシスコでは長めに滞在。そして北へ北へ進み公演を続け、ワシントン州のシアトルで滞在。その後はアリゾナ州のフィニックスやネバダ州のラスベガスをまわり最終的にはイリノイ州シカゴでルートを終えます。2年目は小さめの都市を回すコース。フロリダ州から興行しながら北に進みます。そしてテキサス州のたくさんの都市を回り最後はマサチューセッツ州のボストンで終わり。ホルスト氏は、来シーズンはブルーユニットのクラウンの何人かがやめて行く予定なので空きがあるとのこと。2年目のコースを回るので巨大都市には行かないけれど初めての環境に慣れるのには絶好の年。リングリングサーカス128年目エディションのショーで俗名「サイドショー」もうワクワクなんてもんじゃありません!

↑私が初めてリングリングサーカスに入団した時のショーのプログラム


続く。。。



書いたのは、

エリザベス

1990年CCJ2期卒業生。7年間日本でクラウンパフォーマンス後渡米。アメリカ、カナダで10年間クラウニングを続行。その後10年間マクドナルドのクラウン、ロナルドのアシスタントを務める。現在アメリカ在住。

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