珍道する桂馬part10
ホテルに着いて靴を脱いだ瞬間、森羅万象を理解する。
足が異臭。
およそ人体から出るような臭いではない。ゴリゴリの剣道部員が一日練習した後の防具と同じくらい危険なスメル。
僕の足、というよりかは靴が臭いとも言える。原因は僕の足ではなく靴そのものではないのか。
余裕があるとき、中敷きを取り外して洗う。しかし、数日経つと当然かのように異臭が発生する。なんだか中敷きを洗うのもめんどくさくなってくる。足が臭いのは長期旅行者の宿命であろう。
こうしていろんなものを受け入れることで人はまた大きくなるのだ。
ということで、足の裏ではなく、日本の裏、アルゼンチンにやってきた。なはは。
首都のブエノスアイレスはかなりの都会だ。今回の放浪の中で一番栄えている。スペインの植民地だったということもあり、街並みはほぼヨーロッパ。生えている植物がなんとなく南米感があるかもしれない。タンザニアと同じくジャカランダが花を咲かせていた。
街の規模感の割に人が妙に少ないような気もするが気のせいだろうか。
タンザニアのような舗装されていない道路にトタン屋根の平屋が並んだ街を歩いていると旅している感が出てくる。が、都会も悪くない。なんせ僕はシティボーイだから都会に馴染んでしまう。もし僕が武田鉄矢だったら東南アジアのジャングルしか馴染めなくて大変なことになっていた。
アルゼンチン人は全員この謎の容器を持っている。
どうやらこれでマテ茶を飲んでいるらしい。
道端にいた人がリュックから袋を取り出してこの容器に茶葉を入れていた。茶葉を普段から持ち歩くくらいマテ茶は生活に浸透しているようだ。
僕も以前日本で太陽のマテ茶をよく買っていた。今調べたらもう販売されていないらしい。
ホテルにマテ茶のティーバッグがあったので飲んでみた。僕の知っているマテ茶とはなんか違うような気もしたけど悪くない味だった。夕方のすすき畑を走り抜けた感じの味だ。