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遠い寂寥
シンシャが月人になった後、誰かが「フォスが一緒でないとダメか?」と尋ねる。それに対してシンシャは「そうじゃないから困る」と答える。
このどうしようもない寂しさは他の追随を許さない苛烈さがある。
のっぺりとした月人の作画、冷たく深い宇宙空間の闇、行き場の失った感情。
「夜の見回りよりずっと楽しくて君にしかできないことを僕が必ず見つけてみせるから!」
フォスの言葉はずっとシンシャの心の奥底に残っていた。いろんな宝石を巻き込みながらフォスは月に辿り着き、紆余曲折あり、神となった。
フォスはシンシャのためだけに行動していたわけではないし、最早自分でも何のために行動しているのかわかっていないようだった。けど、フォスの行動の結果としてシンシャは自分の居場所を手に入れた。月人となり幸福を享受した。
シンシャは地球でフォスに砕かれる瞬間に感謝を述べた。その感謝は心からのものだっただろう。
最初の頃、シンシャはフォスに好意を持っていたと思う。けれど、長い年月フォスと離れ、他の宝石達と一緒にいるうちに、フォスが自分にとって唯一無二の友達というわけではなくなってしまった。
シンシャが無情だとは思わない。この感情の移り変わりは当たり前のことだ。けど、同時にフォスがいたからこそシンシャは幸福になれたという事実はずっと存在する。
シンシャのその申し訳なさそうな感情はとても人間的だと思った。だから、寂しい。