ぼくらは皆バトルマスター
2種の構築済みデッキ「バトルマスター」発売から数日。
ポケカ初心者はもちろん、ある程度のプレイヤーでも
「そういえばまだ使ってはなかったんだよな」という層など
このデッキセットを買った人も多いのでは。
買ってない?確かに筆者も両方作っていたのでそうですが
……買うか悩んでいる、実際いい商品なのか分からない?
という仮想の前置きはともかく、
この2つの商品が果たしてその金額に見合うものなのか。
「バトルマスター」の名に恥じない逸品なのか。
筆者なりに精一杯お伝えしようと思いますので
悩んでいる暇があったら出来るだけ早めに買って欲しい。
今回長めなので面倒な方は最後に飛んでください。
▷概要
①商品自体の基礎スペック
今回は2種に分かれる商品のため両方を細かに扱うと
文量がとんでもないことになりかねないので
筆者自身の使用歴が長い「パオジアンex」の方を参考に
以下の話を進めていきたいと思います。
まず、どちらも希望小売価格は「3000円」とやや高め。
近い所だと古代と未来にリメイクされたSVパッケージの
「コライドン(ミライドン)exのデッキ&ビルドセット」
よりは少し安いくらいですね。
あちらはデッキ外の便利カードを多数添えている形のため
比較対象としては大分ズレたところにあるので、
より比較条件をシンプルにしておきましょう。
肝心のバトルマスターデッキはプロテクター付属です。
こちらがそもそも「890円」するものなので引きましょう。
すると「2110円」がデッキ分の金額と言えそうです。
これはいわゆる「スターターセット」、
現在だと「ラウドボーンex」や「ミュウツーex」の物が
最近の商品となる「1800円」のデッキ、より少し高い物。
しかしあちらはある程度初心者向けの簡素な構築です。
更に過去に遡ると「ハイクラスデッキ」と呼ばれる
以前の基準で言うところの「強い構築済みデッキ」があり、
あちらはなんと「2700円」でした、今聞くと高いですね。ちなみに言うほどそのままで強い商品でもなかったです。
そういった訳で単純な金額面ではまあそれなりです。
いきなり「すごいお得!」とまでは言いにくいですが
納得出来るラインではないでしょうか。
では過去の商品との比較ではなく、この商品の中身を
全く同じものを0から揃える場合の市場価格で考えると
果たしてどうなるでしょうか。
某通販サイトで基本エネルギー以外の全てをカートへ。
はい、3倍近くになりました。
「そりゃ買う場所が悪いんだよ」と思う人もいるかもですが
見たところ滅茶苦茶な金額設定だったとは思いませんし
上手く立ち回ってもこれを半額以下に抑えるのは
さすがに厳しいだろうという内容です。
もちろんこれは内容物を余すことなく利用する場合で、
手元のカードとのダブりや後で使わなくなる場合など
無駄、と言える買い物も無くはないでしょうが、
例えその分を差し引いて計算したところで
これだけ元がお得ならほとんど気にならないのでは?
つまり、金額面で見た際の結論としては
少なくとも今現在、この内容を買いたいなら超お得!
くらいは断言できるほどの設定となっています。
そんなカードリストの全容も見ておきましょう。
一言で言えばほとんど無駄がありません。
突き詰めれば要らなくなりそうなカードや、
「あっ、構築済みデッキっぽいな」と感じる部分は
さすがに0ではありませんが、便利なカードが厳選されて
それこそこのまま戦っても普通に成立している、と
素直に評価できる程の内容となっています。
先ほど「初心者向け」と言った「ラウドボーンex」はこちら。
「構築済みデッキ」のあるある、多めの基本エネルギー、
とりあえずタイプとしては揃えたバラバラのポケモン達、
ほとんどのカードが3枚以下の中4枚ある「ネモ」。
もちろん基礎的な遊びをする上では問題ありませんが、
比べてしまえば競技的なレベルは天と地の差です。
(初心者の方にこういう商品を勧めない訳ではありません)
ちょっと金銭的な話をしますが「ネストボール」、
こちらが1枚で「2~300円程度」と結構かかります。
何ならこれが2枚多く入っている時点で差額分は……。
競技的な視点に戻りますと、ほとんどのカードに
明確な役割があって入っているのがバトルマスターです。
一方既存の控えめなパワーのデッキ商品はというと
入っているから使うけど他のカードに変えてみたいなあ、
と自然とそう思うような内容にされていると思います。
これはネガキャンという訳ではなく、初心者に対して
繰り返し遊んでいればデッキ構築を変えたくなるのが
まさしくカードゲームの醍醐味の1つである。
という部分をスムーズに体験してもらいつつ、必要以上に
複雑な試合展開になりにくくするための物でしょう。
一度の番にやれる事が多すぎても処理できませんから。
弱いことにも意味はあると筆者は考えます。
一方のバトルマスターはまあとりあえず強いです。
しっかり乗りこなしてあげるだけでも、他の初心者の
頑張って自分で作ってみた成長途中のデッキくらいなら
正直コテンパンに出来てしまいそうなくらい強いです。
一体何をもってそこまで「強い」と断言するのか。
この商品が「バトルマスター」たる肝をお伝えしましょう。
②要するに「バトルマスター」って何が言いたいの?
この部分の解釈はかなり人によるものだと思います。
その上で筆者の解釈としてお伝えしますが、
(強い)バトル(の戦略を)マスター(できる)、
ごくざっくり書き添えるならこんな感じだと思います。
軽く牽制しておきますが、少なくとも
これ1つで一気に最強になれる!くらいの
「マスター」の解釈はさすがに違うかなと思います。
強いことは強いんだけど、全てではないぞ、と。
筆者が思うに、この商品を通して体験してもらいたいのは
ポケカにおいて競技的に強いとされる戦略への導入、
強くなるにはどうしたら?という初心者への道標、
その具体例の1つを手に取って実際に扱ってもらうこと、
あるいはこれを土台に独自のデッキにしてもらうこと。
大体そういうことではないかなと思います。
その教科書たるがために強く作られているということ。
それでこそこの商品は「バトルマスター」に相応しい。
筆者はそう感じました。
前の部分でこれは無駄が少ないデッキだと言いました。
もう少し分かりやすく説明するために改めてリストを。
この20種のカードが「パオジアンex」の方の全容です。
初心者の方にも可能な限り伝わりやすくするために、
駆け足ですが全てのカードの役割を書き出します。
(左上から順番に行くので不要なら飛ばしてください)
・パルキアV、VSTAR
「VSTARパワー」という一度限りの必殺技を使う担当。
一気に3枚ものエネルギーをポケモンに付けられる。
ついでに自分も攻撃して強い便利なポケモン。
いわゆるサブアタッカー。
・かがやくゲッコウガ
「かがやく」と名のつくポケモンはデッキに1枚だけ。
厳しいルールの代わりに個性抜群な強いポケモン。
手札を整えられる特性と、相手2体を強襲できるという
非常に有名なワザを持つ対策必須レベルのカード。
・セビエ、セゴール、セグレイブ
肝心なのは「セグレイブ」で自分の番に何度でも、
手札の水エネルギーをポケモンに付けるとんでも特性。
これがあるからデッキが成立するくらいの影の主役。
次の「パオジアンex」とはまさに相棒。
・パオジアンex
デッキのエースである看板ポケモン。
バトル場に出すだけで手札にエネルギーが増える上に、
自由自在の超火力が出せるスーパーアタッカー。
エネルギーを何枚場に出せるかが肝なので補助が必要。
・ビッパ、ビーダル
手札のエネルギーがどんどん「セグレイブ」で使われて
一瞬で無くなったところに「ビーダル」の特性の出番。
大量のカードが次々に使われてはまた増える、
この爽快感を維持してくれる重要なポケモン。
・スーパーエネルギー回収
使うばかりだとあっさりエネルギーが無くなってしまう、
それを回復させるための必要不可欠な1枚。
これ1枚が4枚のエネルギーになるようなものなので、
最終的にはこれ1枚がその場の運命を変えるほどの力に。
・ネストボール、ハイパーボール
「強いデッキ」にする上での最低条件のようなカード。
どんな最強の戦略も、実際に揃わなければ無いのと同じ。
その時欲しいポケモンを自由に選んで出せる、
この強さが分かった時、1人前になれるのです。
・ふしぎなアメ
普通に進化するにはセビエ→セゴール→セグレイブと
3枚のカードを3ターンに分けて順に使わないとダメ。
それを縮めるだけでなく、よりシンプルにする1枚。
あるとないとじゃ段違い、「カイ」最強。
・ポケモンいれかえ
常にバトル場に出したいポケモンがいる訳ではない。
いつだって「にげる」が使える訳でもない。
このエネルギーを他の事に使えたら……!!
そんな「もしも」の瞬間を叶えるためのカード。
・カイ
今の水タイプを支える強烈なカードの1枚。
これ1枚が「セグレイブ」+「ふしぎなアメ」になるため、
「セビエ」を出した次に「カイ」を持っていれば進化が確定。
これまた使いたいカードを自由に使うためのカード。
・ナンジャモ
次はああしてこうして……と考えているのは相手も同じ。
真っ向勝負もいいけれど、もし手札が変わったら……?
自分が全速力で駆け抜けるだけじゃなく、可能なら
相手が走るスピードを遅くさせてしまう。
それもまた勝負の難しさ、そんな1枚。
・博士の研究
このデッキとの相性は必ずしも最高ではないけれど、
これだけ思い切った手札の整理ができるのは唯一無二。
今が博士を使う時だ!この判断ができたら君は強い。
・ボスの指令
「ナンジャモ」と似て、相手を困らせるカード。
ベンチにいれば大丈夫!はこのカードには通用しない。
倒すべきポケモンを倒すのって意外と難しいのです。
この1枚が試合の決着を左右することもある切り札。
・ビーチコート
いちいち「にげる」のにエネルギーを使っていたら、
攻撃のための分が無くなってしまうかもしれない。
これがあると「たねポケモン」なら0~1になるように
デッキが作られているのでスムーズににげられるように。
・水エネルギー
一応少し多めになっているのがデッキ商品っぽい部分。
……とバッと書き連ねた通り、「パオジアンex」を筆頭に、
全てのカードが具体的な戦略性と個性を持っています。
ただ攻撃するだけのポケモンが何種類もいる訳ではなく、
攻撃役、エネルギーを付ける役、手札を増やす役。
それぞれが違う仕事をしながらも、それらは全て
水エネルギーを沢山使って豪快に攻撃し続ける、という
たった1つの戦略へ向けて協力し合っています。
この戦略を形にするという戦い方とデッキの作り方、
これが「バトルマスター」を体験するということです。
例えば筆者が先生にでもなったようなつもりで
このデッキを通して初心者に具体的に教えるならば、
・どうやって勝ちたいのかを決めてからデッキを作る
・そのために必要ないくつかの役割を分担させる
・それが手札と場に実現出来るように他のカードで支える
・勝つためにはそれをより素早く行うことも大事
これはどんなタイプのデッキであれ、強い人であれば
当たり前のこととして染みついているものです。
その「当たり前」を自分の手で体感し、可能であれば
頭でも理解することで、今後自分で考えていく時でも
自然と強いバトルの戦略をマスターしている姿が、
そこにあることでしょう。
そう、それさえ出来ていればとっくに1人前なので
その辺で遊んでいる人達も大体皆「バトルマスター」です。
「もっと強い人達だっているじゃん!」というのは
その人達が「スーパーバトルマスター」なだけです。
そういう「強さ」は簡単に商品で形にはできません。
めっちゃカードに詳しくて、めっちゃ頭が回ってて、
勝つにしても負けるにしても「やれることはやった」と
言い切れるくらい頑張った人達の強さです。
お金で真似できるものではありません。
この「バトルマスターデッキ」が教えてくれるのは
有名なデッキって結局なんであんなに強いのか?
ということです。
ちょっと使うだけでも、
何かどんどんエネルギーが付いて攻撃も強くて、
やられてもやられても次のポケモンがすぐに出せるんだ。
そういう事が感じられればOKです。
ぼくのデッキじゃこんな事出来ないもんな、って。
そこから「じゃあどうしようかな」というのが本題です。
ぜひ頑張って試行錯誤してみてくださいね。
▷ネガティブな意見について
①あのカード、入ってないの?
この商品に対する不満としてそこそこ確認できたのが、
「なかよしポフィン入ってないじゃん」というものです。
ネガティブな意見の中の割合ではやっぱりこれかなと
言えるくらい大体これで、代表的なのはあと1つかな?
ちょっと良くない空気の元にはなっていました。
2種どちらのデッキにおいても競技プレイヤーの構築なら
平気で「3~4枚」入っているくらいには定番のカードで、
物足りなさの象徴として扱われているのは分かります。
何が問題かと言うとこれ1枚あたりが高いんですね。
お店にもよりますが千円札だけでは足りないことも。
それを聞くと入れて欲しかったなあと思うでしょうし、
あるだけ嬉しいので気持ちは筆者も分かります。
ただこれ、全部語ると長くなるんですが、
筆者としては最初から「無くて当然」とまで思っていて、
「無い方がいいかな」とまで考えていた節があります。
いくつか理由をご説明します。
・収録元のパックが普通に今ある
このカードは「ワイルドフォース」のカードなのですが、
そうなると割とごく最近のカードとなっています。
加えてこの「ワイルドフォース」などを含む過去商品の
かなり大規模な再販売がちょうど最近ありました。
何ならまだお店にありますし、極端な例だと
最早パック自体は値引きされている所すら見られます。
集めるための商品自体は、他ならぬ公式の手によって
一足先に市場に用意されていました。
ここであっさりデッキの方にも収録してしまうと、
目立つカードの唯一性が損なわれた抜け殻のような商品、
がすぐ横で生まれかねません。
企業の儲けがどうとかいう話ではなく、
絶賛販売中のアイテムが無価値になるのは早すぎる、
くらいの話です、時期が開けば普通にいいと思います。
補足でキャンペーン品でもありました、大会参加ですが。
このカードの重要性は認知されている証拠ですね。
・デッキの完成度が上がりすぎる
え?と思われるかもしれません、強くしちゃ悪いのかと。
しかしこの商品の完成度は既に相当なステージにあり、
言うなれば「完成寸前」と言えるほどのものです。
デッキコンセプト自体が複雑化する場合を除いて、
(他のエース級ポケモンが混ざるなど)
使うとしたらこういうカードだよね、というものが
本当に9割近く入っています。
そこから「なかよしポフィン」を入れ替えた場合、特に
「まあこれは正直変えてもいいよね」という所から選ぶと
完成度はいよいよピークに近付いてきます。
さて、ここで想像していただきたいのですが、
もし100点満点そのままのデッキがポンと買えた場合、
あなたはそこからカードを入れ替えようと思いますか?
あるいは、
それでも自分の好みでカードを入れ替えた時に、他人に
「え?それ余計なことしない方が強いよ」と言われたら?
「デッキ構築」への意欲がまるで出ない気がしませんか?
実際ここまでの状態になるかは極論かもしれませんが、
それだけ遊びのない商品は面白くないと思います。
(ふざけるという意味ではなく「余白」という意味で)
しかもそれが高額な訳でもなく逆に安価に手に入ったら。
わざわざ自分の手でデッキを作るのって何なんだろう、と
人によっては感じてしまうのではと考えました。
・与えるのではなく奪う
上記の不安点が揃った場合の最悪のケースとして、
たった1つの「完璧なデッキ商品」が生まれることで
パックへの楽しみ、構築を考えるという遊び、
場合によってはその先の「ポケカが楽しい」という気持ち、
本来これをきっかけに「与える」はずだったものを
反対に「奪う」凶器にすらなりうると思います。
こうした視点から、もちろん1ユーザーとして
より多くのカードをより安価に集めて気軽に遊びたい、
という気持ちは非常によく分かるとした上で、
まあ、でも限度があるんじゃないかな、というものです。
あと1つである「ACE SPEC」の話についても基本同上です。
②「スタン落ち」が近いんだけど?
これは、大会のルールである「スタンダード」において
一定以上の古いカードは定期的に使えなくなるもので、
左下に「F」とあるカードが1月でそうなるという話です。
事実その範囲のカードが割と入っている商品です。
意見としてこれについてはそこまで沢山見かけた、
という程ではないのですが、
大事な話ではあるので触れておきます。
これは回答としてはシンプルで仕方がないです。
ある程度デッキについてご理解いただければ分かる通り、
強いカードを入れたら結果としてこうなります。
すなわち、今皆が使っているデッキがそもそも
そういうものだよね、というだけのことです。
前向きに捉えれば、今更半年ちょっとで使えなくなる物を
わざわざ買うのはなあ……、と思っているところなら
デッキ買えばざっくり揃うじゃん!とも言えます。
何ヶ月もの間、期限に怯えて使うカードを選ぶくらいなら
今出せる力を出し切った方がプレイ体験としては
より気持ちのいいものになるのではないでしょうか。
「VSTAR」も「かがやく」も、使うなら今だけですよ。
▷総評
結論として筆者からは
こんな商品今までに無かったくらいの内容なので、
早め早めに買って強くなれれば一番ですよ!
と、これに尽きますね。
もしそれぞれのデッキを使い始めるなら、これを買って
必要な物を買い足した方がお得かつスムーズですし、
スタン落ちの話も考えるなら買う時期が遅いほど
満足に使える期間が短くなってしまいもったいないです。
また、この商品から学べることは総じて
ポケカそのものの遊び方をワンランク上げるためのもの
であり、この先ずっと役に立つであろう栄養です。
究極的なことを言えば、特に強くなりたい初心者の方は
買わないとしてもデッキリストをじっくり見てください。
参考にして自分のデッキと見比べるだけでも
ためになることは多いのではないかと思います。
どんな形であれ、この機会を上手く活かしてください!
それでは、また。