不動産開発の視点で見るSEKAI HOTELとは。
19歳の頃から不動産業者として働いてきた。
初めは賃貸物件の仲介、そして賃貸物件の管理、そして売買を経験してきた。
途中ですごく辞めたくなったけど、悩みに悩んだ末に「新しい不動産(開発)」を目指すことにした。
新しい組織で、新しい不動産開発。
それは“社会にとって替えの効かない不動産事業”を目指すことである。
弱みを強みに転換。
元々、僕は不動産業者同士の付き合いが異常に下手なので、不動産業者コミュニティで飛び交う物件情報のキャッチボールにほとんど参加してこなかった。
特に良い物件情報(相場価格より安い)にはたくさんの同業者が群がり、そこでは価格だけでない、争奪戦が始まる。
不動産業者の本業ど真ん中と言える業務において、スキルの低い僕は「みんなが群がらない中古物件の価値を上げる仕事できないかなぁ」と常々思っていた。
不動産価格の目利きは当然できるので、「もっと高い土地価格でも良いのに」というエリアを見つけて、中古物件の再生ノウハウを作ることにした。
そのノウハウ第一号がSEKAI HOTELである。
まちごとホテル -SEKAI HOTEL
いつもはソフトコンテンツの視点でSEKAI HOTELを書くことが多いので、今日は不動産開発の視点から書こうと思う。
①分散型ホテル。
SEKAI HOTELは一般のホテル業と違って、客室や食堂などが一つの建物に集約されていない。
拠点となるフロント施設の周辺に客室がバラバラにある。
この客室は全て、元空き家か元空きテナントである。
多くの地方で「いかに観光客に地域を周遊してもらうか?」という悩みを抱えているが、SEKAI HOTELはそもそも地域を歩かないと客室とフロントを行き来できないようになっている。
②キャパシティを調整できる。
SEKAI HOTEL最大の特長は“客室の数を増減させることが可能”ということである。
一般的なホテルは一度作った後は、新たに隣地を取得しない限り客室を増やすことはできない。
しかし、まちごとホテルであるSEKAI HOTELは、隣地である必要も無いので市況に合わせて客室(キャパシティ)を増やすことが可能だ。
さらに“減らすことができる”のも強い。
誰もが予測しなかったコロナウイルスによる危機的状況において、SEKAI HOTELでは、新規の客室開発計画を中止し、
いくつかの客室は、賃貸住宅の用途に変更することで
①地主は住宅として賃料収入を得る。
②SEKAI HOTELは使用しない客室の賃料リスクを回避する。
という防衛策を実施することができた。
今後、市況が回復した頃に賃借人が退去した場合は、再度客室として再稼働すればいいのだ。
③空き家の解決になる。
日本の空き家問題が注目されるようになって随分立つ。
新築物件が好まれるために、多くの中古物件が流通せずに市場で滞るため「中古物件の利活用方法が進歩しない」という問題もある。
しかし、SEKAI HOTELでは中古物件をリノベーションするノウハウだけでなく、“収益化するノウハウ”も確立しているため、全国の様々な地方に展開できるのではないだろうか。
空き家でなくても、「シャッター商店街」と揶揄されるような空きテナント・空きビルも増えてきている。
2017年のOPENからこれまでに、SEKAI HOTELでは20棟近くの空き家・空きテナント・空きビルを再生している。
未開の地へ。
このように不動産開発という領域には、先人が触れていない部分がかなりの広さで残されていると僕は思う。
きっかけは、「他の不動産業者と違う戦い方をしたい」というものだった。
しかし、SEKAI HOTELをきっかけに“社会にとって替えの効かない不動産事業”を経験することができた。
これから人口が減っていく日本において、高度経済成長期のような「作れば売れる」というような不動産は通用しない。
複雑化していく社会の中で、社会の課題解決を目的とするような不動産開発がこれからの当たり前になることを目指していきたい。