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ていこさんの置き土産@カタリベ③
ていこさんと知り合ったのは、とある女性専用ジム。
あ、ご近所の方だ!と思い挨拶をしました。
ていこさんも、私の顔くらいは知ってくれていたようで、二言三言お話させて頂きました。
その時、ていこさんが話す言葉やイントネーションにビビビと反応した私。
「もしかして、ていこさんって北陸出身の方ですか?」とお尋ねしたところ…
ていこさん:
「うん、私は富山生まれだよ」
私:「わー、ホントですか!嬉しい!!私もです!!!」
ていこさん:
「ほんとかいね!私も嬉しいわー」
↑もう完全に富山弁になったていこさん。
その日を境に親子以上に年の離れた交流が始まりました。
ていこさん、その時90歳。
大きな邸宅で一人暮らし。
互いの家まで歩いて1分、お互いの家が見える距離に関わらず、道路を1本挟んでいた為に組が違い、それまで全く交流がありませんでした。
同郷というだけで、一気に仲良くなった私達。
会えば富山の良さを延々と熱く語る二人。
高齢で富山へ帰郷する事が出来なくなったていこさんに
私が富山へ帰省した際、富山名産のかまぼこやお菓子を買ってお土産に持っていくと、玄関先で小さな身体でぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでくださいました。
それがめちゃくちゃ可愛いんです。
どんな些細なお土産でも毎回仏壇にお供えしてくれるていこさん。
時々、要冷蔵の食品をお供えしそうになられるので「ていこさん、それは冷蔵庫だよー」ってやり取りしたのも楽しい思い出。
90歳にしてジムに通ってらした事もあり、元気で、とても頭の回転も速く、そしてなにより気遣いの方。
ていこさんが私に野菜やお料理を持って来て下さったので、後日お礼にお菓子を持っていくと
「これからお返しはなしにしようね!やりたくてやってるだけだから。お互いに気を遣うのはなし!」
と、きっぱり言われます。
そんな事を言いながら、私がきゅうりを焼酎漬けしたお漬物を持っていくと、数日後にはしっかり自分の漬けた別のお漬物を持って来てくださる。
お返ししとるやないかーい笑
「小百合さんが作ってくれたきゅうりの焼酎漬け、凄く美味しかったからレシピ教えて」と言われ、紙に書いたものを持っていくと、すぐに作ってくれた時は嬉しかったなー。
なんでも即実行してくれるところも大好きでした。
その日、6月某日は、ていこさんのコロナワクチン接種に付き添う日でした。
前回のワクチン接種の時は前日に「小百合さん、明日お願いね。一緒に行ってね」と電話がありましたが、その時はなく…
最近物忘れが多くなったと話されていたから、ワクチン接種のこと忘れてないといいな、なんて思いながら、当日は約束していた時間より少し早めにていこさんの自宅を訪ねました。
でもインターホンを何度押しても出て来てくれない。
いつもなら
「小百合さん、今行くねー。待っとってー」
と元気な声が聞こえて来るのに、なにも聞こえてきません。
ふと玄関わきのベンチを見ると、新聞が何日分も積んであります。
宅配便の不在通知もありました。
はて?お留守?友達と旅行にでも行かれたのかな?
でもワクチン接種の日付を書いた大きな紙が玄関の下駄箱の上に貼ってあったよね!?忘れてないはず。
と思いながら、ご近所の方に伺おうと、ていこさんちの向かい側に住まれるお宅のインターホンを押しました。
すぐに、そのおうちのご主人が外まで出て来てくださったので「今日、ていこさんのワクチン接種の日なんですけど、お留守にされているようで」と尋ねました。
「数日前に廊下で倒れて亡くなってたんだよ」
もうその後はなにを話したか覚えてないくらい道路の真ん中で泣きました。
享年92歳でした。
ていこさんに出逢ってからの2年間は本当に楽しい日々でした。
愛知に来てから富山出身の人とそうそう出逢う機会もなかったので、会えば二人で富山の魅力を語り尽くしました。
亡くなられた前月、5月の私の誕生日にはプレゼントを持って来てくださって、いつも通りたくさんお喋りを楽しみました。
この時も物凄くお元気で、まさか一ヶ月後にこんなお別れが来るなんて全く想像していませんでした。
ていこさんからの誕生日プレゼント
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前回のワクチン接種に行く途中(病院まで徒歩30分)では、ていこさんが
「私、前世でよっぽど良い事したんかもしれんわー、こんな年になって富山出身の小百合さんに出会えて、ほんとに嬉しいが。ありがとね、ありがとね」
と病院に着くまで富山弁で何回も繰り返し言われるので
「ていこさん、もう100回聞いたよー。もう十分!」
なんて言って二人で大笑いしていました。
ていこさんの93歳のお誕生日、11月19日には何をプレゼントしようかな~と考えていましたが、それは叶いませんでした。
昨年2023年6月、突然のお別れでした。
ていこさんの家の前を通るたびに、今でも寂しくて涙がぽろぽろ零れます。
それから約、数ヶ月後のこと。
ジムで少し会話するようになっていたCちゃん(以前、カタリベの記事に登場した、あの少し天然のCちゃんの事です)
Cちゃんに
「少し前に、親しくしていたお友達が92歳で亡くなられて、本当に寂しい」ってこぼした所…
Cちゃん:
「え、え、それってもしかして、ていこちゃん!??」
と。
私:「え?なんで!?知ってる人?それも、なんでていこちゃん呼び??」
もうね、ほんと奇跡のような出来事でした。
ていこさんが定年まで勤めていた会社で今働いているのがCちゃん。
Cちゃん:
「ていこちゃんは、昔から頭がよくて、女性が働きやすい環境にと動いてくれたおかげで、バツイチの自分がずっとこの会社で心地良く働く事が出来ている」
と教えてくれました。
そこから、Cちゃんと二人、ジムの前で号泣しながら、ていこさんの思い出を語りました。
ていこさんが突然いなくなってから1年半が過ぎた今でも寂しくて堪りません。
毎日、電話して声を聞くなり、一日に一度は顔を見に行けば良かった…。
後悔は尽きないけれど、Cちゃんとていこさんの話をする事が出来て嬉しいです。
私の住む豊田市は豊田自動車関連の工場がひしめく町。
山ほどある、会社や工場の中で、こんな偶然ってある?と二人で衝撃を受けました。
これはきっと、ていこさんが自分がいなくなった後、私が寂しくならないように、Cちゃんと出逢わせてくれたんだろうなと思います。
お茶目なていこさんの事だから
今頃、あっちの世界で
「ふふ、やっと気づいたけ?小百合さん、元気で過ごされ~」
と、富山弁丸出しで、笑ってくれていると思います。
ていこさんの置き土産とも思える愉快なCちゃんとの出逢いのおかげで、毎日笑って過ごせています。
ていこさん、ありがとう。
でもね。
100歳まで頑張って生きる!って言ってた約束を守ってくれなかった事だけは許しませんからね!!
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