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大正時代の「嘘松」へ〜大泉黒石『人間開業』を読む〜

(若き大泉黒石――『大泉黒石全集』第1巻掲載) 1.はじめに 大泉黒石という作家がいる。1893年生、1957年没。だから「いた」と言うべきなのだけど、どうもわからないことが多くて、過去の人とするにもしっくりこない。ひとつだけ言えることは、彼の小説がどれも妙に面白いということだ。  九州に赴任してきて間もなく。土地にも慣れず、知己もなく、書店をぶらぶらする以外に休日の楽しみというのがなかった頃に、河出文庫の『黄夫人の手 黒石怪奇物語集』と出会った。黒石については、名前だけ