LARP体験ブースの舞台裏・私たちは何を目指していたのか
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10月の記事では、11月16日・17日に幕張メッセにて行われた「ゲームマーケット2024年秋」にLARP体験ブースを展開する旨の記事を書きました。
お陰様で、大盛況のうちに閉幕となり、ユニーク来場者数が211人でした。(当ブースで冒険者証発行をコンテンツ参加者に配布していたため、その実数)平均して2コンテンツ超を楽しんでいかれる方が多く、興味を持っていただけた方は、楽しんで行かれた様子が見られ、スタッフ一同感謝申し上げます。
LARP体験ブースの舞台裏
今回のLARP体験ブースの内容は、以下のポイントを柱に据えました。
デモプレイ:ストーリーLARPの実際の運営手法を観ることが出来る。
ミニクエスト:短時間でストーリーLARPを楽しむことが出来る。
冒険者訓練所:ソードワールド2.0LARPの基本を学ぶことが出来る。
ドレイクを倒せ!:ブースに関わった全員でのレイドバトルで一体感を創出する。
それぞれのコンテンツを連動させることでLARP全体の楽しさを段階的に味わえる構成としました。
デモプレイ:LARPの進行を目の前で観戦
日本ではまだ馴染みの薄いLARPですが、その面白さを体感するには「どのように進行するのか」を目で見て理解することが重要です。ルールブックを読むだけではわかりにくい部分を、実際に見て理解して欲しい! そのため、1日2回のデモLARPを実施しました。
ポイント
物語の進行
通りがかりの人たちが、LARPを親しみ、LARPの面白さを感じてもらうためには30分という時間が限界です。そのため、GMが物語の要点をナレーションで語ることでダイジェストのように物語を展開しました。テーマはゴブリン退治というオーソドックスなものにしながら、LARPならではの「体感と没入感」を大事にしながら場面を展開させました。特にこだわったのは、馬車で冒険の現場に向かうところで、パイプ椅子を並べて馬車として、冒険者たちがそれに乗って旅をするかのようにふるまう事そのものを演出しました。
場面は、シンプルに5つの場面で構成され、依頼人の村人がやってきてゴブリン退治を依頼する。
依頼人と共に馬車に乗って移動する。
ゴブリンの巣穴に踏み込み、宝箱と罠がある部屋を探索する。
ゴブリンたちが寝ている(いた)大部屋で戦闘をする。
退治を完了し、村長から歓待をうける。
というものでした。
観せ方への工夫
また、宝箱や罠などは観客に見えやすいように巨大な宝箱、腰の高さに用意された罠など、視覚的にわかりやすい工夫としました。また、1つのエリアをパーテーションで仕切って展開することで、冒険者たちが冒険を繰り広げる裏側で、NPCや小道具を準備する係の人たちがどのように準備を整え、またふるまい続けているのかの実際を示すことで、多角的な視点でLARPのやっている様子を楽しんでみられるように工夫しました。
特に、冒険者たちが警報の罠を発動させてしまい、ゴブリンたちが迎え撃つために、丸太を扉の向こう側に構えておき、扉が開いたと同時に奇襲で丸太を冒険者にぶつけたときには観客から歓声があがるなど、LARPの実際を楽しんでいただける要素になっていました。
観客からは「実際に見てみると、LARPの流れがよくわかった」「自分も参加してみたい」といった声が寄せられ、そのままミニクエストへ参加されるなどが聞かれ、と感じています。
ミニクエスト:20分で味わうストーリーLARP
今回の新たな挑戦の一つが「ミニクエスト」です。20分で完結する短編シナリオを12本新規に書き下ろし、初心者でも気軽にLARPの楽しさを味わえるよう工夫しました。
特徴
短時間でのLARP体験
各シナリオは緊張感のある戦闘、感動的な物語、コミカルな展開など、複数用意をしました。デモプレイでも活用したGMによるナレーションで状況をプレイヤーに適切に伝えることで、シナリオのメインステージへプレイヤーたちを誘い、冒険者として活躍する場面展開を心がけました。場面は3場面ほどで構成し、一つ一つの場面で十分なロールプレイが楽しめるように心がけました。冒険者訓練所を通して準備は万端に
ミニクエストを受けるためには、後述する冒険者訓練所でなんらかの冒険者としての実際の振舞い方を身に着けておく必要があります。実際に体を動かすLARPにおいては、どのように動けばよいのかを事前に知っておくことは、没入感を得るためにも必要なことだからです。装備は万端に
ミニクエストに参加する前には、冒険者訓練所で身に着けたことを踏まえてキャラクターを作成し、そのキャラクターに合った本格的な衣装を身に着けます。そうすることで、短時間のプレイ時間であっても、高い没入性を得られるように工夫をしていました。
「ミニクエストは、短い時間でありながら物語に引き込まれる」という声が多く寄せられ、多くの参加者に「自分が冒険の主人公である」という感覚を味わっていただけました。
冒険者訓練所:LARPの基礎を身に着ける
LARPを楽しむためには、基本的な動きを身に着けることが欠かせません。そこで設置したのが「冒険者訓練所」です。近接武器戦闘、魔法、探索と罠解除の3つの要素ごとに、実際の行動を通じてLARPを行うための振舞い方を身に着けていただきました。
剣士訓練所:近接武器戦闘
実際に剣を振る動作を通じて、戦闘方法と安全に対する考え方を体験していただきました。
ここで特に重要視していたのは、自分も相手も怪我をしないように安全に戦闘をするための心構えを身に着けてもらうことでした。2日間で150人ほどが体験する人気コンテンツになりました。魔法使い訓練所
呪文を詠唱し、見立てや動きを活用して魔法を表現する方法を学んでいただきました。
3種の魔法がSWには存在するため、その特徴や魔法の唱え方など、どの魔法を選んでも魔法使いとして立振舞えるよう、基本的な知識を身に着けてもらう事を目指しました。スカウト訓練所
宝箱の解除や探索といったアクションを、リアルなプロセスを通して体験していただきました。
実際に、愛で罠の痕跡を確認して、それを飛び越えて解決したり、スカウトツールを用いて罠を解除する動作を通して判定に結び付けたりするなど、体験性を重視するLARPならではの要素を重視して提供しました。
これらの訓練所は、LARP初心者の方が自信を持ってミニクエストに進めるための基盤として機能しました。
ドレイクを倒せ! で生まれた一体感
今回の目玉イベントが、1日の最後に集った参加者全員で巨大なモンスター「ドレイク」に挑む「ドレイクを倒せ!」です。このイベントでは、ソード・ワールド2.0LARPのルールを活用し、複数部位モンスターのリアルな再現に挑戦しました。
ドレイクの部位構成
頭部と胴体:全体の耐久力を象徴する中核部位であり、強力なブレスを吐く。
右腕と右翼:翼のような盾と剣を持ち、前衛の戦士たちと戦う。
左腕と左翼:同上
尻尾:それ自体で範囲攻撃を表現。
役割分担でのチームプレイ
参加者は役割を分担し、5人一組になってチームで協力して挑みました。
剣士:L字型に戦線を構築し、ドレイクの爪や翼から後衛職を守る。
魔法使い:剣士たちが構築した戦線の後ろから、回復や攻撃魔法を放つ。
とはいえ、慣れていなかった参加者が多かったこともあり、やや乱戦気味になってしまったのはご愛敬でしょうか。ドレイクと直接対峙しないまでも、大規模ダメージソースとして2つの勢力がこれに加わっていました。
儀式大魔法
大魔法使いの補助を受けて、参加者全員で大魔法の儀式を行い、巨大な魔法(バランスボール!)をドレイクに放つギミックを同時に展開していました。儀式は、ただ魔法の詠唱を行うだけでなく、床に魔法陣を描き出し、魔法陣の完成とともに大魔法が放たれる演出を行いました。
大規模兵器の運用
もう一つのダメージソースは、巨大な竜に対抗するための巨大な太矢を放つ大砲。アルティメット・アルヌゥス・キャノン(略してU・A・C)。スタッフが考案した機構兵器で、組み立てを行い、ギミックを解除することで完成し、放たれる矢はドレイクに大ダメージを与えることが出来る演出を行いました。会場には「U・A・C!U・A・C!」の掛け声が響き、なんなら、一番盛り上がっていた演出かもしれません。
戦闘中は、参加者同士も声を掛け合い、役割を果たしながら戦い抜きました。討伐成功の瞬間には会場全体に歓声が響き渡り、「LARPの醍醐味」であるチームプレイと一体感を共有できたと感じています。
私たちが目指したもの
私たちが今回のLARP体験ブースで目指したのは、ソードワールド2.0LARPのルールを使ったストーリーLARPそのものを身近に感じてもらうためのすべてをする。ということでした。
そのため、冒険者訓練所のすべてを体験していただくことで、楽しむために必要な動作を網羅的に理解することができるように工夫させていただきました。また、デモプレイでは「LARPの実際的な運営の風景」を観劇する事を通して、身近に感じていただくよう工夫をさせていただきました。
そうした事を通してLARPを身近に、もしくは「面白そうだ!」と感じていただいた方々に向けて展開されるミニクエストの数々を用意しました。なお、そのクエストのすべてを見ていると、実は「ドレイクが街に攻め入るために策謀を繰り広げている」という事がわかるようにしてはいましたが、ここは用意する側のちょっとしたこだわりポイントであり、参加者の方々にとってはあまり認識されない事であったかもしれません。
そして、どのコンテンツにおいても、短時間の体験であっても、すこしでも没入していただけるように「衣装は着替える」ことに拘りました。これは、衣装を着ること、そして脱ぐことを通して、「キャラクターになる」と「自分に戻る」というスイッチを自然とON/OFFし、没入度合を高めるための工夫でもありました。
冒頭にも触れましたが、今回は200人余りの方々にLARPに触れていただくことになった大変有意義な機会でもありました。改めて株式会社アークライト様、ならびに株式会社グループSNE様には感謝申し上げると共に、リアルな武器屋を展開してくださったLARPGEAR様と今回のLARP体験ブースの運営に携わってくれたCLOSSLARPギルドの愉快な仲間たちには、重ねて厚く御礼申し上げます。
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