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LARP分類 2023
日本にLARPが伝わって10年が経ちました。コロナ禍に見舞われながらも、様々な種類やジャンルがLARPの製作者によって提供され、逞しく文化を成長させている日本のLARP。種類が随分増え、単に「LARP」と話しても同じものを指さないことが増えました。
そこで、初心に戻り、2023年8月現在の日本のLARPの種別について、分類することを試みてみました。
※ 本記事は主に体験型LARP普及団体CLOSSが作成(没案も含む)もしくは内容を把握しているLARPを基に分類しています。日本国内の既存のLARPコンテンツが称するジャンル名称を排除したり、区別する意図はありません。ここに含まれていないジャンルや種類、概念が行われているのに含まれていないようなことがあれば、それは私たちの調査不足によるものです。また、より適切な表現、名称である場合、積極的に取り入れて行きたいとも考えております。
※また、本記事が、LARPを最近知った方々にとって、ガイドラインになれるように努めていますが、5年後には通称としては大なり小なりの更新がなされる場合も十分にある状況であることをご理解の上ご参考になさってください。
※本記事は、有料記事ですが、大事な部分は無料で読めます。『終わりに』の筆者の独白となる240文字のみが有料部分です。
LARPには、あらかじめシナリオや背景を設定し、シーンごとに遊ぶ日本特有のストーリーLARP(学術的には「Laymun_style」とも呼ばれる)や、約30人の集まりで群像劇を展開する群像劇LARP、戦闘部分だけを抜き出してサバゲーフィールドで遊ぶコンバットオンリーLARPなど、さまざまな形態のLARPが日本国内に存在しています。
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まず、そもそもとしてLARPはゲームであるか、ゲームではないとするか、で分類することができます。
1. LARPゲーム
ゲームとしての形態を用いて行われるLARP全般がこれにあたります。参加者にとってはレクリエーションとして行われる要素が強く、『遊び』のための時間である意識が高い中で行われます。ルールなどが存在し、キャラクターやプレイヤーに対して、一定の目的や達成感を与えることを軸に構成されます。
2. ゲームであるとしないLARP
ゲームであるとしない事で表現できるLARP全般がこれにあたります。ゲームとしての形態を用いないことで体験できる要素を味わう時間や構成を中心に展開するLARPです。目的や達成条件が示される場合もありますが、多くは状況に対するシミュレーションや、状況を過ごしたことによる体験から得られる気づきなどを主として構成されます。
次に、プレイするフィールドの性質として2種類の分類があります。
1. 対面LARP
参加者が現地で集い、対面して話し、直接的に体験を共有し、実際に行動するLARPです。
2. 非対面型LARP
オンライン上(主にディスコードの文字チャットやビデオチャットなど)で参加者が集い、コミュニケーションを取りながら進行するLARPです。コロナ禍以前から存在しましたが、特にコロナ禍に入ってからは発展・進化した形式として注目されています。
古くは、手紙を実際に送りあって行うLARPが実施されているため、インターネットがあることが前提になるわけではありません。
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目的によっても、2種の分類があります。
1.エンターテイメント
参加者が楽しむことを目的とします。ストーリーやキャラクターの演技が重視される傾向にあります。世界的に見ても、LARPを示すものの9割はエンターテインメント要素があることを前提に語られます。
2.教育・訓練
特定のスキルや知識を学ぶために使用されるLARPです。リーダーシップトレーニングやコミュニケーションスキルの向上などの他にも目的は多岐にわたることができますが、実体験的な手法を用いた学習法としての期待が持たれています。
また、キャラクターやプレイヤーが、相互的にどのようなスタンスをとるかどうか、3つのタイプに分類できます。
1. 協力型
参加者やキャラクターが互いに協力し、行動するLARPです。個々の目的が設定される場合もありますが、基本的には協力しあうことを前提にして進行していきます。
2. 対立型
参加者やキャラクターが互いに対立することを前提にして行動し、それぞれの目的を達成していくLARPです。
3. 混合型
協力型と対立型が混在するLARPです。参加者やキャラクターたちの行動や状況、会話の仕方、情報の取得具合に応じて、互いに協力したり対立したりしながら、進行していきます。
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次に、行われる人数には、どのような分類があるでしょうか。
1. ソロ
個人でルールに基づきながらLARP体験を行います。料理や自己対話、特殊なシチュエーションを通じて、主観的な体験を楽しみます。
2. デュオ
2人で、ルールに基づきながらLARP体験を行います。設定された状況や人物としてコミュニケーションをする中で起こる事柄に焦点を当てた体験を行っていきます。用意するべき状況と、2人の準備さえできれば、比較的気軽に行う事ができるのは大きな利点といえます。
3.グループ(3人以上、15人未満)
複数人で集まり、設定された状況や人物として振舞う中で、様々な状況やコミュニケーション上の出来事、物語性を獲得することができます。表現や体験の幅が増える一方、関係性の調整やルールなどが複雑になっていく傾向も見られます。(ある程度複雑であっても、統制が取れるため、複雑化させやすいとも言えます)
4.中規模(15人以上~30人未満)
いよいよ、ここまでくると一つのスペース・エリアでは収まりきらない人数、状況になることを前提にする必要があります。ルールとしては、ある程度の簡素化が図られるようになり、エリアごとに状況の管理などが行われるようになる運用がなされ始めます。小さなコミュニティ同士という単位で過ごしたり、交渉したりといった要素も発生してきます。主役性はやや薄まり、一群の中の一人としてふるまう中での経験が主なものとなるでしょう。
5.大規模(40人~20,000人)
ルールとしては、十分に簡素化され、運営者も組織化された中で行われる形になります。中規模ぐらいの規模のコンテンツが、複数の場所で同時展開されていく形になります。こうした規模感の中では、運営側から提示されたコンテンツを見つけるのも一苦労になる場合があります。そのため、参加者には、ソロやデュオ、少人数の規模感のLARP的体験を自己生成しながら、過ごしていくたくましさもまた、必要になる場合があるかもしれません。
大分類の最後に、プレイスタイルによる分類が分けられます。
1.ボードゲームスタイル
ルールやゲーム構造に基づいて進行するLARPです。プレイヤーはキャラクターに扮しながらルールに従ってゲームを進めます。実際にボードゲームをするわけではなく、キャラクターシートなどに様々な設定の資料が用意されている。ランダマイザーにサイコロやシャッフルされたカードを用いるなど、テーブルトークRPGとLARPの要素を組み合わせたスタイルと言えます。
2.インタラクティブシアタースタイル
参加者が物語の進行に影響を与えることができるLARPです。キャラクター同士の対話や行動が物語の展開に影響します。
3.サンドボックス
ゲームマスターや主催者が用意した設定内で、プレイヤーが自由に行動するスタイルのLARPです。プレイヤーの選択によって物語が変化します。
多くのLARPは、これまで分類した目的、手法やスタンス、スタイルなどを組み合わせて、主催者やGMが表現したいLARPへと構築されていきます。LARPという言葉が、多様に見える大きなところには、こういった事情があるのです。
さて、ここからは、実際に日本でLARPをする上での実用知識に入っていきます。
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LARPは、体験に対するアプローチの違いに基づいて細分化され分類名として名称がつけられています。これから挙げるのは、現時点における様々な言い方を収集したものであり、将来的には統廃合されたり、別視点の名称として花開いたりすることもあり得るでしょう。
1. ストーリーLARP
シナリオが存在し、PC(プレイヤーキャラクター)やNPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)とのコミュニケーションや対立する状況の解決などを通じて、一定の目標を達成するLARPです。時間に応じてショートストーリーLARPやロングストーリーLARPとも呼ばれます。ボードゲームスタイルやインタラクティブシアタースタイルの傾向を強く帯びています。
2. コンバットオンリーLARP
LARPにおける戦闘の部分のみを抜き出して、キャラクターに扮する衣装に着替え、自身のロールプレイを発揮しながら戦闘を行うLARPです。近接戦闘だけでなく、魔法や投擲武器、射出武器等を用いた遠距離戦(NERFなどのトイガン)などを行うパターンも存在します。1対1の対戦から大規模な合戦まで様々です。
3. コンバットLARP
主たる要素を戦闘が行われるシチュエーションに焦点を当てながらも、随所で簡単なストーリーも展開するLARPです。近接戦闘だけでなく、魔法や投擲武器、射出武器等を用いた遠距離戦(NERFなどのトイガン)も含まれます。サンドボックスのスタイルを強く帯びています。
4. ワールドダイブ型LARP
運営からはバックグラウンドのみが提示された特定の場所で、参加者同士が交流し、特定の世界内での「営み」や「生活」をテーマにロールプレイを展開する自由回遊型LARPです。参加者自身が、コンテンツを生み出し、互いにそれらを楽しみあいます。サンドボックスのスタイルを強く帯びています。
5. ノルディックLARP
学術的、政治的、教育的な側面から展開されるLARPで、時に重いテーマ(犯罪被害体験や戦争体験など)も取り扱います。多様な世界観を扱う一方で、簡素なルールによって管理、進行されることが特徴といえます。サンドボックスのスタイルを強く帯びています。また、教育・訓練的目的を強く帯びています。
6. 教育LARP
海外ではEDU-LARPとも呼ばれ、学習や教育を目的として設計されたLARPです。架空の世界に入り、キャラクターとなって体験を通じて学びます。アクティブラーニングを効果的に取り入れることが特徴です。
7. ジャーナルLARP
ルールに基づき出来事に対する調査や記録をとるLARP体験を行います。多くは手帳などに記録しながら、自分自身が判定者となり、様々な体験と物語を紡いでいきます。一人で行うことも多いでしょう。
8.群像劇LARP
20〜30人以上の大勢が一カ所に集まり、複数の部屋などに分かれながら行動し、様々な場所で同時多発的におこる出来事を通して、群像劇のように移り変わる物語の中の1人として体験を行うLARPです。
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また、これらのカテゴリには様々な世界観がジャンルとして組み合わされています。多くの人々はこれらの世界観に魅力を感じて参加しています。多様な世界観が存在するため、簡潔に説明します。
西洋ファンタジー: 剣と魔法の異世界ファンタジー。多くの場合、冒険者がモンスターを倒し、ダンジョンを攻略し、謎を解くことがテーマです。
和風ファンタジー: 日本の伝統文化を基にしたLARP。忍者や巫女、妖怪が登場し、妖術や忍術を使って戦ったり治療したりします。
マジックアカデミー: 魔法学校を舞台にしたLARP。生徒や教師、魔法生物が関わりながら、魔法の授業や課外活動が展開されます。
ダンジョン: 迷宮や塔を攻略するLARP。トラップや敵を避けつつ、宝物を求めたりクエストをこなしたりします。
ミステリー: 推理小説に展開されるような要素を含んだLARP。
ホラー: 怪異や都市伝説、クトゥルフ神話などのホラー要素を含んだLARP。
現代異能: 現代の日本で異能力を持ったキャラクターが問題や事件を解決するLARP。
特撮ヒーロー: 特撮ヒーローとして活動するキャラクターが問題を解決するLARP。日本の特撮ヒーローの世界観を基にしています。
サイバーパンク: 未来的な技術が進化した世界で、少し荒廃した都市が舞台となるLARP。
スチームパンク: 蒸気エネルギーが発展したレトロフューチャーの世界が舞台のLARP。18〜19世紀の衣装や飛行船等が特徴です。
ポストアポカリプス(終末世界): 核戦争後の世界を描いたLARP。資源不足や荒廃した街がテーマです。
スペースオペラ: 未来の宇宙を舞台としたLARP。宇宙船や異なる惑星が登場し、さまざまな出来事が繰り広げられます。
まだまだ、これ以外にも映画作品の世界など、無限の可能性でLARPが展開されています。一部は海外でのみ行われていますが、将来的には日本でも行われるかもしれません。
終わりに
ここから先は
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