ぼくたちの『死にたい』がどうか致命的なものになりませんように。
村上春樹の『一人称単数』という短編集で何度も思い出してしまう話がある。
「普通に社会の授業を教えてくれる善良で普通な社会科教師がある日、思想の行き詰まりで自殺してしまう」
という短編の中の登場人物が、高校時代の思い出のひとつとして語るとてもみじかい話。
初めて読んだときにその簡潔さに笑ってしまったのをよくおぼえている。思想の行き詰まりで、自殺。それ以上の説明はない。まるでナイフで刺された他殺というかのようなシンプルさだ。ナイフで心臓を刺されたら人は死ぬだろう。思想の行き詰まり