5回目の春
今年の5月で今の会社に入社して5年目になる。
入社の時は再エネのさの字もわかっていない
ペーペーだった私は
運命に導かれるようにこの会社に入社した。
前の職場を訳あって退職してから1ヶ月後のことだった。
配属先は営業。
営業なんてしたこともない。
見知らぬ東京という土地にまいにち出張。
地元にいるのは土日だけ。
そんなわけのわからない生活。
慣れない出張、ホテル生活に慣れるのは
あまり時間はかからなかった。
元々少し東京の端の方に住んだことがあるから
こっちにも友達はいた。
“ただ取引先と仲良くなるだけでいい。”
それだけを言われて、やり続けて、
毎年目標はきっちり達成していた。
3年も営業を続けられたのは
前任の先輩の丁寧な引き継ぎと
仲良くしてくれた取引先、
とある先輩のおかげもあった。
ただ人と話すことが好きだった。
そういう自分もいたからだと思う。
営業を離れるときに取引先に言われた言葉、
私が担当でよかった。偉くなって戻ってきてね。と。
嬉しくて涙が溢れて、嬉しさのあまり
先輩にそれだけを伝えるために
新橋駅に向かう途中に電話をした
あの日のことは今でも忘れない。
営業に少し飽きが来ていた私は、上司との同行の際に
飽きてきたから違うことやってみたい
なんて、そんな話をしていた。
4年目には別の部署への異動が決まった。
別部署への異動といっても、同じ部署内での所属の変更。
なにやらそこでは
新商材の立ち上げ、企画、営業と開発をつなぐ橋渡し的な役割も担う、新しくできた所だった。
チームのメンバーは私よりも10歳以上歳の離れたおじさん3人。
役職はあるとはいえ、出来の悪い人たち。
それでも現実と理想のギャップに何度も悩みながらも
課題も問題も沢山発見していた。
そこでの唯一の学びは
私には問題発見をする能力が長けている
ということ。
あいにく問題解決の能力は備わっていなかったし、
そこに追い討ちをかけるように経験も不足していたから、
この1年ずっと悩み続けていた。
流行りの感染症のおかげで、
会社の体制も早いとこリモートワークに切り替わり、
所属が変わった途端、家での仕事がほとんどになった。
たまの通勤は、通勤時間がめんどくさい、
無駄だななんて心に浮かべながら。
そんなある日、全然仕事が手につかなくなった。
色々な原因が様々絡み合っていたから、
その糸を解くには1人では解決できなかった。
新商材の相次ぐ販売中止、
取引先からの重大なクレームの責任転嫁。
それ以外にも沢山。
取引先と話すことも、連絡を取ることも、
何もできなくなった。
毎日、次の日が来るのが、朝になるのが怖くて
眠りになんてつけなかった。
上司や人事や産業医の勧めもあり、
休職することを決めた2月末。
気づけばそこからもう1ヶ月が経過していた。
時の流れは早い。
1ヶ月休んでいる間にも社用携帯は鳴り続けていたけど、
今日やっと携帯を開いた。
スラックとメールにほんの少し目を通した。
いろんなことが変わっていってる。
私自身も少し元気を取り戻してきてるのだろう。
なんだかたくさん循環している。
みんなそれぞれに変化が沢山あって
それに伴ってきっと会社も変わろうとしている。
そんなふうに思えた。
何を思ったのか、仲の良い先輩に電話をかけた。
商談中だったので後から折り返しをもらった。
たわいのない話から、仕事の話、会社の話まで
気がつけば2時間半ほど話し込んでいた。
私この会社に戻りたいのかな?このまま辞めるのかな?
なんて、そんな不安が全て吹き飛んでいった。
まるで冷たかった風がいつしかほんのり暖かく、
春の訪れを感じさせてくれるような花の香りを運んでくる。
そんな清々しい気分になった。
相変わらず、やりたい業務なんてものは出てこない。
たぶんやらせたらなんでも、それなりに、
そつなくこなしてしまうから。
だけど会社に所属してずっと感じていた違和感の中に答えがあった。
「会社のみんながもっと働きやすくなったらいいのに。
だってみんな、何かを押し殺しているようで、しんどそうなんだもん。
こんなに恵まれた環境で、こんなにも素敵な人たちが沢山いて、
そりゃ、好き嫌い、合う合わないは人間だからあるかもしれないけど、
それよりももっとみんながみんならしく働ける会社でありたい。
会社の理念も行動指針も凄くいいのに
履き違えてる人が増えてしまった。
自分のいる部署は大好きだけど、
昔から何故か会社での立場は弱い。
そういうのやだなーって。
わたしこの会社好きだし、
入ってくる人が辞めるにしても残るにしても、
この会社が大好きなんです!って
自信持って言える人を増やしたいし、育成したい。」
「おまえ、やりたいことあるやん!」
「そーいや、入社時からおんなじこと言ってるわ!」
「そーやな!」
なんて2人で会話をした。
今年の5月で5年目を迎える。
止まっていたわたしの歯車が
またゆっくりと掛け合って回り始めた。
5月がくるまでもう少しゆっくりと
この気持ちを温めて、
また、元気でおはようって
そう言えることを願っている。
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