未完成婚を義理親にカミングアウトしたときの話

ちょっと昔の話をします。

数年前、夫の両親に未完成婚をカミングアウトしたときの話。

きっかけは、正月の義実家訪問。

私とは違って節目を大切にする夫。
敬老の日、父の日、母の日、両親の誕生日、などは、手土産も欠かさない。

そんなこんなで、正月は必ず義実家に行く、という感じになった私。

私の実家へはいつでも行けるので、そこに対しては大きな疑問なく過ごしていた。

だが、
さすがに「孫の顔が見たい」と義母に言われ、言葉を失ったときの私(数年前ver.)にとっては「正月に義実家に行って顔を合わせなければならない」というのが、異常なストレスになっていた。

ここで夫に「今回は行きたくありません」と伝えたが「いや、今行かなかったら今後も仲違いしたままになる気がする」と珍しく意見が対立。

私「あなたはなぜ私があなたのご実家に行きたくないかその理由をわかっていないと思いますがどうでしょうか」

夫「1日行くだけじゃん、それで全て丸く収まるじゃん、なんでそれができないの」

私「たった1日行くだけで逆に何が解決するのでしょうか。発想が即物的すぎると思います。
ではあなたから私が行きたくない理由、つまり私たちは未完成婚であり、子供について触れられることがストレスであるという旨をご自身の親に伝え、私のストレスなく受け入れられる態勢をつくれるなら考えましょう。そうでなければ何があっても絶対に行きません。私だけが我慢をする場所にわざわざ行く意味がありません。」

夫「わかった考える」

ChatGPTの方が優しい回答でしょ絶対、な、脅し文句でいったな私と今は思うけれど、振り返るとこれは言っておいて本当によかった。

ここで我慢してしまっていたら、たぶん今も同じことで悩んでいた気がする。なんなら1月中旬にはもう来年の1月1日が億劫……みたいな日々を過ごしていたかもしれない。

当時の夫には、このような発想の癖があった。
例えば、風邪をひいたとして、その地点をAとしよう。そして、薬を飲んだ、その地点をBとする。
そのあとに「治った」という状態になったとしたら、それは、当時の夫にとってA地点に戻ることだった。
私は、「治った」というのは、C地点に行くことだと思っている。

何かをしたら、つまり、正月に行きさえすれば、A地点に戻れると思っていた夫。
だからこその、節目の欠かさない手土産だったのだと思う。
そうではないと考える私は、正月に行こうと行くまいと、根本的な解決にはならないと思っていた。だから夫がなぜそんなに焦り、なぜそんなに「正月に行く」という「事象そのもの」にこだわるのか、理解ができず、噛み合わなかったのだ。

個人的には、「何度もやり直すことはできる」けれど「取り返しがつかないことの連続を生きている」ような気もしている。謝れば許してもらえる、節目を迎えれば水に流せる、それは違うこともある。だからむしろこれを機にお互いのことを知って、理解を深めてC地点を目指した方が良いと思っていた。

でも、未完成婚であることを、私から言ってしまうわけにはいかない。それは夫にとって心外だ。夫のタイミングで、夫の言葉で伝えてほしいと願った。言いたくないなら言わなくていい。それなら私は行かないという選択肢をつくってもらえれば構わない。

価値観の違いを、結婚以来、最も感じた部分のひとつだった。

なぜ、言いたくないのか、なぜ、そこまでして「正月に行かなければならない」とこだわるのか、そこを解体していった結果、

・結局のところ、親に嫌われたくない
・結局のところ、親に自分がどう思われるのか気にしすぎていて、自信がなく、本音をぶつけることができない

という夫の性格(優しさともとれる)が見えたのだった。

それならそれでいい、けれどその個人的な状態に私を巻き込まないでほしい。
あなたのご両親はたとえ未完成婚だと知ったところで、その程度のことでご自身を見失うような人たちではないと思う、と伝えて、
少し考えてもらって、結果的には、夫は勇気を出して未完成婚のカミングアウトをした。
なんとも残酷な妻だと自分でも思う。


とりあえずお義父さんにカミングアウトした、そしてお義父さんが、わかった自分から伝えておく、と言ってくれ、
お義母さんにも話を伝えてもらった。

ある日夫は清々しい顔をしてこの内容を報告してきた。

意外だったのは、上記の話し合いの末、数日後にカミングアウトが終わったことであった。そんなすぐ切りかえられるんだ、と、正直感心してしまった。

夫「今まであんなに率直に自分のことを親に話したことがなかった」
 「すごくよかった」

夫にとっては、いいきっかけになったようである。

本来ならここでめでたしめでたし、としたいところなのだが、

この後、義父が義母に誤ったことを伝えており、正しく未完成婚だと伝わっていないことが発覚。笑

夫→義父の部分では正直に話したが、
義父→義母の段階で話が歪んでしまったらしい。義父の配慮なのか、話がそもそもわからなかったのか、その真相は定かではない。

故に、義母に「うちは未完成婚じゃないですか~」みたいな話をふったときに、
「……え?!何それどういうこと?!」とパニックを招いてしまい……。

とりあえず、平謝りされた……あはははは。

夫的には「え?!なんで知らないの?!親父から伝えておくって言われてたのに……?」とこちらもプチパニック。

でまあ、後日「女同士でお茶でもしませんか?」と私から切り出し、夫も納得した上で義母へは私から伝えることに。

「申し訳なくて、どうしたらいいか本当にわからないので時間をください」
「クリオネさんの親御さんに謝らなくちゃと思っていて」
ひたすら腰の低い義母。

「いや、誰のせいとかはないので」
「お気持ちはありがたいのですが、お義母さんがどうにかできることなら、既に私たちもどうにかできていると思うんですけど、正直そういうレベルの話ではないです」
「私たちの場合は、子供はいらないので、この状態で今の日本に頼れる医療機関はありません」
「私たちもこの世にこういう夫婦がいるということを知らなかったです」
現実を受け入れて淡々と伝えた私。

話せば話すほど、モヤモヤとさせてしまっていたかもしれないけれど、すごく有意義なカミングアウトになった。
(と、私は思っている。)

私「あの、たぶんなんですけど、一緒に過ごす中で問題なり悩みなりがない夫婦って、いないんじゃないかなって、思うんです。それがたまたまうちの場合は未完成婚だった、ということだと思っていて。」

義母「そうですよね。」

私「お義母さんに聞いてみたかったんですけど、私から見ていると、お義母さんとお義父さんって本当に素敵なご夫婦だなと。お義母さんにとっての、夫婦円満の秘訣って、なんだと思いますか?」


義母「……私が我慢しているのよ……」


(女子会、完。)


これを夫に伝えたら、爆笑。笑
夫婦って、案外こんなもんなのかもねぇって。笑

こうして私は再びストレスフリーで正月に義実家へお邪魔できるようになった。

雨降って地固まる、である。
夫、お義父さん、お義母さん、本当にありがとうございます。これからもなにとぞ。

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