プラスチック条約策定へ 医療者も署名活動
Open Letter from Medical and Public Health Professionals on the Plastics Treaty 5th negotiation meeting (INC-5) の署名活動が行われています
皆様、プラスチック条約はご存知でしょうか?
国連環境計画(UNEP)は、すべての国がプラスチック汚染をなくすための法的拘束力のある国際合意に達するプラスチック条約の交渉を主導しています。2022年から始まり、5回シリーズ今年11月25日から、世界の指導者たちが韓国の釜山に集まり、2年にわたる交渉プロセスの一環として、最後の?政府間交渉委員会(INC)の第5回会合(最終会合)が開かれます。
『この会合は、健康分野も含めたプラスチック汚染をなくすための野心的かつ公正な条約を通じ、人類と世界の健康を脅かすプラスチックの危機に対処するための、重要かつ歴史的な機会である。しかし、一部の交渉担当者は、この分野におけるプラスチックの適用除外を求めている。保健分野で使用される製品の中には特別な配慮が必要なものがあるのは事実ですが、一律に適用除外とすることは、有毒な使い捨てプラスチックの段階的廃止を妨げ、技術革新を阻害することになります。』
国際エネルギー機関(IEA)は伝えます。
石油化学製品は、2030年までに世界の石油需要の伸びの3分の1以上を占め、2050年までにはその半分近くを占めることになる。エネルギーの観点から石油化学製品の主要な原動力であるプラスチックの需要は、他のすべてのバルク材料(鉄鋼や、多くの人々が何十年もかけて努力してきたよりクリーンなエネルギーへの転換など)を凌駕していると報告。しかし、石炭火力発電所からの温室効果ガス排出削減は、プラスチックから排出される新たな温室効果ガスによって、あっという間に打ち消されようとしている。信じられないことに、深刻化する気候危機の原因におけるこの急激な変化は、気づかれることなく進行している。もしプラスチック生産が国だとしたら、日本を抜いて、世界第5位の温室効果ガス排出国になると言われています。
一方で世界保健機関(WHO)は、プラスチックがヘルスケアにおいて重要な役割を担っており、包装、感染予防と管理、診断、外科的介入、補助製品など、ヘルスケアに必要な幅広い製品の構成に使用されていることを認識しています。確実なプライマリ・ヘルスケアとユニバーサル・ヘルス・カバレッジの目標を達成するためには、これらのヘルスケア製品を手頃な価格で入手することが不可欠であるとも言っています。
ゆえにこの署名は、ディスポの注射器をガラスシリンジに戻そう!!、点滴ボトルもすべて瓶ボトルに!!、使い捨て手袋は辞めてすべて手洗いで!!というものでは、全くありません。
私の活動の源である、自分のお尻は自分で拭く(できるだけ)、つまり、温室効果ガス排出削減と同様、『命か二酸化炭素・プラスチックか?』という今よくある二元論に惑わされるのではなく、そして国策保護産業である医療・お医者様にあぐらを組むものではありません。他から言われるまでもなく、他の産業界同様に、未来のために『普通に』取り組むべきです。ましてや、医療者たる自分の行為によって、将来の人の健康を害すことがわかっていることを医療人として見ないふりをすることはできません。
プラスチックの健康被害については、因果関係としてはっきり断定されていないことが多いです。しかし、プラスチックから溶出する化学添加物による暴露により、肥満、糖尿病、認知症、がんとの関連が立証されつつあります。いずれ多くのEvidenceが出てくるでしょう。
以前みどりのドクターズで、ワールドカフェでご一緒して、梶さんと医学教育学会で一緒にモデル授業を作った東京科学大学の中村桂子先生が、なんと日本学術会議の健康・生活科学委員会・環境学委員会合同 環境リスク分科会の長をされていて、2020年に【マイクロプラスチックによる水環境汚染の生態・健康影響研究の必要性とプラスチックのガバナンス】を出されています。
https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t288-1.pdf
また、署名の提案団体 Health Care Without Harmでも、プラスチックと健康被害のエビデンス集を出しています。とても分かりやすいので、日本語翻訳などしてご覧ください。
https://global.noharm.org/media/6310/download?inline=1
ちなみに、Planetary Health 対策の三本柱、気候変動・生物多様性・汚染(大気汚染・物質汚染)のうち、物質汚染の代表格がプラスチックです。またその話題については後日致します。