2019年9月 読書リレー
最近めっきり涼しくなってしまって、早朝出勤勢としてはつらい朝です。肌寒い、真っ暗な中起床するのは本当に……加えて、毎年恒例の体調不良も相まって、世界を呪いながら日々なんとか生きています。
先月は良い感じにスイッチが入り、かなりたくさん読めました。うれしい。
今までのモーメントはこれ↓
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●天沢夏月『そして、君のいない九月がくる』2015年、メディアワークス文庫 https://www.amazon.co.jp/dp/4048655302/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_u5MDDbV4V7BG3
天沢さんの月シリーズ、現状最後の一冊です。出版年で言えばこの話が一番初めですね。
亡くなった友達にそっくりの少年に導かれ、特に仲の良かった4人が彼の亡くなった場所に向かう話。道中で4人は、彼に対して抱いていた感情(綺麗なものばかりではない)と向き合い、吐き出し、徐々に彼の死を受け入れていくようになります。
天沢さん自身、青春小説を自分の作品の軸のひとつと考えてらっしゃるようですし、思春期特有の揺れ、感情の爆発とか、上手いなあ……と読んでてしみじみ思います。それは『サマー・ランサー』みたいなキラキラした作品よりも、こういう、死者を題材にした作品だとより引き立っているような気が。
個人的には、ラスト付近でミホの両親とかにはどうやって納得させたんだろうと気にならなくもない。
もしまた、「〇月」のつく話が刊行されたら、ぜひその月に読みたいなあと思います。
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●中野由貴著、出口雄大絵『宮澤賢治のレストラン』1996年、平凡社 https://www.amazon.co.jp/dp/4582367070/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_sL0DDbC0X8BGP
三鷹の図書館で見かけて、おもしろそうだなと思ってAmazonで買うかどうかずっと迷ってたんですが、横断検索したところ、香川では観音寺市立中央図書館にだけあったので、読みにいってきました。
賢治さんの作品に出てくる「食べ物」に焦点を絞って、その食材や料理別に章分けして、当時の記録や賢治さん自身のエピソードを絡めながら紹介している本でした。
論文というほど堅く論立てしてるわけではないので、ゆるーく読めました。大学時代の講読(先生が指定した作品群の中から選んで、自分の設定したテーマの描写に着目して分析していく講義)を思い出して楽しかったです。
僕、「ミルク」って名前が入ってるだけで、料理とかお菓子とか美味しそうに見えて引かれるんですよね……単純な……。
……結果、この本、未だに買うかどうか迷ってます。全部読んでしまったけど……手元に置いておきたいような気持ちもあるような……。
困ってます。
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●暁方ミセイ『ウイルスちゃん』2011年、思潮社 https://www.amazon.co.jp/dp/4783732612/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_n-0DDbVTVGE5Q
『宮澤賢治のレストラン』を読んだ後、そういや読んだことなかったなあと続けて読んだ詩集。第17回中原中也賞受賞作品で、中原中也記念館でも見かけてました。
タイトルで想像してた内容と違ったせいか、正直あんまよく刺さんなかったんですけど、どちらかというと朗読で聴いてみたい感じの言葉の流れでした。あまり「○○みたい」って言うのは、失礼だし、好きじゃないけど、読んでて形式が賢治さんとか萩原恭次郎とかが頭に浮かんできたなあ。
あと、内容ではないですけど、カバーが落ち着いた低彩度のデザインなのに、見返しが目も醒めるような群青色なのが綺麗でよかった。新装版よりこっちの方が良かったと思うなあ。
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●最果タヒ『恋人たちはせーので光る』2019年、リトルモア https://www.amazon.co.jp/dp/489815509X/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_Rl.SDb2RM8NKA
最果さん最新作です。田舎故に発売から数日待ってから本屋に赴いて買いました。僕のよく行く紀伊国屋はかなり詩歌集系が充実しててうれしい限りです。
今までの詩集と比べると、表現とか内容とかちょっと丸くなってるのかな? って印象です。僕、結構最果さんの非難めいた言葉で「なんでそんなこと言うの」って勝手に傷つくの好きなので……この傾向は、今回の詩集特有のものだったらいいなあなんて思ってしまいます。別に今回のが嫌いってわけじゃないんですけど。
最果さんの今までの詩集の中だったら、僕は『夜空はいつでも最高密度の青色だ』を推しますね。映画にもなりましたし、たぶん多数派意見だと思いますけど。
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斜線堂有紀『私が大好きな小説家を殺すまで』2018年、メディアワークス文庫 https://www.amazon.co.jp/dp/4049121115/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_XgkFDbN2G6230
(※あまり具体的にではないですが、ラストの展開までネタバレを含みます)
元々本屋で見かけて、タイトルと表紙で気になってはいたんですが、この作者さんの他作品、『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』に三秋さんが書評を書いていたので、よし読んでみよう! と買いました。
異常な家庭で育った主人公の女の子が、母親の家出をきっかけに自殺しようとしていたところを、かねてからファンだった小説家「遥川悠真」に出会い、彼の家に通うようになる話。
主人公は、小説家の没原稿を読むうちに彼の書きそうな文体やストーリー構成を吸収していき、ついには彼のゴーストライターになるのですが……。あああ、つらい。本当に読んでてつらい。
盲目的なファンって、ものすごく残酷なんです。主人公がゴーストライターになって、「遥川悠真」に成り代わって、……主人公にあるのは信仰に近い憧れと献身で、自分の行為が尽く小説家からの略奪に過ぎないことを、本当には自覚していない。
最後、小説家が自殺して、主人公が後を追う(?)ところで終わるのですが、……もし、あの後主人公の後追いが成功したとしたら、主人公は、「遥川悠真」から、死さえも、幕引きという逃げ道かつ小説家の最後の自己表現そのものさえも奪うことになるんです。悪気なく、「大好きなあなたのために」を振りかざして。
……えっぐ。いや、でも、好きだな僕、この作品。
読んだ後、『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』も手に入れたので、またいつか読もうと思います。
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岡崎武志『蔵書の苦しみ』2017年(2013年初出)、光文社知恵の森文庫 https://www.amazon.co.jp/dp/4334787304/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_Xm.SDb7YR91GC
精神へのダメージがまだ残ってたので、小説じゃないルポルタージュ的なやつを。
2万冊を超える蔵書に居住スペースを圧迫され、苦しんでいた著者が、他の蔵書家から聞いた話を絡めながら、以下に蔵書を減らしていくかを考えていく完全実話。西牟田靖『本で床は抜けるのか』を前読んで、蔵書系の本おもしろいなあと思って……言ってしまうと「ダメ人間さ」が発言から滲み出てて、めっちゃおもしろいんですよ……。
これを読んでたら、自分の蔵書数が気になって、軽く全部数えてみたのですが、私家版・漫画・雑誌等々も合わせたら1000冊を超えてました(一番多かったのは文庫で、350冊くらい)。……正直、500くらいだと思ってたのでかなり戦きました。段々、「僕ごときで千超えるなら、そりゃあ読書家蔵書家の人たちは2万とか超えるよな」「ということはまだ僕は増やしまくっても大丈夫なのでは……?」というダメ野郎な思考回路にいきかけました。自重します。
僕は本棚が活きてないと(ある程度背表紙が見える、どこに何があるかわかる部屋じゃないと)嫌な質なので、足の踏み場もないくらい床に本のタワーがあって、床の抜ける恐怖に付きまとわれてるような先人たちの域には、今後も踏み入れることはないんだろうなあと思います。……残念なような、ほっとしたような。
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10月への繰り越し本は、
コーディー・キャシディー、ポール・ドハティー共著、梶山あゆみ訳『とんでもない死に方の科学』2018年、河出書房新社
9月中に読みたかったんですが、急いで読むのもなんなので、無理せず繰り越しで。
めちゃくちゃおもしろくてやばいです。みんな読んでほしい。詳しくはまた、10月分の記録で。