2020年5月 読書リレー
5月が過ぎ、学校が始まり、店も営業再開し、テレワークも解除されているようで(僕の仕事にはなんの関係もないのでよく知らんですが)、少しずつ街にも日常が戻っていってるような気がします。まだまだ油断は禁物ですが。
僕はといえば、最近歩くと持病の調子がいいことに気づいたので、仕事終わりや休みの日に毎日近所を散歩しています。老人かよ。
あと、今気づいたんですが、このリレーも始めてちょうど一年が経つのですね。遅れたりもしたとはいえ、ちゃんと続いてんなあ……と自分でちょっと感慨深いです。
今までのモーメントはこれ↓
https://twitter.com/i/moments/995558573286477824
●柳本々々/文、安福望/絵『バームクーヘンでわたしは眠った』2019年、春陽堂書店
https://www.amazon.co.jp/dp/4394903572/ref=cm_sw_r_other_apa_i_vY51Eb9HNQ9F8
Twitterでフォローしている安福さんのツイートから、こんな本が出るよ! ってのを知って、おもしろそうだなあと思って買いました。詩人兼川柳作家である柳本さんが、自身の句とともに書いた、日記のようなコラムのような、どうにも不思議な文章集。元はWEB連載されていた「今日のもともと予報 ことばの風吹く」という記事の中から、103句を厳選してまとめたものらしいです。
読書記録つけながら言うことじゃないんですが、なんとも、形容しにくい内容なんですよね……。何か含蓄があるわけでもなくて、とにかく不思議というか、ゆるくて、やさしくて、休みの日の午前中にとろとろ微睡んでる感じというか……独特の空気感なんです。そしてその空気感に、安福さんの絵がとても合うのですね……言い知れぬ不安にガチガチになって眠れない真夜中に読みたい感じです。
本編には関係ないのですが、この文章を書いている柳本さんの名前、「やぎもともともと」と読むのですね。「ふざけた名前だなあ」と思いながら(失礼)、この名前の響きのゆるさも作風に似合ってていいなあと思うのです。
あと、不勉強だったのですが、川柳にも自由律みたいなのあるんですね……冒頭の一行、単なるタイトルかと思ってた。ごめんなさい。
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●柳家紫文『人生に役立つ都々逸読本』2015年、海竜社
https://www.amazon.co.jp/dp/4759314377/ref=cm_sw_r_other_apa_i_KZ51Eb1TNG5A7
本屋で偶然見つけて「おっ都々逸の本あんじゃん! 買ーおお!」と思慮深さ0で手に入れた本です。
音曲師で三味線演奏家の著者が、古典から自身の新作まで惜しげもなく紹介した本。作品の合間には、著者によるコメントが挟まります。
先々月のノートで別の都々逸の本(『26文字のラブレター』)を紹介しましたが、この二冊はものすごい好対照ですね……。26文字のラブレターの方は、恋愛のロマンに全振りした感じでしたが、こっちは人生観とか言葉のおかしみとかに焦点を当てたような内容です。コメントも、良く言えば言葉遊びや掛詞、悪く言えば親父ギャグ一歩手前みたいな……とにかく、ユーモアのスプラッシュマウンテンって感じです。行ったこともないくせに何を言ってるんだ。
26文字のラブレターが小洒落たバーなら、この読本は「飲み屋街の大衆居酒屋」ですね。酔っ払ったおっちゃんが楽しげにどやどやしてるような。たぶん、元々の都々逸の性質的にはこっちが近いんでしょうね。上手いこと唄って、それで皆がどっと笑うみたいな。
これ人生に役立つのか……? とは思ったけど、普通におもしろいし興味深いです。みんな都々逸ハマろうか。
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●朝井リョウ『風と共にゆとりぬ』2020年(2017年初出)、文春文庫
https://www.amazon.co.jp/dp/4167914956/ref=cm_sw_r_other_apa_i_s051EbZ36N0BD
これも『AX』と同様、単行本が出た直後から文庫化を待ち望んでいた本です! 長! かった! 著者や出版業界のことを思えば、単行本のうちから買った方がいいのは分かっているのですが、本棚のスペース的にも、何より前作を文庫で持ってるので合わせたい、と思ってしまうのです。許してください。
戦後最年少直木賞作家である著者のエッセイ集。日経新聞「プロムナード」に連載されていたエッセイや、痔瘻手術の体験を綴った書き下ろし(単行本時)「肛門記」、さらにその後日談として「肛門記~Eternal~」を加えた大ボリュームな内容です。一文のうちにこんな肛門に関するワード書くこと普通ない。
戦後最年少直木賞作家……とはいえ、僕は恥ずかしながらエッセイと『何者』しか読んだことがなく、経歴もよく覚えてなくて、「エッセイがめちゃくちゃおもしろい人」という認識しかしてませんでした。本に詳しくない人でも、『霧島、部活やめるってよ』の作者って言えば分かる人も多いんじゃないかな。
このエッセイの煽り文句は、「読んで得るもの特にナシ!」なのですが、本当にないです。ただただめちゃくちゃおもしろい。挿絵もない本を読んで、声上げて笑うことってあんまりないと思うのです。
前作『時をかけるゆとり』は大学時代に友達に教えてもらったのですが、その人がこの本についても、新しいの出るよ~と教えてくれて。「目次だけ見たんやけどさ、一つ目から「眼科医(※『時をかけるゆとり』に、「眼科医と衝突する」という章があるのです)とのその後」なんよ。おもしろいに決まっとるやん」と悶絶していたのをしみじみ思い出しました。今もうだいぶ疎遠なんですが、その人もあの後、読んだのかな。めっちゃおもしろいよ。
あと、この本、読み残してた「肛門記」以後をスタバで読んでたのですが、(本屋でパラ見してても気づくことなので、ネタバレにはならないと思って書くのですが)スタバという往来でフォントサイズ30くらいのデッケェ「尿道カテーテル」の文字を二回も披露する事態になりました。その節は本当にすみませんでした。誰にも見られてないといいなと思います。
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●独多楽円路『不埒』2020年、私家版
https://241638.thebase.in/items/29094722
(現在売切)
ぱやちのさんの第三詩集。通販始まって秒でポチりました。つけてくれた直筆の手紙を、ニヤニヤしながら何度も読み返しているのは内緒です。
今までの詩集の名義は「九九八十一(つくもやとい)」だったのですが、今回は「どしたらえんじゃ」をもじった名前になってます。好き。
ちのさんの詩の中の過去形が、好きなのです。苦しくて堪らない。「作者と作品を同一視しすぎたり、混同したりするのはいけない」と、大学時代の恩師には口酸っぱく言われたのですが、やっぱり僕はちのさんの日頃を見ているので、あのことかな、このことかな、とどうしても、思いを馳せてしまいます。
文章から漂ってくる透明な肉感も、綺麗で、好きなのですね。自分には書けないなあと思いながらも、ちのさんの詩集を読んでると、対抗心、とまで言えるようなものではないですが、自分も詩を書かなきゃなあ、詩集作んなきゃなあ! という気持ちが燃え上がってきます。いつもお世話になっております、ありがとう。
6月への繰り越し本はありません。滑り込みで読み切ることに成功しました。