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2020年2月 読書リレー(前半)

 先月は、一番の繁忙期があったわりにはかなりの冊数読むことができましたね。現実逃避もあるかもしれません。
 今年は暖冬だなんてちょくちょく耳にしましたが、嘘ですよね寒いですよ。どうも体温が上手く上がらず、ストーブで全身をあぶる毎日です。基本出不精ですが、灯油だけは切らすことなく予め買いに行く習慣がつきました。死ぬから。
 今回は冊数が多いので、前半・後半に分けてます。
 今までのモーメントはこれ↓
https://twitter.com/i/moments/995558573286477824


●吉田篤弘『ブランケット・ブルームの星型乗車券』2017年、幻冬舎
https://www.amazon.co.jp/dp/434403080X/ref=cm_sw_r_cp_awdb_c_uw-tEbN32F2FK

 確か、高松のルヌガンガで買った本。TVで紹介されてるのを見て、初めて行った時に、表紙、帯の説明、挿絵に一目惚れして買いました。
 ブランケット・シティという不思議な街の新聞「デイリー・ブランケット」の専属ライターであるブランケット・ブルームが、紙面で連載しているコラムをまとめたもの、という形式の短編集。そのコラムの名前が、タイトルにもなっている「ブランケット・ブルームの星形乗車券」です。
 星形、というのは、ブランケット・シティにある環状鉄道の駅10つを、一つ飛びに下りて、その周辺の店や住人について書く、そうすると下車駅をつなぎ合わせた図形が星形になる、というところから来ています。
 吉田さんの著書は、『雲と鉛筆』(2018年、ちくまプリマー新書)も以前に読んだことがあるのですが、この本も『雲と鉛筆』も、やさしい、ゆったりした時間の流れる世界観で、読んでてすごい落ち着くんです。やさしい、といっても、心温まるというわけではなくて、温度としては38度くらいの、「優しい」よりは「易しい」に近い感じかもしれません。んー、あんまりどっちも、漢字にしたらしっくりこないですけど。僕は『雲と鉛筆』よりこっちの方がとても好きですね。
 新聞の連載コラムの形をとっているので、一話2ページくらいでとても読みやすいです。一つの町についてのショートショート集、という意味では、太田忠司『星町の物語』にも通じるところがありますね。さらに、全ページ上半分が挿絵になっているので、本当眺めてるだけでも楽しい本です。巻末には、実際の「デイリー・ブランケット」の紙面も載っています。本編を見た後だと、より楽しい仕様になっております。おすすめ。

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●デビ・グリオリ著、若林千鶴訳『よるなんて……』2019年、リーブル
https://www.amazon.co.jp/dp/4947581956/ref=cm_sw_r_cp_awdb_c_8y-tEbJWY9WMH

 いつも行く図書館が工事で休館中だったのですが、代わりの移動図書館「はくちょう号」で借りた絵本。移動図書館だと、いつもはあまり触れることのないジャンルの本も目にすることができるので、これはこれで楽しいですね。
 原題は「NIGHT SHIFT」。主人公の女の子が、夜になるといつもやってくる、何か分からない恐ろしいものに耐えて耐えて、そして折り合いをつけていく話。
 作者は、以前にうつ病を経験したことのある人で、その時の気持ちがどんなものだったのか、を表した絵本らしいです。うつ病やそれに伴う不安感、苦しみなどを、作者は作中で「暗闇」と「ドラゴン」に喩えています。僕としては、そういった負の感情をドラゴンに喩える、という感覚が無くて、驚きました。でも、事実、感情もそのイメージも、人の数だけ様々なんだろうなあと再認識。それを各々が、自分なりの表現で表出できたら、吐き出せたら、その方法を見つけられたら、みんな生きやすくなるのかなあと思いました。

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●谷川俊太郎、岡野大嗣、木下龍也共著『今日は誰にも愛されたかった』2019年、ナナロク社 https://www.amazon.co.jp/dp/490429291X/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_OB-tEbSJSVXHF

 完全にタイトルと著者群で購入を決めた本。読むしかないやろこんなん。
 国民的詩人谷川俊太郎と、『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』(2018年、ナナロク社)の岡野大嗣、木下龍也ら三人による共著。それぞれの詩と短歌による「連詩(交互に作品を書いて繋げていく形式)」と、それに関する三人の対談「感想戦」が収録されています。タイトルも、連詩中に出てくる作品の一部。一言なのに、とてもエモくていい……。
 詩や短歌は今までもたくさん読んできましたが、こんな風に作者が自分の作品に対して「こうこうこういう風に考えて作った」「ここのこういう表現は○○を表している」とか、細かい思想や制作秘話を知る機会は、本当に! ほとんど! 無いので、とてもとても面白かったです。僕自身も詩と、たまに短歌を作ったりするんですが、特に短歌の言葉の組み立て、構成の話はすごく参考になります。
 あと、谷川さんと歌人の二人ではかなり年が離れているはずなんですが、すごく仲よさそうにわいわい話してていいなあと思いました。

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●天久聖一『挫折を経て、猫は丸くなった。』2016年、新潮社 https://www.amazon.co.jp/dp/4103369329/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_LE-tEb4WZCEK2

 なんかで見て気になって、しばらくいろんな本屋で探していて、確か岡山の丸善かな? で、やっと見つけた本。
 冒頭だけで完結している「書き出し小説」を集めた名作集。タイトルもその中の一作品。一作品、一行ないし数行で読めます。
 書き出し小説は、「ありそう!」というものから、「どういうこと!?」と困惑するものまで様々あって、めっちゃ続きが読みたい、でも続きは存在しない! という、およそ普通の小説とは全く違った形式の作品です。今もあるのかもしれませんが、数年前にTwitterハッシュタグでもちょくちょく見てました。また、デイリーポータルで、「書き出し文学大賞」と題して、定期的に規定のテーマ作品と自由作品を募集してるみたいです。ネットでも膨大な数見ることができるので、気になる人はぜひいくつか読んでみてください。楽しいから。
 巻末には、投稿常連の参加者数人の対談が載っています。

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 後半に続きます。

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