2021年1月 読書リレー
ちょっと間に合わなかった……。
幸先悪いですが、冊数としてはかなり読めました。これだけ記録を溜めてしまうと、新しく読むのがおっくうになるパターンもあると思いますが、僕の場合は「まあ一か月あるから頑張れるやろ! 来月の僕に期待!」と読んでしまうのでいいのやら悪いのやら。ぐうクズ。
手塚マキと歌舞伎町ホスト80人 from Smappa! Group著、俵万智、野口あや子、小佐野彈編『ホスト万葉集 巻の二』
2020年、講談社
https://honto.jp/netstore/pd-book_30714758.html
まさかの第二弾。これも本屋で二度見して秒で買いました。買ってからしばらくして、1巻の記事を確認して気づいたんですけど、作者の人数が75人から80人になってて「増えとる!!!!」と改めてうれしくなりました。
実際に歌舞伎町でホストをやっている人たちが、月一回開いている「出勤前歌会」、コロナ禍でのZoom歌会で詠んだ歌たちの中から、短歌界の権威・俵万智さんたちが厳選した歌集。巻末には手塚マキさん・俵万智さん含む四人の座談会と、詠み人たち(ホスト)全員の顔写真が載っています。
巻の二では、前作よりもコロナ禍という時勢を前面に押し出した作品が多い印象で、座談会でもそのことについて話されています。「夜の街」と括られ槍玉に挙がった世界でもありますからね……。そんな中で、「出かけたい出かけられないコンチキショー そういえば誕生日だね 百合子おめ」という歌があり(言うまでもなく、都知事のことですね)、最初読んだ時には「祝い方雑で草」としか思わなかったのですが、座談会でこの歌について触れられていて、「チャカしてるだけではなく、すべての女性を「姫」として接するというホスト魂を感じた」と評されており、そういう解釈か~~~~! と納得しました。
最近本屋の詩歌コーナーの新刊でもコロナをテーマにした作品が多いのですが、正直僕あんまり好きじゃなくて。時勢とか、戦争とか、教訓めいたこととか流行り物を露骨に詩歌に入れ込むのが。だりぃなあしゃらくせぇなあと思ってしまうのですね。それでも、これだけの人がこれだけ書いてるというのは事実ですし、書かずにはいられない事態なんだよなあとも思います。それに、時事ネタとかの生活感に溢れたテーマって、詩よりも短歌の方が相性いいと個人的には思っております。きっと、和歌という手紙のような伝達ツールとして使われてきたという事実が僕の中で大きいんでしょう。元々そういう意図で詠まれてきたものだからと認識してるんですね。
ちなみに今回も、ラーメン二郎の章があります。大好きか。
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ウジトモコ『デザイン力の基本』
2019年、日本実業出版社
https://honto.jp/netstore/pd-book_29739815.html
本屋で見つけて、衝動買いした本。趣味で絵を描くので、プロ並みとまではいわないまでも、構図や配色の勉強を本格的にしたいなあと思っていたのです。この間色彩検定の2級を取ったこともあり、興味が高まってたことも一因かと。
余談なのですが、日本実業出版社は今年で70周年だそうで、そういう特設コーナーで買いました。おめでとうございます。
街中でも度々見かける、「ぱっとしない」「ゴチャゴチャして見にくい」チラシや資料。そうなってしまう原因は何なのか? どうすれば魅力を感じるようなデザインにできるのか? といったことを、ダメな例、改善例を示しながら解説してくれる本です。
実際さまざまな企業の販促デザインや、各地でデザインセミナーを開催している人だけあって、すごく読みやすくて、説得力があります。するっと大意が入ってくる。
カラフルで読んでて楽しいんですが、色数は抑えられていてすっきりしてる。そういうのも、読み進めていくうちに分かるようになってきたことです。本当に、この本自体が「良いデザインを作る」ことを実践しているような印象です。
絵を描く人や、企業の商品デザインや広告に携わる人たちだけでなく、本当にすべての人たちに持っておいて損はない基本知識だったなあと思います。自社のチラシ・ポスターなどの些細なことでも「このデザインにしよう!」と決定する際など、すごく役に立つんじゃないでしょうか。「人の目を惹く」というのは、商売においてものすごく大切な要素ですから。
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谷山浩子『真夜中の図書館』
2015年、ヤマハミュージックメディア
https://honto.jp/netstore/pd-book_27292627.html
数年前、BOOK AND BED KYOTO(「泊まれる本屋」をコンセプトにしたホテル)に泊まった時にベッドまで持ち込んだものの、観光の疲れで手つかずのまま寝落ちした本の一つです。最近になって、市内の図書館にあることに気づいて借りてきて、今度は、深夜まで営業してる喫茶店で一気に読みました。
「カントリーガール」やみんなのうたで流れていた「まっくら森の歌」などで有名な、シンガーソングライターである谷山さんが、世界中の児童書や絵本をメインに40作品、自身の読書体験や感じたことを一冊一冊丁寧に綴っているエッセイです。
紹介されているのはほとんど読んだことのない作品ばかりで、白状すると谷山さんの曲にもあまり親しんでこなかった人間なのですが、どれもストンと腑に落ちてくる考察で、読んでみたいなあと思えるものばかりでした。コーヒー牛乳を飲みながら、日付が変わるまでじっくり読めて、とても良く雰囲気に酔うことができました。タイトル通り、夜更けの空気感、漂うリズムにとても合う本でした。
「夜」って一般的には大人の時間のイメージですが、この本は、「子どもが夜中に目を覚まして、そのまま大人たちに内緒で夜更かししてるワクワク感」といった雰囲気の読み口だと思います。個人的には、「深夜」っていうと大人の時間、「真夜中」っていうと子どもの時間のイメージが強くなります。単に音読み訓読みのせいかもしれないですけど。
こうなると、一回目にホテルのベッドで読めなかったことが悔やまれますね。そしたらまさに、「真夜中の図書館」の中で、読むことができたのに……!
※参考までに、ホテルの内観。現在は営業休止中です。→ https://bookandbedtokyo.com/kyoto/
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加藤俊徳『脳とココロのしくみ入門』
2020年、朝日新聞出版
https://honto.jp/netstore/pd-book_30418613.html
家の最寄りの本屋で見かけて気になっていた本。
人間の感情や個人の能力差が生じる原因を、その時々によって反応する脳の部位を思考系、感情系、伝達系……のような「脳番地」と称した8つの分野に分け、脳科学的に解説している本です。
「○○ができない」「感情のコントロールがきかない」のはなぜなのか。加藤先生の論では、それぞれの「脳番地」が充分に発達していないことが一因としてあげられるというのです。たとえば「片付けられない人」の中で、「そもそも片付ける気にならない」人は思考系と運動系、「片付けがはかどらない」人は視覚系と理解系、「片付けてもすぐ元に戻ってしまう」人は記憶力か伝達系、など、それぞれ弱い脳番地があることによって引き起こされている、とのこと。つまりその人その人によって、成長過程でそれぞれの脳番地の発達にバラつきが出て、それが個性や能力の差になっているというわけです。
章ごとに細かく分けられているうえ、イラストで図解されているのでとても分かりやすいです。個人的には、イラストが所々シュールでじわじわ来ますが。専門書とか教科書とか、会社のマニュアルとかって、ネットでもたびたび擦られますが、こういうなんともシュールなイラスト多いような気がします。なぜなんでしょう……。
あと、第2部の「困ったあの人の行動の謎」という章で、「悪気なく嘘をつく人」や「マウンティングしてくる人」などの行動の理由が考察されているのですが、加藤先生の言葉の端々がなかなか辛辣に感じて面白いです。淡々と解説されてる故なのかもしれないですが……。
自分の脳番地の鍛え方や、相手の得意な脳番地を踏まえた対応の仕方なども例として載っているので、気になる人はぜひ読んでみてほしいです。おすすめ。
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大前粟生『岩とからあげをまちがえる』
2020年、ちいさいミシマ社
https://mishimasha-books.shop/items/5fae62cd72eb461b6bae58f5
岡山の古本屋「ながいひる」の通信販売で買った新刊。最初見た時タイトルが気になって、それからじわじわ購入欲を募らせられて買ってしまいました。このご時世、なかなか橋も渡れないもので……広島の「弐拾DB」も紆余曲折あり通信販売を始められたので、僕個人としてはとても助かってます。へへ。
長くても5行程度の100編からなる、超ショートショート集。作者の大前さんが、文と絵の両方かかれています。ほとんどの作品に、「みちこちゃん」という女の子(だと思われる)が登場します。
最初読み進めながら「????」と思い、最後まで「????」という気持ちで読み終えました。分からん。分からん、けど、趣深い。
表紙絵と帯の本文引用からも感じるように、ぱっと見、子どもの書いた文、子どもの描いた絵といったコンセプトのように感じるのですが、その一方で到底子どもから出てくる表現じゃないなこれは、という、喩えるなら、大人の地面から離れて、子どもの世界との境目に浮いてる感じ。
リズムが楽しいし難解な言葉が使われているわけでもないので、子どもに読み聞かせることもできるとは思いますが、これは大人のための本だなあと感じます。大人が子どもの世界を追体験する入り口、でもそこにはガラスが一枚隔てられて実際には行くことはできないみたいな。そのもどかしさが興味深いです。
もう僕たちは完全に子どもには戻れないんだな、という寂しい悟りと、それでも追体験はできる面白さ、希望。その両方が味わえる作品集でした。
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高橋久美子著、濱愛子絵『今夜 凶暴だから わたし』
2019年、ちいさいミシマ社
https://mishimasha-books.shop/items/5ddcc5774fb6c75e41bf188b
これもタイトルに惹かれて、一つ前と一緒に注文した本。同じレーベルでしたが、完全に偶然でした。
チャットモンチーのドラマー兼作詞家、高橋さんの詩画集。全30編。実物が届いてより強く感じたのですが、装丁がかなりいい感じです。小さめのカバーに、本体のベビーピンクが良く映えてます。
濱さんの紙版画は、(あんまり○○っぽいというのは良くないのかもしれませんが)棟方志功や猪熊源一郎のようなジャンルに近いと思います。躍動感と力強さがあって、見ようによればちょっと不気味だったり、かわいかったり。それが高橋さんの詩によく合ってます。どちらも不思議と、女性的な香りがプンプンするんですよね。
僕は正直、女性詩人の詩はそういう香りが本当に強いのが多く感じて苦手なんですが、食わず嫌いというか、これはこれでたまに読むと趣深いなと思います。
大槻ケンヂやくるり、ドリカムなどなど、アーティストが出した詩集は数あり、僕もいくつか読んだことはありますが、詩人の書く詩と作詞家の書く詩って、なんか雰囲気違うなあと感じます。どこがどうとは上手く言えないのですが……。やっぱり、「そもそも文字だけで表現することを前提とした詩(やったとしても朗読)」と「普段メロディと文章を合わせている人が書いた詩(音楽と文章の融合の仕方を知っている)」では全然違ってくるんですかね。どっちが優れているとかではなく、それぞれの性質として。
ただ個人的には、現代で一番「詩人」なのは作詞家ですが、基本的には「歌詞そのものを詩としてみる」のも、「元々ある詩を音楽に当てはめる」のも無理があると思ってます。やっぱり最初の媒体通りに楽しむのが一番だと思う。相性がいいのは確かですけどね。
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2月への繰り越し本は、
桜井弘『宮沢賢治の元素図鑑』2018年、化学同人
もうタイトルで面白いのが分かりますよね。僕の父さんも、この本を話題に出そうとしたらタイトルだけで「何それ……面白そうやん……(ソワァ)」と言ってました。分かりやすすぎて草。