2019年10月 読書リレー
また翌々月に回ってしまう始末……。どうも仕事の負担増に、なかなか折り合いが付けられませんね。楽になれたらいいなあとは思うのですが……。
今までのモーメントはこれ↓
https://twitter.com/i/moments/995558573286477824
●コーディー・キャシディー、ポール・ドハティー共著、梶山あゆみ訳『とんでもない死に方の科学』2018年、河出書房新社
家の最寄りの本屋で見かけて、冒頭を読んで衝動買いしてしまった本。
この本を一言で言うとしたら、本文の表現を借りれば「スティーヴン・キングとスティーヴン・ホーキングを足して二で割ったような本」。個人的には「めっちゃ不謹慎な空想科学読本」もしくは「全く参考にならない完全自殺マニュアル」。
「旅客機に乗っていて窓が割れたら」「ハチの大群に襲われたら」といった、絶対に起こらないとは断言できないシチュエーションから、「太陽の表面に立ったら」「読書中にいきなりこの本がブラックホールになったら」といったもはや思考実験でしか検証できないシチュエーションまで、実に45編ものシナリオを大真面目にふざけて解説している本。著者の2人は、それぞれスポーツライターと物理学者。
結論から言うと、ハチャメチャに面白い。何が面白いって、言い回し。きっとこれは原著ももちろんだけど、翻訳がものすごく秀逸なんだろうなあと思う。「こんなことしたらこうなるんだ、へえ〜」っていう面白さももちろんあるけど、それ以上に文章の面白さが気になって仕方がない。あえて前後の文脈を抜かして引用するけど、
「あなたはこの本を読みながら、よもや自分が殺人兵器を手にしているとは思ってもいないだろう」
「あなたはわずか六時間で肉の仲間入りをする」
「首に止血帯を閉めたら具体的に何が起きるかは、ウィキペディアの「縊死」の項目を参照のこと」
「でも、考えてみたらすでに顔が陥没しているだろうから、きっと水温なんて気にならないよね」
「で、がぜん面白くなるのはここから」
「げっ」
「あーあ」
などなど、なっかなかのパワーワードが目白押し。ごっさ不謹慎。まさか科学分野の本をこんなゲラゲラ笑いながら読むことになるとは思わなかった。
文章でなら多少のグロは大丈夫、という人には、ぜひ読んでほしい本です。グロとか気にする余裕ないくらい文章がぶっ飛んでるから。
惜しむらくは、物理学者の方の著者、ドハティーさんが刊行後に亡くなられたこと。もうこの2人の共著は望めないんです……もっと読んでみたかった気も。
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●木下龍也、岡野大嗣共著『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』2017年、ナナロク社 https://www.amazon.co.jp/dp/4904292774/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_I1aTDbG19GYPX
これも共著。Twitterで回ってきて、タイトルに惹かれた本。あと、著者の片方、岡野さんは安福望さん関係のTwitterで度々見かけたお名前だったから気になったのもある。
歌人二人が、二人の男子高校生の夏の七日間を短歌で描いていく本。
物語の流れはよく掴めなかったので、普通に歌集として楽しんでしまいました。タイトルになってる一首ももちろん、「邦題になるとき消えたTHEのような何かがぼくの日々に足りない」「四畳にレジャーシートを敷きつめて簡易な海ですこしだけ泣く」などなど、いいなと思う歌がいろいろあります。個人的に、104ページの木下さんの短歌が、ものすごいガッッツーーーン刺さったんですけど、これは実際紙でめくった先で読んでほしいかなっという勝手な希望で引用しません←
特別付録として、舞城王太郎さんの掌握小説も二篇、挟まってます。お得。
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●千種創一『砂丘律』2015年、青磁社 https://www.amazon.co.jp/dp/4861983320/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_Z2aTDb2WGQNS6
これもTwitterで回ってきて気になってたやつ。紹介されてた「煙草いりますか、先輩、まだカロリーメイト食って生きてるんすか」の一首がすっごい好きで……。ずーっと書店でもAmazonでも在庫が無くて、っていう嘆きをツイートしたら、まさかのご本人から「増刷してますよ!」とリプを貰うという。その節は確認不足で本当すみませんでした。
ハードカバーじゃない脆い表紙、剥き出しの背に寒冷紗(?)を貼っただけのかなり異質な装丁の本。あとがきまで読んで、そんな装丁にした理由が何となくわかった気がした。
背をガッチリ固めてるわけじゃないから、何の気なしに開くと奥の奥までガバーッと開けてしまうので、そっと鋭角に開いて覗き込むように読みました。その行為自体が、なんか、歌集の雰囲気にあっている気がして、うーんなんというか……大事にしたい本だなあ、と思うのですね。
著者の千種さんは、中東在住の歌人さん。だからか、砂漠についての歌や言及が多いです。その、ご本人の砂漠という場所に対する思い入れが、あとがきの「この歌集が、光の下であなたに何度も読まれて、日焼けして、表紙も折れて、背表紙も割れて、砂のようにぼろぼろになって、いつの日か無になることを願う」って文章に繋がるんだろうなあと。
ご本人には悪いですが、僕は、無常をなによりも恐れる人間なので。どうか、少しでも長く、少しでも綺麗に大事に、この蔵書を本棚に存在させていきたいなあという所存。
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11月への繰り越し本はありません。次は何読みましょうかね。