2020年3月 読書リレー
やっと追いついた! 4月分からはちゃんと翌月上げられるよう頑張ります……。
例のウイルスで外出が難しくなり、何をしているかというと、休みのたびになぜか掃除と片付けでかなりの時間が潰れます。一日で散らかしすぎ。
今までのモーメントはこれ↓
https://twitter.com/i/moments/995558573286477824
●大谷崇『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』2019年、星海社新書
https://www.amazon.co.jp/dp/4065151627/ref=cm_sw_r_em_apa_i_VAQPEbKBBAN22
僕が傾倒して止まない作家、三秋縋さんがTwitterで紹介してた本。
1911年にルーマニアで生まれ、第二次世界大戦後フランスで活躍した思想家エミール・シオランの思想について、シオラン自身の生涯について言及した上で、第一部と称して「怠惰」「自殺」「憎悪」……などのテーマに分け紹介し、その後第二部でその思想の批判をしていく構成の本です。メイン、というか、ページ数的にも、大部分を占めているのは第一部です。
読む前から僕は、頭木弘樹『絶望名人カフカの人生論』『カフカはなぜ自殺しなかったのか?』のような内容を期待していて、実際切り口としては近いものを感じました。ですが、カフカ先生の数々のネガティブな発言よりも、シオランの方は論理性でガチガチに固めているというか、自らの哲学を追求し、その結論に基づいた発言、って感じがします。カフカ先生には始終、迷いのようなものを感じるのですが、シオランは一貫して迷いがないように見えます。自分が悲観主義者であることに、満足している、正しいことだと確信している、というか。二人とも超悲観的な人物なのですが、本当、カフカ先生の発言は文学的・詩的、シオランの発言は哲学的・学問的な印象でした。
面白かったし、共感もしたので実際の著書(特に『生誕の災厄』)も気になるのですが、……いつか、読めるかなあ……。
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●伊坂幸太郎『AX』2020年(2017年初出)、角川文庫
https://www.amazon.co.jp/dp/4041084423/ref=cm_sw_r_tw_apa_i_KBQPEb6W48AW8
伊坂さんの殺し屋シリーズ第三弾、前の2冊を文庫で持ってたので、ずっとずっと文庫化を心待ちにしていて、満を持して購入! しました!
恐妻家の殺し屋・兜は、息子が生まれた頃からずっと、「この世界から足を洗いたい」と思いながら、引退するのに必要な金を稼ぐために仕方なく殺し屋としての仕事を続けていた。ある日、いつものように仕事を終えた兜だったが、それからというもの次々と同業者の襲撃を受けるようになってしまった。何も知らない家族を、いかに守るか。どうすれば、この仕事を辞めることができるのか、足掻く物語。
前作の2冊では、複数の主人公がいて、節ごとに視点が変わる形式だったのですが、今回はほぼほぼ兜一人で物語は進行していきます。また、前作はどちらも主人公の一人は、(今は)カタギの人間で、大切な家族の仇討ちに燃える人物だったのですが、今作は現役の殺し屋、どちらかというと復讐「される側」という、ちょっと今までとは違う話だなあと思いました。
殺し屋の仕事の合間に挟まる、家族の日常生活の描写も相まって、生身の人間の物語感がより強くなってる気がします。冷静沈着に仕事をこなす一方で、妻の一挙手一投足にビビり倒し、息子に呆れられる兜の、器用と不器用が同居する歪な姿もイイ。魚肉ソーセージが食べたくなる話です。
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●藤村忠寿『笑ってる場合かヒゲ 水曜どうでしょう的思考2』2020年、朝日新聞社出版
https://www.amazon.co.jp/dp/4022516585/ref=cm_sw_r_tw_apa_i_UCQPEbHDD3K3G
前に1を読んで、その時すでに2の出版が決まってたので、そっちもぜひ読もうと思っていました。大泉さんの帯がめちゃくちゃ好き。
前のと繰り返しになりますが、内容としては、水曜どうでしょうのディレクター・藤村Dの日常生活から、それに対する感じ方や行動指針、仕事にどう生かしていくかというようなことを綴ったゆるいエッセイです。元々朝日新聞北海道版に連載されてたもので、一話題につき2ページぐらいなのでするする読めます。
僕は「〜かい?」という問いかけ方をしてしまう癖があるんですけど、これは完全に、大学時代水曜どうでしょうを観すぎて北海道弁が伝染ったせいなのです。他にもいくつか、伝染ってしまった言い回しもあります。
観始めたきっかけはあんまり明確には覚えてないのですが、観続けた理由は、面白さももちろんあるのですが、北海道出身&在住の友達がいるゆえの親近感も一因だと思います。その友達とは、実質二年ほどしか一緒に過ごすことはなかったのに、それから10年以上交流が続いていて、いやあ、分からないもんだなあと思います。
そういうことを、読んでてしみじみ思い出しました。
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●伊坂幸太郎『陽気なギャングは三つ数えろ』2018年(2015年初出)、祥伝社文庫
https://www.amazon.co.jp/dp/4396344511/ref=cm_sw_r_tw_apa_i_3DQPEbQ9D9DC3
伊坂さんの「陽気なギャング」シリーズ第三弾、だいぶ前に買ってたんですが、『AX』を読んでからじわじわと、もっと伊坂さんの空気感を吸いたいなあという気分になったので、引っ張り出して読みました。
嘘を見抜く名人・成瀬、動物好きの天才スリ・久遠、口からでまかせを垂れ流す演説の名人・響野、精確な体内時計と運転技術の持ち主・雪子の4人は、未だ逮捕されたことのない銀行強盗グループ。しかし、ひょんなことから週刊誌の記者・火尻に正体を知られてしまい、強請を受けることになる。そして各々、必死に火尻の弱みを握ろうと奔走する話。
正直、前作2冊はずーっと前に読んだんで、ほとんど内容覚えてなくて、「めっちゃ面白かった」ことしか記憶がないので言及しませんすまない。
銀行強盗グループの話だし、罪が明るみになるかもしれない絶体絶命の危機のはずなんですが、なぜか読んでて、あんまり緊張感がないんですよね。口封じの材料集めに、必死に動いてはいるんですが、どこかゆるいというか。随所随所で覗く、伊坂さん特有のアメジョ風味の会話のせいですかね。あれ、ふふってなって好きなんですよ。あと個人的に、火尻の通うカジノの運営者・大桑さんがラストホンマにかわいそうで、読み終わった翌日ずっと凹んでた。なんで僕は本を読むと逐一ダメージを受けるんだ。
それと、読み終わってから気づいたんですが、「火尻」って、マジで切羽詰まってる苗字で笑いました。
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4月への繰り越し本は、
宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』2019年、新潮新書
ずーっと気になってた本。新書は読むの時間かかりますね。