2019年11月 読書リレー
めっきり冬になりまして、実家にいた頃には凍らなかったフロントガラスが、三日に一回くらいの頻度で凍るようになりまして……おかげでいつも出勤ギリギリです困りますよね(自分がベッドから起き上がるのに30分くらいかかることは棚に上げる)
今までのモーメントはこれ↓
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●劔持俊彦『生存失格』1985年、手帖舎
https://www.amazon.co.jp/dp/B01LTHX1VM/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_AQG7DbQF1S9A3
母校の学祭にぼっち参加したはいいもののの、案の定こころがしんどくなって開放中の図書館に逃げ込んだ時に読んだ本。僕の母校、三階に渡って(一応開架の)書庫がありまして、独りになりたい時、そこの席が最適なんです。
お察しの通りタイトルに惹かれたんですけど、文章の雰囲気は好きな感じでした。「人生という誤謬」「届かない夜の残欠」って詩が結構よかったです。その「届かない夜の残欠」の方のページにはなぜかヨーグルトレーズン(牛のイラストのやつ)の袋が挟まっててなんか分かんないけどエモさを感じた。
作中で、「詩人とは、他にさきがけて幸福にはなれない存在でもある」という箇所があったんですけど、あ〜〜〜〜本当にそうなんだよなあ〜〜〜〜と思ってしまって勝手にダメージを受けてました。
関係ないですけど、読んでる時になんか知らない人に話しかけられまして……客観的に考えて、僕なら、ひとり薄暗い埃っぽい書庫で「生存失格」なんてタイトルの詩集読んでるピアス開いた陰キャ女なんて絶対かかわり合いになりたくないんですけど……なんだったんだマジで。
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●三島由紀夫『仮面の告白』2003年(1949年初出)、新潮文庫 https://www.amazon.co.jp/dp/4101050015/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_PNK7Db6CGEFDH
ずっとずっと読みたくて、でも表紙が「火サスみたいですげえだせえ」と思って(失礼)買えなかった本。この度、限定カバーでショッキングピンクの無地に青の箔押しの表紙! になりまして! 満を持して買って読みました。下手なデザインより、こういうドシンプルなのが好みなんですよ。このスキャンダラスなカラーリングもいいと思います。ちなみに某友は何年か前の限定カバー、クリームソーダが表紙のやつを持ってるそうです。それもいいなあ。
自分の異常とも取れる性的嗜好を、幼い頃からの記憶や苦悩を取り上げながら客観的に分析していく、自伝的小説。主人公の「私」は、作中で時々「公(こう)ちゃん」と呼ばれてるんですが、これは三島さんの本名「公威(きみたけ)」から来てるんでしょうね。
自分と周囲とのズレを自覚しながら、それを隠して明るく振る舞うのは、本当に苦しいことなんですよね。僕自身、同性に惹かれる気持ちがないとは言えませんし、あと『うえきの法則』に性癖を目覚めさされた感あるのでちょっと分かるんですよ……人が痛めつけられている姿への性的嗜好ってのは。……弁明させてもらうと二次元限定ですからね、三次元は(特に仲いい人たちは尚更)傷ついてるの絶対見たくないしそんな目に遭ってほしくないですけどね! 本当ですよ!
あと、この小説の記述を本当にそのまま三島さん本人のものとして読むのなら、三島さんが太宰さんを毛嫌いする理由が何となくわかった気がしまして。太宰さんは、当時としてはかなりの大柄で、意外と大食漢だったらしく。体質だけ見れば、作中の近江みたいに、屈強な男性になり得る素質があったんじゃないでしょうか。だから、三島さんからすれば「自分(三島さん)の理想に手が届く人間でありながら、あえて弱くあろうとする人間」「せっかくのチャンスを握り潰して弱者のフリをしている人間」と見えてたんじゃないかなあと。悔しかったし、負けたくなかったんじゃないですかね。勝手な推量ですが。
三島さんは近代文学の中では結構読みやすくて、描写が綺麗な文体だと思うのです。もし気になったら、気負わず読んでみてほしい。
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●カンダス・サビッジ著、瀧下哉代訳『カラスの文化史』2018年、エクスナレッジ
https://www.amazon.co.jp/dp/4767824729/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_OPK7DbEACJ3HG
某友の影響でカラスが異常に好きになってしまったので、宮脇本店で見かけた時に悩んで悩んで買ってしまいました。表紙もド好みなんですが、悩んだ理由は、……僕、昔から活字が小さい本苦手なんですよ。目が悪いわけではないんですけど、なぜか。小さい頃からそうなんで、そのせいでハリーポッター未履修っていう。
内容としては、カラスの生態や性質について、各地の研究内容や神話、体験談などをこれでもかというほど紹介してる本。カラス学界では超有名な松原始先生が監修しています。
とにかく情報量がすんごくて面白い。やっぱりカラスってすごい賢い生き物なんだな……ってことを再認識させられます。でも読んでると時折「可愛いな……」ってほっこりもする。
活字は小さいけど、文章的にはかなり読みやすかったです。……文章的には。というのも……本の構成が、スクラップブックっぽいんですよ。2,3ページ毎くらいに文の途中でコラムみたいなページが挟まるし、章の分け方もよく分かんなくて……。慣れるまではすごい混乱しました。スクラップブックとか、研究のためのメモ帳とかだと思って読んだら面白いと思います。
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●谷崎潤一郎『卍』1951年(1928年初出)、新潮文庫 https://www.amazon.co.jp/dp/4101005087/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_cUK7Db9RP823T
先日某友が泊まりに来て、翌日二人で書店に繰り出した時に、その人と一緒にあれこれ設定を練ってる話の資料として、二人して同じ文庫(去年の限定カバー)を買ったので、さっそく読んだんです。
主人公(人妻)が、通っている美術学校で光子という美しい女性に惹かれ、同性愛の関係になり、訝しがる旦那の追求を躱したり駆け引きをして誤魔化したりしていく話。
谷崎さんの小説を読むのは初めてなのもあって(「陰翳礼讃」とかの評論はいくつか読んだことある)、あらすじと合わせててっきりすごいえろいはなしだと思ってたんですけど(偏見)、エロさよりも人間の恐ろしさが際立つ話でした……(というか、そもそも別にそんな直接的描写があるわけでもなかった)。傾国の美女、という言葉もあるように、美しさで人を支配できるような悪女は本当怖いですね……。
「仮面の告白」の感想でも似たようなこと書きましたけど、僕は正直ヘテロかバイか微妙なところなので……登場人物の言動節々でなんか勝手にダメージを受けてました。なんで僕は読む本読む本、逐一ダメージを受ける仕様になってるんでしょう……。主人公たちみたいに「同性同士の愛と男女の愛は全くの別物」とは思えませんけどね。男女関係なく、性的行為までいったらもうそれはガチもんの浮気でしょうよ……。
あとこの話、一貫して後年の主人公の独白体(大阪弁)で書かれてるんですけど、最初関西人ぶって音読してたらかなり楽しかったです。……途中で「あっこれ日常生活でもエセ関西弁のイントネーション残るやつや」と思ってやめましたけど。
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12月への繰り越し本は、
レイ・ブラッドベリ著、伊藤典夫訳『華氏451度(新訳版)』2014年(1953年初出)、ハヤカワ文庫SF
本好きとして一度は読んでおかねば! ということでチョイス。結構言い回しのクセが強くて、最初は何が起こってるのかよく分かんなかったんですけど、慣れるとがぜん面白くなってきました。