誰も気づかずに現場の安全・品質が劣化していく
物流の現場で何年間、毎日仕事を続けていくと自分なりの仕事の要領を得て、以前より早く仕事が片付けられるようになってきます。
自分では、仕事がスムーズにできるようになったと感じているでしょう。
しかし、これは仕事が正しく、早くできる能力が上達したということなのでしょうか?
物流現場の誤解
経験を重ねると、その仕事の習熟度も高まり、精度、品質、効率も良くなってきます。また、次の作業を考えながら目の前の作業を進めていくので全体的な仕事の効率も良くなってきます。
仕事の段取りも良く、無駄な手数がなくなり、良い流れで仕事ができているのだと思います。
現場では本人も管理監督者も「仕事が早くて上手だ」と考えている場合が多い。しかし、必ずしもそうである場合ばかりではない。
ルールの不遵守や横着による手順を飛ばしたりするケースが少なくないからである。
物流現場での実際
現場観察を観させていただくと作業風景に違和感を覚えることが多い。
周りの人たちは見慣れた作業風景で全く気づいていないのだが、フォークリフトが作業者エリアを横切ってショートカットしていても気にしていないのだ。また、ベテランが基本動作を省略したり、走行操作をしていても見過ごしているのである。
周りに人がいない時は、歩行帯に貨物を置いて作業をしている場合もある。自分なりのこれくらいなら大丈夫といった尺度が日に日に甘くなっていくのである。
今日の仕事が「無事に完了」すると、それが基準となりまた甘くなってくる。これを毎日繰り返していると安全と作業品質は確実に劣化してくる。
その日の仕事が問題なく「完了」できていれば、その日にやっていた行動はちゃんとできている「正解」と考えてしまう。
その日々の「完了」をクリアしていくうちに、そのプロセスで生まれている「劣化」に気づかずに過ぎてしまうのである。
これに気づいていない現場が多いと感じる。
仕事の責任と守るべきもの
自動車を「自らが動く車」と解釈する人もいるだろうが、実際は「自らが動かす車」である。
つまり、人がルールや規則を遵守して、状況判断をして適切な操作をするということが必要ということである。
物流センターなどの構内を走行するフォークリフトなどマテハン機器も「自らが動かす車」と同等である。
構内のフォークリフトの走行や操作は、物流現場への出退勤時に一般道で自動車を運転する時のように走行車線を守り、一時停止などをしっかりと行い、安全操作、安全運転ができているであろうか?
お客様の貨物を扱う分、それ以上のレベルで運転操作ができていないのであれば、リフト事故が減らない理由はそんなところにあるかもしれない。
事故や作業ミスを出したくない。
物流現場では、お互いを注意し合える安全文化と、現場を観て気づく感性と正しく評価・指導できる人材の育成が必要である。