ベトナムの地方で出産した私が、妊娠中に見聞き・体験したあるある一部
ベトナムの北部の地方都市で2回妊娠出産を経験して、新鮮だと思った考え方、習慣、風習。
※注意書きとして、下記の内容は昔から伝わる良くも悪くも伝統的観念・価値観である。科学が発達した現在では推奨されていないこともあり、インターネットの普及や教育レベルの向上で、変化が生まれつつある旨もお伝えしておく。
1.男の子命
ベトナムではまだまだ男の子が好まれる傾向が高い。ここ数年、人工受精の技術が浸透した結果産み分けが一般的になってきた。確実に男の子が欲しい場合、何百万円もかけて医療の干渉を受ける。
ただ、やっぱり問題はお金。経済的に人工授精が難しい家庭は、男の子を授かることができると謳われるベトナム版漢方薬(Thuốc nam)を飲む。どこの地方にもそういうベトナムの伝統的医薬を扱っている家族がいるのだが、いわゆる家伝医薬で、原料や作り方も門外不出。何代にも渡って地元の人たちに重宝されている。家伝医薬にまつわる話で、義母の髪の毛を30分ほど噛んだ(笑)経験もあるので、また機会があれば書きたいと思う。
2.ビールOK
これは初めての妊娠がわかったとき、行った産科病院で渡された妊婦のしおりに、「ビール少量ならOK」と書いてあった。理由は、ビールは胃腸を消毒して、胃腸系の病気を防ぐからだと書いてあった記憶。たしかにベトナムの妊婦さん、ビールを飲んでる人はわりといる。何なら、ビール飲んだほうが生まれてる子供の肌が白くなるとか言ってるのを聞いたことある。初めての妊娠でこれだったので、ベトナムの洗礼を受けたというかカルチャーショックだった。
3.流産しかけたらもち米とエビは厳禁
2人目妊娠中に流産しかけた私。定期健診を受けていた地元の産科診察所の先生から もち米を含む食べ物とエビを食べないよう念押しされる。血行を良くするからダメと。
妊娠と関係ないが、ベトナムでは割とこの手の話は多い。たとえば手術後は鶏肉ともち米食べるな、咳が出る時は鶏肉や魚、スナックを食べるなとか。お医者さんが言ってくるから一部本当なんだろうが、日本ではまず言われない?
4.流産しかけにはベトナム版漢方・苧麻根(ちょまこん)
診療所で普通の薬を処方してもらったものの、中高年世代は妊娠中の西洋薬服用絶対反対の人が多い。義母もしかり、遠くまで安胎の伝統医薬を買いに行ってくれた。薬草である。潰して出た液を沸かし、汁を作る。色は泥色で苦みが強く、臭い。手について水で洗ってもすぐには落ちない匂い。それを毎日500㎖、食後に2回飲む。
また、ベトナムでは、妊娠中の出血・安胎には苧麻根(ちょまこん)がいいとされている。苧麻根は止血作用があるらしい。ただ、苧麻根は私のところでは珍しく、義母がずいぶん探したが見つからなかった。
5.便秘にはサツマイモのツル、ザボン、ドラゴンフルーツ
これは妊婦じゃなくても便秘と聞いてベトナム人が開口一番言ってくることなので、あるあるであろうと思う。サツマイモのツルは、茹でたツルだけでなく、ついでにゆで汁も飲む。果物であればザボンとドラゴンフルーツ。便秘解消のために毎日デフォルトで食べなさいとお医者さんから言われていた。
6.近所の子供のお古の服をもらう
ベトナムの風習だが、赤ちゃんを迎える準備として、近所の子供たちが着ていたベビー服をもらう。ただどんな子供のものでもいいわけでない。元気で丸々として、賢くて、いい子で…そんな子供が着ていたベビー服。ベトナムではXin vía(シン ビア、魂をもらう)といって、自分の赤ちゃんもその服を着ていた子供のように元気で大きくなってほしいという想いがあると言うが、節約のメリットのほうが大きいと思う。あげる側ももう着ないベビー服が片付くしで一石二鳥。
7.お葬式には行かない、行くなら棺桶は覗かない
これは理由を想像しやすい風習かもしれない。亡くなった人の霊やそれに集まる霊が子供を連れ去ったり、とりつくのを防ぐため、とのこと。また、精神的影響を軽減するためとも言う。このため、胎児はおろか、小さい子供をお葬式に連れて行くのはNG。身内が亡くなったときはお葬式に出席してもOKだが、棺に近寄ったり、覗いたりしてはいけないとされる。
8.熱を持つ食べ物は控えて
熱を持つ食べ物=体を温める効能がある食べ物。体を温めるといいように思うが、温めすぎると口内炎になったりニキビがでたり、便秘になったりする。ベトナム人は熱をもつ食べ物・体を冷やす食べ物をよく知ってるので面白い。例えば熱を持つフルーツだと、ライチ・竜眼・桃・プラム・バンレイシなどなど。妊娠中、特に妊娠初期はこれらは食べないほうがいいとされる。もし食べるなら少量で。
9.不妊治療や妊活の話は超オープン
1でも書いたが、ベトナムでは体外受精や産み分けがかなり一般的になった。そして、その話を隠したりしない。近所で誰かが体外受精したら、まあまあの速度で知れ渡る。「近所の誰々が体外受精して~」「誰々んとこの夫婦が男の子が欲しかったんだけど、採れた受精卵が女の子ばっかりで採取し直しでまた○億ドンかかったんだって~」とか全部入ってくる。だいたい金額の情報も入ってくるのがミソ。不妊治療に限らず、自他の子供夫婦の妊活についてもペラペラ話しているのですごいと思う。
10.女の子と聞いたら大体この反応
私は娘が2人いるのだが、それに対するベトナム人老若男女の反応ベスト3。
3位 「女の子は価値が高いで!」
ベトナムでは男の子が好まれるあまり、産み分けをしたり、女の子だとわかった時点で堕胎するケースが少なくない。その結果男女比が崩れてしまい、女の子が男の出生数の子に対して少ない問題が起きている。2023年出生した子供の比率は女の子100人:男の子112人。こうなれば、今後結婚したくてもできない男で溢れてしまうようになるのだろう。そういう意味で、「女の子には価値がある」。
2位 「将来金持ちやで!」
将来息子を結婚させるとなると結納をはじめ、すごくお金がかかる。例えば男2人兄弟だと、一般的に兄夫婦は両親と同居。同居するために手狭になるので家を改築したり、弟夫婦のために別に家を建てる必要がでてくる。女の子の場合は、嫁入りさせたらそこまで。そういう強制的な出費がいらない。という意味だと理解している。
1位 「次は男の子やな!」
1で書いたとおり、男の子命なので、妊娠中の時から親戚、近所の人、同僚、なんなら全然知らない人からも「次は男の子ね!」と言われ続けてる。老若男女問わずに言ってくるのが面白い。今でも、子供2人の性別を知って、3人目を産まなくていいと言ってくれる人に出会うことが超レアである。男の子を産んで当たり前という観念にプレッシャーを感じなくもないが、言ってる本人たちもあんまり深く考えずに言っているので、笑顔でハイハイ~と聞き流すのがコツである。
ちょっと長くなりすぎたが、ちょっと前に気まぐれでHatena Blogに書いていたものを一部修正・投稿した。ベトナムの地方で出産する外国人自体少ないだろうし、需要があると思えないが、文化の違いに触れたときの驚きを文章で残しておきたかった。こちらにいると、全てがだんだん当たり前になってしまうので、新鮮な気持ちを持っていたことさえ忘れてしまう。
追伸.
妊婦さんの飲酒は✖!
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