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ベトナムの田を前に日本の田を思う

田中の小路を辿る人も

 子守唄として朧月夜を歌っていると、この一節に毎度想像力を掻き立てられる。山あいのひっそりとした田んぼの映像が頭に浮かぶ。その広大な田の真ん中のあぜ道を足早に通る人。心の原風景である。

 ベトナムの稲作は2期作である。4月から10月の半年で、小さい苗の背が高くなり、段々と首を垂れていく姿が2回見られるのである。
 1サイクル目の稲刈りは真夏に行われる。夏の稲刈りは大変である。皆、暑さが少し和らぐ夕方4時ごろから繰り出して、稲を刈るのである。現在も稲刈り機を持っている家庭は少なく、皆鎌を手に一列づつ、手際よく稲を刈り取っていく。ひらけているが風もほとんどなく、汗だくである。

 2024年5月撮影。1サイクル目の苗の特徴は、香りがいいことである。

5月。苗の青さが眩しい。


5月末には既に若い実が見られる。

 2024年6月中旬撮影。あっという間に黄色になった稲を刈り取り、アスファルトの地面に籾をぶちまけ、乾燥させる。

真夏の稲刈り。温度は30度ほど。


雨が少ない時期である。

 そして、10月の今、2回目の収穫時期が迫りつつある。9月の台風の影響で、多くの田んぼが水没し、ダメになってしまった。やはり、首を垂れる稲は秋の代名詞である。


追伸. 
 冒頭の話に戻るが、「田中の小路を辿る人」の節の田はどうあがいても日本の田でしかしっくり来ない。ベトナムの田んぼを当てはめると、やはりどこか、空気というか、色というか、何かが違うのである。

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