ソロシステムでXカードを出した話

この記事は、ソロジャーナル Advent Calendar 2023の投稿記事です。
※この記事には推しCPや二次創作卓の内容が含まれます。

ソロジャーナルとは  

アナログゲームの一種。一人で遊ぶ。物語に使えそうな要素が書かれた表などが用意されていて、プレイヤーはサイコロやトランプを使用しランダムで物語の要素を表から拾っていき、物語を作っていく遊び。

ソロジャーナルAdvent Calendar 2023 企画ページ(https://adventar.org/calendars/8685)より

上記の解説以外にも様々なソロジャーナリング作品が公開されています。
本来英語表記では「ソロジャーナリング」が正しいのですが、「ジャーナリングRPG」という大きな枠組みがあったり、日本での呼称が定まっていないので、今回の記事では「ソロジャーナル」という記述で統一しています。
上記以外にも他の方のアドベントカレンダーや、以下の記事やまとめもぜひご覧ください。

ソロジャーナル/ソロTRPGの話をしよう。
https://togetter.com/li/1885359  

簡単に説明すると、1人(ソロ)で書き物(ジャーナル)をする遊びですね。
もちろんソロではないジャーナリングゲームや、ソロTRPGと呼ばれる物もあり、海外にはたくさんの種類のソロで遊べるアナログゲームがあります。




※今回は愚痴というわけでもなく、こんなこともあったな〜というエッセイとして読んでいただけたら幸いです。

ソロシステムで遊んでいた時

あるシステムで引いた出目が、偶然今の時勢と重なり手が止まってしまいました。
今まで遊んだソロジャーナルは、途中で書くのが止まった物も「セーブデータ」として全てプレイログを残してあるのですが、今回はできずに消去してしまいました。

注意書きが必要なセンシティブな内容が含まれるシステムではなく、全年齢向けのシステムだったのですが、ダイス目の組み合わせが偶然、現実のある出来事とリンクしてしまいました。
前提となる状況に出目の結果が重なったら、どうしても現実でも起きているセンシティブな話題(例:戦争、災害、流行病など)の発想以外ができなくなり、考え続けると辛い物だったので、削除することになりました。

今までTRPGでXカードを用意したセッションは何回も経験したのですが、自分自身の発想に耐えきれず、自分にXカードを出して遊びをストップしたのは初めてです。
ソロジャーナルで遊ぶ時、専門的な職業のPCを設定した時は、ある程度調べながら書くのですが、今回は調べ続けているうちに現実でのしんどい話を思い浮かべてしまいました……。

Ⅹカードとは?

以下『X-Card』日本語訳より
対人ゲームで遊んでいる時に、不快に思う内容があった時に意思表示をする時に使用するセーフティ・ツールです。
TRPGなどで、苦手な描写があった時に机の上に置いて使うカードのことを主にⅩカードと呼びます。(Ⅹカード以外にも様々な呼称があります)


Xカードが必要になる時

これは現実に即した内容が苦手ということではなくて、全年齢向けシステムで癒されるログを作ろう!と思った時に、想定していないセンシティブな発想がやってきたのがしんどかったのだろうな……と思いました。
現実での出来事を含むセンシティブな内容を記述するシステムです」という前提があった時は、悲しい内容が予想できるので心の準備をしながら遊べる(もしくは遊ばないか選択できる)ので、ダイスの組み合わせと現実が偶然重なった事例だろうな……と思いました。

その後、時間を置いてから別PCでもう一度ダイスを振り直して遊びました。
無事にhappyなプレイログが生まれてよかったです。

TRPGやソロジャーナルなどを遊び続けていると、たまに自分自身の想像自体にXカードを出す時があります。
不思議です……自分で全てを決定する場合でも、不快は生じることがある。
海外のシステムの中には、プレイヤーに対して自省的な問いかけをするジャーナリングゲームも多いので、ソロシステムにも注意書きやセーフティツールが準備されている物があります。
最初はソロでのセーフティツールは自分には必要ないのではないか?と思っていたのですが、実際に体験してみるとなるほど色んなことがある……と感慨深くなりました。

自分に対してした行いに、自分が動揺するという展開が起きた時に、外部ツールに助けられるというのも稀有な体験だな~と思いました。

そこで今回は、海外のソロジャーナルから興味深い安全ツールを紹介しようと思います。


海外システムThousand Year Old Vampire

『Thousand Year Old Vampire サウザンドイヤー・オールド・ヴァンパイヤ / 千歳の吸血鬼』
これは長命種の吸血鬼となり、時の流れに置いてけぼりにされ、大切な記憶を手放しながら破滅へと向かう大人向けのソロジャーナルゲームです。
日本語版が発売中です。
吸血鬼であるPCが社会的に迫害されたり、またPCから他者への加害をするなどセンシティブな要素と、ブラックなユーモアな仕掛けが含まれるゲームです。
(エドワード・ゴーリーなどが好きな方におススメです)

サウザンドイヤー・オールド・ヴァンパイヤには、興味深いセーフティ・ツールが収録されています。
The Thousand Year Old Flower サウザンドイヤー・オールド・フラワー」と呼ばれる非発話型積極的同意セーフティツールです。
サポートフラワーとも呼ばれ、緑色の葉から黄色、中央の赤い花に向かってNGへの段階が表示されています。
とっさに言語化しなくても、既に書かれている文章の中から指し示すことで、自分の感情を表すことができます。

https://timhutchings.itch.io/tyov から英語版のコミュニティコピーが無料でもダウンロード可能です

サウザンドイヤー・オールド・フラワーは、見開きページに、緑の葉と黄色い花弁と、中心部の赤い花が描かれており、緑から赤に向けて以下のようなプレイヤーの現在の状態が安全か確認するための文章が記載されています。

緑色の葉「リラックスして快適に感じる」
黄色の花「自分の息づかいが変わった気がする」
赤色の花「……こわばり、疲れている」

Thousand Year Old Vampire日本語版


サウザンドイヤー・オールド・ヴァンパイヤは、ダイスを振りランダムな結果から出た数字の【啓示】に答えていくゲームです。

【啓示】の内容によっては資産を失ったり、定命の者と親しくなってしまったり、犯罪行為を行ったりと様々です。うまく答えられない出来事も発生します。
そんな時はサウザンドイヤー・オールド・フラワーの中から、今の気持ちに最も近い物を探してみましょう
赤い色に近い程「本当にこのゲームを楽しめていますか?そろそろ休憩しませんか?」とゲームが警告してくれます

遊んだプレイログの番号と花弁の色を記録しておくことで、自分がどのようなプロンプトで高揚したのか、もしくは心理的に不安を感じたのか振り返ることも可能です。

このサウザンドイヤー・オールド・フラワーの素晴らしい所は、センシティブなゲームで遊んだ人の精神状態を、言語化した選択肢を複数用意しているところです。
TRPGでも、現在の心理的状況を確認したり、言葉にしなくても既に言語化されているカードを示すだけで意思を伝えることができるセーフティ・ツールが存在します。Xカードや、フルデッキ・メソッド、トラフィックライツ、サポートフラワーなどがそれにあたります。

これらのセーフティ・ツールには「楽しいからもっとしてほしい」というポジティブな意思表示の項目も存在しています。
フルデッキ・メソッドの♡カード(THANK YOU)などは、SNSのいいねや、ゆうやけこやけというTRPGの「夢」のように場を和ませるカードとして使うことができます。
自分がされて嬉しいこと、好ましいシチュエーションをはっきりと視覚化させることにも使えます。
セーフティ・ツール=拒絶の意思表示ではないところが、遊びを次に繋げてくれる仕組みだな……と思いました。


自分のことを全て把握しているとは限らない

ここまでの文章を読んで、「元々センシティブな作品が好きだしXカードはいらないな……自分はそこまで繊細ではないし……」と思った方がいるかもしれません。
ソロゲームなら、自分が嫌だと思ったらゲームをその場でやめればいいのです。そう、やめることができる人にはそれができる!
しかし私は、自分向けではない作品を苦痛を感じながらも最後まで見てしまうタイプです。映画を見て、途中で自分向けじゃないと気づきつつも席を立つことができません。
まあ、映画と違い、システムの中身を全文読んでから遊ぶことができるソロジャーナルで途中で思っていたのと違った現象が発生するのは滅多にないことだと思います。
実際、今回記事にしたプレイログ以外でソロシステムでⅩカードを自分に出したことは無いです。
人によってはソロシステムでⅩカードはいらないのかもしれません。
私は、念のため必要かもしれない……それぐらいのポジションで用意しています。

しかしソロジャーナルという言語化して書き物をする遊びでは、どうやって文章を書いたらいいのか分からない時に、すでに用意されている語句の中から一番近い感情を選んで書き写すのは有効だと思いました。
(自分が今どう感じているのかを言語化する補助ツールとしてもソロゲームのセーフティ・ツールは使えるのでは……?)

海外のソロジャーナルの中には、PCよりもPLに対して自省的なカウンセリングのような問いかけをするシステムもたくさんあります。
ソロジャーナルは、その名の通りひとりで遊ぶことが前提のシステムが多いので、自分で自分に「大丈夫、いま傷ついていないか?」を尋ねてみるのもありかもしれないな……と思いました。

TRPGでも(あの時は笑って平気ですよ~~って言ったけど、後になってからジワジワと嫌だったな……)と気づくことがあったり、昔好きだった作品がある時から苦手になってしまうこともよくあります。
自分のことだからといって、全て把握しているとは限らないな……いつ自分がセーフティ・ツールを必要になるかは誰にもわからないなと思いました。


セーフティ・ツールは万能ではない

Xカードの有効性についてたくさん語ったのですが、別にセーフティ・ツールというものはプレイヤーを完全に守ってくれるものではないと思います。
万全なものではないし、前述のとおり必要のない人は使う機会はないでしょう。
しかし、世界のどこかで誰かが必要としている仕組みなのだと思いました。
必要な誰かがいたから生まれた仕組みで、誰かを加害者にしないために、遊びを長く続けるために生まれた仕組みなのだろうな……と思いました。

ひとりで遊んでいても、心臓がドクドクして不安になることがあるという発見があってよかったです。
(ひとりで書き物をするだけの遊びが、ここまで人の心に影響を与えるのも凄いことでは……?と思っています)
この記事を読んだ人が、Xカードを自分自身に使うのかはわかりませんが、ソロシステムで遊んでいてXカードを使った人もいるんだな~という認識が、ネット上に既にあるとほっとするので文章にしてみました。


おまけ

ソロジャーナルではないのですが、TRPGの中でお気に入りの注意事項やセーフティ・ツールが記載されているシステムを載せておきます。

アンサング・デュエット

カット&テイク2」のルールが説明しやすい文章で記述されていて、初めてロールプレイを題材にしたゲームで遊ぶ人におススメです。
Xカードではなく「カット」の短い一言で一時中断を伝えることができます。

ストリテラ

瀧里フユ先生のシステムではストリテラにも「カット&テイク2」と共に「タイム」という短い単語で一時中断を伝えるルールが追加されています。
どちらも口語で記載されているので、そのまま読み上げてプレイヤーに伝えることが可能です。


『終幕TRPG 冥冥の国』

こちらはおススメのソロTRPGシステムです。
短時間であっけなく「おしまい」へと向かいます。
ルールブックの1.『冥冥の国』についてのページに、ソロTRPGを遊ぶ時の注意事項が丁寧に記載されています。
④コンディションの項目は必見です。



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