どんぶり

低山登山家 失敗写真家 短歌見習 塔短歌会会員(2023年6月〜)二児の爺

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低山登山家 失敗写真家 短歌見習 塔短歌会会員(2023年6月〜)二児の爺

最近の記事

圏外

 報道各社の皆さん、本日はお忙しいなか当研究所の記者会見にお集まりいただき、誠にありがとうございます。今日はたいへんうれしいニュースを皆さんにお伝えすることができ、所長といたしまして喜ばしいかぎりでございます。この日が来るのを今まで所員一同どれほど夢見たことか。すみません。ちょっと・・・。申し訳ありません。いえ、はい、大丈夫です。つい感情的になってしまいまして。 では、さっそく本題にうつらせていただきます。わが「外宇宙知的生命体探査研究所」はこのたび・・・遠く遠く離れた別の銀

    • 逆剥直志著『荒田学総論』文庫版 解説

      本書は、荒田学の第一人者である逆剥直志先生の名著『荒田学総論』の改訂文庫版・第2巻である。原著じたい庚天23年(2365年)の刊行以来、35年の歳月を経た現在も版を重ねているが、今回このように文庫に収録され、再び新たな読者を獲得するということは、荒田学研究の末席をけがす者として、また逆剥先生の不肖の弟子のひとりとして、この上もない喜びである。  それは良いが、こうして文庫版の刊行にあたり本書の解説を書くという、私のごとき浅学若輩の身に余るご依頼を受け、じつはほとほと困りはてた

      • 現代思想文庫①「焼酎交換と死」

        木下又一郎が死んだ。高校の同級生だった。享年48歳。肝硬変の末期で、肺炎を併発して死んだ。 通夜に行くと、同じく同級生の佐高邦夫が来ていた。俺たち3人は高校を出てからも、年に数回は一緒に酒を飲みにいく仲だった。もっとも木下が2年前に肝臓を壊してからは、その飲み会も途絶えていたが。木下の奥さんから、よかったら今夜一晩あの人と一緒に、と懇願され、夜伽をすることになった。 佐高と二人、座敷のすみでちびちびと温くなったビールを飲みながら、ひとしきり木下の思い出話をし、他の同級生の消息

        • 山の怖い話(弐)血のテント

          これは、大学生のときにはじめて聞いて震え上がった。 さしさわりがあるので学校名は伏せておくが、1970年前後に京都のとある私立大学のワンダーフォーゲル部で実際にあった話だと聞いた。 その大学のワンゲル部は、新入部員を厳しくしごくので知られていた。今の人たちには信じられないだろうが、その頃の多くの大学の山岳部やワンゲル部ではしごきが横行していたのである。 ある年の「新歓合宿」のことだ。新歓合宿というのは、まあ「歓迎」とは名ばかりで、新入部員をしごきまくる、新入部員からすると

          『文部科学省認定登山士試験 完全必勝講義』序文(←嘘ですよ)

          平成25年の創設以来、「文部科学省認定登山士試験」の受験者数は年々うなぎ登りに増えてきた。良質な登山者育成に寄与するこの資格制度が、かくも短時日に広く世間一般に受け容れられたことを、制度創設に微力ながら関わった者のひとりとして誠に嬉しく思う。 近年においては、得意先の接待に登山を利用する所謂「接待登山」がビジネスマンの間で流行しており、その動向を受けて、「認定登山士の資格が就職にも有利である」という認識が一般に広がったことも、本資格試験の受験者数増大につながっているようだ。企

          『文部科学省認定登山士試験 完全必勝講義』序文(←嘘ですよ)

          菊水山死の彷徨(抜粋版)

          【あらすじ】 菊水山は、東西に長い六甲山系の西寄りに位置する標高458mの独立峰。頂上へ至る登山道は、六甲でも屈指、心臓破りの急登で知られる。 20XX年、小学生の体力低下に憂慮する神戸市教育委員会参謀本部は、麾下の小学校2校を選抜、この山での真夏の暑中行軍を実施することとなった。恐るべき暑さの夏の菊水山を歩かせ、「暑さとは何か?汗とは何か?」を、教師と小学生に身をもって体感させることにより、もって夏場の朝礼で倒れることのない強靭な児童をつくるための研究に応用せんと考えたの

          菊水山死の彷徨(抜粋版)

          山の怖い話(壱)隣にいる

          高校や大学の山岳部なんかに入って、合宿行って、明るいうちはそりゃ山を歩いているんだろうけど、夜飯食ったあとはテントの中で何してるんだ?することあるのか?・・・と、尋ねられることがよくある。 答えましょう。「話」をしているんです。同じテントで寝る4,5人の連中と、話をしているんです。 さて、どんな話をするかというと、それはまあいろいろなのだが、けっこう多いのが「怖い話」である。それも「山の怪談」である。 山で聞く「山の怪談」は、真に迫って誠に怖い。 これまでさんざん多くの「山

          山の怖い話(壱)隣にいる