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ペニスポンプが抜けなくなった of the Dead

 (前回は自分でもエモみのあるいい事を書いたと自負している。
  からのこのクソタイトルで申し訳ない。)

 高校の修学旅行で、生まれて初めて他人の勃起した陰茎を触った。
 骨でも入ってるんじゃないかと思える硬さと、こちらの顔面を見据えるが如き鋭い角度、完全に勇者の剣だ。
 それに比べると、もったりしていて、いくら頑張っても地面と平行にすらならない俺のは、トロルのこん棒である。オデ、クヤジイ。
 
 ☆男性の大部分は修学旅行で何らかの不純同性間交遊を経験しているが、   大抵が黙っているのであまり表には出てこない。

 というのは結構本当じゃないかって事は置いておいて、
 「見せっこ!キャッキャ」のノリだったはずなのに、なぜ友人は初手からバキバキに勃起していたのだろうかって疑問も置いておいて、
 俺の内なるBoyzは、勇者の剣にときめいた。
 それは同性愛的感情*ではなく、ドラゴン柄の裁縫セットに対するそれと同種のときめきである。(俺は妹へのおさがりを想定してポムポムプ〇ンにした。)
 
  *小学校5年生の時、転校が決まった親友のAが「ゆん太もいっしょならいいのに」と俺の袖を掴みながらぽろっとこぼした涙に沸き上がった言葉に出来ないFeelingは今にしてみると同性愛的感情だったかもしれない。エモい。

 それはさておき、バキバキヒーローソードへのあこがれは心の中にそれとなく持ち越され続けていた

俺でも勇者になれるチートがあるんですか!?


 俺のこん棒には「やわらかデバフ」がかかっているが、EDとかそういう問題ではなく、血流量の、つまり物理的な問題だと分かっている。
 なのでトロルはトロルの里でトロルとしての人生を全うするほかないと思っていたのだが、ネットで医師が「ペニスポンプは注意して使えば勃起を補助できる」と言っているのを見た。
 
 俺が考えるペニスポンプは、コンプレックス産業が生み出したオカルト呪物であり、ゲイ向け動画サイトで海外のおっさんが浮腫状態を楽しむためのエクストリーム遊具だ。

 だが、医師が認めるという事は、適切に使えば適切な効果が期待できるという事ではないか。バキバキは無理でも、せめてカチカチ位は目指せる可能性があるかも!

HOW TO USE ←とても大事


 俺の頭の中で、呪物/遊具からチートアイテム(仮)に変化したペニスポンプ。
 検索してみると、想像の100倍くらい種類があるし、値段の幅も広くてどれがいいとか全く分からないので、とりあえず上位に出て来た手頃なのをポチッた。

こんなやつ

 圧力計がついている割に安いのもなんか良い。
 レビューはいまいちだが、10連ガチャ以下の値段にそこまで期待もしない。俺はあくまでも「可能性」を試したいのだ。 

 ネットに諸賢人たちが書き残してくれた使い方は学派ごとに割れているが、共通する部分をまとめると

 ①使用時間は5分~15分
 ②ローションを使う
 ③下の毛を剃っておく

 ①と②は簡単だ。③についても彼女の好みでつるつるをキープしているので問題はない。
 俺は「どーせSSR勇者の剣は出ないだろ」と思いながらも、心のどこかで期待しつつ、チートアイテム(仮)が届くのを待った。

トロルに勇者の剣は抜けるか


 休日出勤の振休日。
 彼女は夜まで帰ってこない。
 宅配BOXからこっそり救出して以降、しばらくクローゼットの奥に寝かせておいたポンプを使うチャンスが来たのだ。

 ビタっとしたビニールの包装を空けて箱から取り出し、これまたビタっとしたビニールを破ってみる。
 ややチープだが破損は無いし、それなりに頑丈そうに感じる。
 
 レビューにあった通り、パッキンの穴は異様に小さく、組み立てて先端をあてがい、トリガーをシュコシュコしても全く入る気配はない。
 あきらめてパッキンを外し、直接つっこむことにした。
 
 筒は俺のこん棒より太いが、こん棒はきれいな円柱形ではないので、ところどころ引っかかる。
 なので筒を左右に細かくひねりながら押し込んでいった。

 あらためてトリガーをシュコシュコすると、「ズゴッ」とこん棒全体が吸い込まれる、人生でかつて経験したことのない感覚。
 
 これが世に言う「バキューム・フ〇ラ」なのでは!?
 
 自分には一生縁が無いと思っていたが、まさかこんなところで経験できるなんて!!!
 と感慨に浸る間もなく、筒とこん棒の隙間から「シュゥゥゥ」と空気が入り、バキューム状態は1秒も続かない。

 隙間をなくすために、筒のふちを下腹部に強く押し当て、プラスチックが皮膚に食い込む痛みをこらえながら、改めてシュコシュコすると、こん棒がグーっと引っ張られてふくらんでいく。
 なにこれ超おもしろい!!
 見えない力でむりやり勃起させられている、これが勇者の剣を作った女神の祝福か?

 「ズポン!」
 勃起してこん棒が伸びたことで、筒と下腹部に隙間ができてしまった。
 空気が入り、こん棒もふんにゃりする。
 
 まるで穴の開いたひしゃくで水を汲みだすような虚しさ。
 押し当てて、シュコシュコして、空気が入って。
 筒が下腹部から外れるたび、皮膚が強く引っ張られて赤くなっていく。

 だが、女神は突然微笑んだ。
 こん棒がふくらみ、筒との隙間が埋まって来たのだ!
 まだ空気は入るが、そのペースがずいぶんゆっくりになっている。

 「いける!」
 そう確信した俺は、圧力計の目盛りが真ん中を維持するようにゆっくりとトリガーをシュコシュコし続けた。

✕チートアイテム 〇呪いの装備

 
 時計を見るのを忘れていたので、何分シュコシュコしていたか定かではないが、15分前後だろうか。
 こん棒の筒に収まっている部分とそうでない部分であきらかに太さが違っている。
 これはもうバキバキ勇者の剣へとアップグレード成功なのではないだろうか。オデモ魔王討伐ノ旅ニ参加出来ル!?

 期待に胸を膨らませ、空気を入れるリリースボタンを押し、筒からこん棒あらため勇者の剣をぬ・・・あれ?
 ・・・ぬけない。

 引っ張っても、ひねろうとしても、立ち上がって振ってみても、こん棒とぴったり完全一体化している。
 ペニスポンプは女神が作った奇跡のアイテムではない、魔王が裏切ろうとしたトロルを懲らしめるために作った呪いのアイテムだったのだ!!
 
 絶望。
 俺は一生このままなのだろうか。
 いや、流石にいつか効果が切れるだろうが、あと数時間には彼女が帰って来て、さらに半日後には出勤である。
 しかしなんだってこんなことに・・・。

>②ローションを使う

 あっ!!!
 完全に忘れていた。
 
 賢人たちの教えをないがしろにした罰・・・。
 だが、今からでも入れる保険があるかもしれない。
 
 台所で乾かしてあったアイス(チョコミント)の棒にローションをまぶして、筒とこん棒の隙間に差し込み、円を描くようにして、アイス棒が届く範囲に塗布していく。
 完全にパンにバターを塗る動作。
 
 ぬるり。
 ローションが付いた部分は動くようになった。
 だが、そこから上の部分は皮膚と一体になったかの如くぴったり張り付いている。
 そこからは筒をにぎって、ローションがいきわたるように小刻みに前後にゆすっていく。もはやシコっているようにしか見えないが、それ以上に恥ずかしいことをしているので問題は無い(ある)。

 少しずつすべり初め、
 ずぞぞぞぞ、っぽん!
 やっとの思いでこん棒は呪いの装備から解放されたのだった。

チートの結果とはかない夢


 俺が思い描いていたのは、

 「真空状態になることで血液が全体にいきわたり、こん棒が勇者の剣にアップグレードされる」

 だが実際は、

 「こん棒の表面がむくみでコーティングされた」

 だけであった。
 表面は熱をもっていて、皮膚が一枚増えたような感覚の鈍麻がある。
 たしかに太くなりはしたが、それは腫れているだけで、角度や硬さに変化はない。

 つまるところ、こん棒を勇者の剣に変えるチートは存在せず、ただ手間と感覚を引き換えに「こん棒」を一時的に「こん棒+」に変更するアイテムがあるのみだった。
 腫れと感覚の鈍麻はその後、半日続いた。
 ああ、ああ・・・・・・・。


「おばあちゃん、それからトロルさんはどうなったの?」
「聖女様が帰っていらして、あわれなトロルを心配なさったそうよ」
「うわぁ、笑われたり引かれたりするよりはるかにダメージが大きいね」
「NOSCE TE IPSUM、まさにトロルは身の程を知るべきだったわねえ」


追記:本来は勃起不全の人が、
   ペニスポンプで吸引 → 根元をリングなどで固定する
   みたいに使うのが正式のようです。
   さびた剣を打ち直すアイテムといったところでしょうか。
   いずれにせよ、武器の種類を変えるチートではないですね。
   ああ・・・。


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