シャブダ【sabdah】

シャブダ【sabdah】

最近の記事

【短歌】秋冷

 ・服喪中 宛名書き終え 切手貼り 一人で過ごす 深夜二時  ・失った スマホの語り手 探す道 毎月振り込む 祈りの料金    ・母親の 手を握り締め 頬触れる 聞こえる声の 音色を確かむ  ・朝起きて ラジオ体操の声を聞き 居間に動く 幻影に触れ  ・母を抱き 零れる涙が 頬に落ち 溢れ出るのは 幼き日の匂

    • 【エッセー】手紙

      晶子へ 晶子。どうしてこんなことになった。あの日あの夜、鼻から血を流し眼を閉じて倒れていたお前を僕は忘れない。人が冷たくなっているのを感じたのはいつ以来だろう。 僕とお前の父親以来か。お前の頬、額の冷たさを、その感触を僕は一生忘れないだろう。 両手は硬く冷たく荒れていた。通院している病院の薬も山ほどあった。 僕はそれを知っていた。お前は僕の妹だ。お前の顔は綺麗だった。 安らかで静かな顔をしていた。眠っているようだった。 晶子、綺麗な顔だった。      離れて暮らし始め

      • 【詩】星座

        キッチンの三角隅のゴミ箱の中にある コーヒー粕 へ差す光 に混ざり合う シジュウカラの鳴声が 降って来る 大気と混じり合う水の香りと 二色の虹が 丘の上の門を潜り抜け 死骸を眼下にした停車場で  時を巻き戻し                                                           水へ沈み込んだ 甲虫が 羽を喪う 赤土の壁の風 に揺れる旗   にたかる小蝿には アンモナイトが デンマークの童話を読み聞かせている   汗で灯す蝋燭

        •  【俳句】七夕の句

          ・七夕や 笹の重なり 涙雨 ・銀河超え 短冊持つ子と 親御たち ・笹筏 天の川の 行く末よ ・星月夜 零れる織女の 涙かな ・初盆や 提灯持つ声 二星かな ・訪れは 違う二度見の 浴衣かな ・七夕の 花火の華の 妹の影 ・短冊に 写す笑顔の 文字が濡れ ・同じ肌 おり姫何処や 秋団扇 ・おり姫の 香を差し出す 鈴の音や

          【エッセー】Will you shut up bloody dance here! (やかましい、ダンスをやめろ!)

              久し振りに笑った。TikTokに投稿されているイギリスランカシャー州の双子の女の子たちの話だ。アイスクリーム販売のワゴン車へアイスクリームを買いに行った女の子が値段が高過ぎるとスマホを向けている母親であろう人物に不満と怒りをぶちまけている。 「どうしたの?、女の子たち」と娘たちへ呼掛ける母親の声に                 「Sooooooー(あのねー)!」と言って次から次へとワゴン売りのアイスクリーム屋を罵倒する女の子。                    

          【エッセー】Will you shut up bloody dance here! (やかましい、ダンスをやめろ!)

          【映画レヴュー】サン・セバスチャンへ、ようこそ Rifkin's Festival

           人生というものはいつも上手く行かない。恋愛にしろ仕事にしろ自分自身の在り方にしろ、生きる意味とは何なのかをついつい考えたくなるものだ。  ウディ・アレンの「サン・セバスチャンへようこそ」は、いつもながらのアレン節ともいえる映画であり、そんな気分の時に観るにはぴったりの作品だ。  舞台は映画祭が開催されているスペインのサン・セバスチャン。そこで繰り広げられる一組の夫婦を始めとする男女四人の恋愛模様、その最中に主人公リフキンの頭の中で往時の映画の1シーンが妄想としてオーバーラ

          【映画レヴュー】サン・セバスチャンへ、ようこそ Rifkin's Festival

          【音楽レヴュー】THE STREET SLIDERS 40th Anniversary Final Special GIG「enjoy the moment」WOWOW生中継 24/04/06日比谷野音

          ※このレヴューは、WOWWOWでの生中継を視聴して記したレヴューです。  会場である日比谷野外音楽堂で直接観て記したレヴューではありません。  4/6(土)17:30よりにWOWWOW放送において、TheStreetSlidersの東京日比谷野外音楽堂でのLIVEが生中継された。昨年5/3に日本武道館で行われた23年振りの再結成LIVEに続く生中継LIVEである。  コロナ下におけるオンラインLIVEと言う新たな方法が生まれ、 メンバーも昨年の武道館での生中継も経験している

          【音楽レヴュー】THE STREET SLIDERS 40th Anniversary Final Special GIG「enjoy the moment」WOWOW生中継 24/04/06日比谷野音

          【詩】 月の光

          絨毯に乗った女が夜空を回転している 堕ちる先はセロテープの回し車の中だ 歯が折れたモグラはいつも光を求めているが 指輪の言葉を知らないため テーブルで骨付きの肉を食べたばかりの 聖者の唇を油取り紙で拭っている 耳を切り落とした 象の頭を売るセールスマンは 口から粘々した臭いを今日も吐き出し 指に挟んだ神殿の中のパスワードを サンクトペテルブルグで元で買おうとするのだが 飴を売る屋台の女は 草原で四方に向かって声を 張り上げるだけで 紀元前のアメリカ人は 路端の安楽椅子

          【レヴュー】Liam Gallagher & John Squire

            リアム・ギャラガーの歌声は人を魅了する。  フェスのあちこちの会場で各ミュージシャンが同時に演奏していたとしても、リアムの声は即座にわかる。蜜に引き寄せられる蜂のように人はリアムのステージの前へ足を運ぶはずだ。   そのリアム・ギャラガーがジョン・スクワイア(ex-the stone roses)とタッグを組み3/1にアルバムを発表する。30年前であればきっと英国の人たちは興奮のあまりアメリカへ紅茶を売るなとか、フットボールをサッカーと呼ぶ国へのプレミアリーグの放映権を停

          【レヴュー】Liam Gallagher & John Squire

          【映画レビュー】ミッドサマー(MIDSOMMAR)

           物語の中盤で、学友と自国の夏至祭に参加したスウェーデン出身の 友人のペレが、取り乱した様子の主人公ダニーへ言う。 「君の気持が誰よりわかる。でも僕は喪失感とは無縁だった。 この地に”家族”がいるからだ。みなが僕を力づけてくれた。 共同体が僕を育てた。僕はいつも守られていた。家族の手で」  ミッドサマー(MIDSOMMAR)がどんな作品なのかを問われれば この台詞を聞くとよくわかる。  四人の男子大学生と、そのうちの一人クリスチャンの恋人の女性ダニーは、四人の内の一人のスウ

          【映画レビュー】ミッドサマー(MIDSOMMAR)

          【レビュー】The Street Sliders|ライブBlu-ray+CD『The Street Sliders 40th ANNIVERSARY “Hello!!”』12月20日タワーレコード限定発売

           '23年5月3日に武道館で行われた23年振りの ストリート・スライダーズのLIVE演奏映像を収めたBlu-ray盤とその5日前に豊洲PITで行われたプレライヴの音源のみのCD盤セットが12月20日に発売された。Blu-ray盤には豊洲PITLIVEの特典映像が4曲分収められている。  このセットでは豊洲PITのLIVEを観たい聴きたいというファンが多いのではないだろうか。  なにしろこの豊洲PITLIVEはメンバー四人が集結し、人前で演奏する23年振りの初LIVEだったの

          【レビュー】The Street Sliders|ライブBlu-ray+CD『The Street Sliders 40th ANNIVERSARY “Hello!!”』12月20日タワーレコード限定発売

          【エッセイ】師走

           12月が近づいて来ると、何だか気ぜわしくなっていく。  景気とは関係なくまたかとげんなりするような、それにしても気分がほんの少しだけでも高揚するようなのは、これを超えれば新年だと思う気持ちがそうさせるのか。  一年の疲れや溜まった思いを12月の気ぜわしさで綺麗さっぱり洗い流すつもりで、といったところでもあろうか。やけくそみたいではあるが。  新年を迎えるにしても、その前にやれ忘年会だ、クリスマスだとかまびすしい。嫌いでは勿論ないのだが、やらなければならないことが公私ともに

          【エッセイ】師走

          【エッセイ】秋の日暮

           スーパーマーケットで秋刀魚の初売りを見かけると、 ああそろそろ衣替えの季節が来るかと、 外の風の冷たさと早い日暮れが身に迫ってきて 帰宅して納戸を開けてさて何をどこへ仕舞っていたかと 探しているうちに、時間がかかればかかるほど、 つい急がないものまで見つけてしまう。  ああ、これは妹が昨年置いていった麦酒だと、 あれは秋だったか、残して行ってしまったなあいつは、と 飲もうか飲むまいか気持ちが急いているのに手が止まっている。  ハロウィンの飾り付けをしていると いい歳をしてお

          【エッセイ】秋の日暮

           【詩】水晶の朝

              訪れはいつも不意にやって来る  準備も出来ず  冷たい身体  硬くなっている身体  変わらない表情  動かない身体  氷点下の部屋  灯る蛍光灯  停車中のパトカー  救急車はなく  降り続く雪  開け放たれたドア  見えない顔  行き来する警官  回る赤色灯  激しさを増す雪  警官の声  聞き取れない声と  聞こえて来る泣き声  救急車が到着する  運び込まれるストレッチャー  指が剝がれなくなる程に  冷たいドアと肌  車の中だけが暖かく  途端に涙が溢

           【詩】水晶の朝

          【短歌】夏の6首

           ・いっぱいに 夜空を泳ぐ 花火群 浴衣の童子が 地平線追う  ・汗をかき 風鈴の音で 擦り下ろす 山わさびの 辛み運ぶ風  ・初盆の 揺れる団扇の すき間から 炎に揺れる 写真の笑顔  ・満天の 星の夜空超え 届く音 北斗の氷 溶かすまでに  ・朝方の 川の流れに 耳澄まし 庭の水遣り 一人済ます  ・獅子唐を 嚙み切る笑顔に 浮かぶ汗 漏れる簾の 柔らかい光 

          【短歌】夏の6首

           【エッセー】迎える朝

           部屋に入ってみると、そこは何も変わらない。変わっていない。  荷物が少し増えたくらいか。毎朝掃除をしているし、棚の奥の溜まった埃はそのままだ。  気のせいか少し冷えた感じがする。気のせいかもしれない。でも気のせいではない。  もうここには誰もいないのだ。  部屋の窓から透明な光が射し込む。塵が空気の中をゆっくりと回転している。いつまでも、消えずに、光の中で。   スリッパを脱ぐ。ベッドの上に腰掛ける。  本棚には定期購読している仕事の雑誌、そして旅行の土産物が飾ってある。

           【エッセー】迎える朝