四十代非モテ非バリキャリ女子のある日の「ご褒美午後休」について

【プロローグ】
 その日私は午後から休みを取った。私の会社には午前休、午後休の制度があり、午後休の場合は通常通り出勤し、正午になったら自席で昼食を広げる同僚を横目に「あら、みなさん午後も労働されるんですの? なんてお気の毒に。わたくしはもう今日はおしまいですのよ、ホホホ」などと「パンがなければケーキを食べれば良いのに」的な風を吹かせながら荷物をまとめて颯爽と職場を去る、という流れになる。一日休みももちろん嬉しいのだが、午後休は「さっきまでみんなと一緒に働いていたのに、自分だけ先に帰っていい」という特別感がたまらない。しかも、今日の午後休はいつもとは一味違う。ずっと実行しようと思っていた「ご褒美午後休」なのだ。
 というわけで今回は、四十代非モテ非バリキャリ女子が実践した「ご褒美午後休」について書いてみたいと思います。

 予算:一万円
 行程:正午に職場を出て、車でデパートに行き、駐車場無料時間内で楽しむ。

目的① お気に入りのマッサージ店で六十分間マッサージをしてもらう。
6,600円
 職場の近くにある、デパートに車で乗り入れ、テナントで入っているマッサージ店へ。ここは国家資格を持ったマッサージ師さんが個室で施術してくれるタイプのお店で、雰囲気も良く、清潔感があり、何よりも特別感がある。今回は久しぶりの来店だ。
 六十分コースにしたのは、ホームページに「おすすめ」と書いてあった(そういうのに本当に弱い)のと、六千円プラス税という値段が予算的にもちょうど良かったから。マッサージ店は世の中に沢山あるけれど、マッサージ師さんに当たりはずれがないのもこのお店の魅力のひとつ(それが国家資格ということなのか)。今回も上手な人だった。

 ちなみに、始まる前にマッサージ師さんが私の背中や腰を少し触ってから、「腰は痛くないですか? 」と聞かれたので「特に自覚症状はないです」と答えたものの、施術が始まるとやたら腰を揉まれ、しかも揉まれるたびに痛かったので、終わってから「もしかして腰も凝ってましたか? 」と確認したところ、「はい。そのほか、眼精疲労もありましたし、足の脛も張っていました」と言われた。つまりはどうやら私、全身凝っていた模様。きっとマッサージ師さんにとって私の身体は難敵だったのだろうけれど、おかげで全身がほぐれ、なんだか心まで軽くなったような気がした。

 お会計時にデパートの駐車券にスタンプを押してもらい、三時間無料となった。つまりあと二時間過ごせることになる。オーバーしたら追加で駐車料金を払えばよい話なのだが、つい無料時間内に収めようとするところが何とも小市民である。

目的② 普段食べられないランチを食べる。
880円
 今回一番お店選びで迷ったのがランチである。高級なランチを食べるという選択肢もあったが、予算的にも、(この後の目的にかかわる)お腹の余裕的にも厳しくなってしまうので、デパートを一旦出て、向かい側にあるとんこつラーメン店に行くことにした。

 みなさんは一人で臆せずラーメン店に入れるタイプだろうか。私は割と臆しちゃう(とはきっと言わない)タイプなので、過去に利用したことがあるこの店にした。ちなみに、ランチよりも先にマッサージに行ったのは、食後すぐにマッサージをするのは良くなさそうだと思ったのと、ランチタイムを外した方が店が空いていて入りやすいと考えたからだ(そして実際ラーメン店は空いていた)。確かに良い作戦だったのだが難点もあり、マッサージ中、特に後半は何度もお腹が鳴ってしまい恥ずかしい思いをする羽目になった。けれどもあまりに何度も鳴りすぎて最後は気にならなくなったのでよしとする。

 久しぶりの来店なので、食券を買ったは良いが席に着くまでにもたもたしていたら、留学生らしきアルバイト女性が親切に案内してくれた。ラーメンを待ちながら「あの子は外国に来て勉強しながら働いていて偉いなあ」と勝手に感心していたけれども、日本語は堪能だったし、そもそも学生だという確証も特にないので、私のただの妄想かもしれない。ちなみにランチタイムは大盛り無料らしく、食券を渡すときに確認されたが、この後の予定があったためにお断りした。しかし私の後に入ってきた一人客の女性が大盛りに変えていたので、なぜか敗北感を覚えた。何の勝負なのかは自分でも分からない。

 ラーメンはおいしかった。それなりの年齢の女の人って意外とお店でラーメンを食べる機会は少ないし、特に私のように一人でお店に入るとおどおどしてしまうタイプは、このような機会は貴重である。
 「一人でラーメンを食べられるなんて、私って大人だな」と思いながら、颯爽を店を出ようとしたら、店の扉が上手く開けられず、先ほどの親切なアルバイト女性がサッとやってきてとんまな客のために開けてくれた。なんて気の利く子だ。日本で楽しい思い出をたくさん作って帰って欲しい。もしかしたら日本生まれ日本育ちの子かもしれないけれど。

目的③ 高級ケーキでティータイム
1,650円
 ご褒美の締めくくりは高級ケーキ。デパートに戻り、一切れ千円以上しちゃう高級ケーキ屋のカフェで優雅なティータイムである。平日の昼間だから、カフェは閑散としており、二人組の女性客が二組いるだけ。なぜか店の対角線上にそれぞれの組が陣取っていたため、私は店の真ん中の席へ。平日の弊害なのか、提供できるケーキの種類は多くはない。でも私としてはその方が逆に助かる。多すぎると迷っちゃうもの。
 結局マンゴーとイチゴが載っているタルトとダージリンを注文。まずは紅茶を一口。茶葉の香りがほんわかと鼻に抜けていく。ちゃんとしたお店で飲む紅茶って、こんなにおいしいんだ。当然だけれど、たまに家で飲むティーパックとは大違いである。うん、優雅な気分。

 二口紅茶を飲んで、早速ケーキに取り掛かる。普段はスーパーに併設された全国チェーンのケーキ屋さんの五百円くらいのケーキをありがたがって食べているのだが、お高いケーキは何が違うって、乗っているフルーツの味が濃い。クリームと一体というよりも、それぞれが個性をぶつけあっている感じ。そしてまた紅茶を一口。あー幸せ。

 他のお客は楽しそうにおしゃべりをしている。友達とくるカフェも楽しいけれど、ついお話に夢中になって、紅茶もケーキもグビグビバクバク口にしてしまうから、こうしてゆっくり味わうには、ひとりで来るのが得策なのかも。ひとりでいろんなカフェを巡ってみるのも面白いかもしれない。
新しい趣味が産まれそうな予感を覚えつつも、結局紅茶もケーキもおいしすぎて、あっという間に平らげてしまった。趣味にするにはゆっくり味わう練習が必要なようだ。

 ちなみに、ランチをラーメンにした理由のひとつに、「お腹がいっぱいになりすぎないから」というものがあったのだが、冷静に考えると確かにお腹はいっぱいにならないが、カロリー的にはいかがなものか(よりによってとんこつラーメンだし)、という事実にこのあたりで気が付いた。カロリーも加味するのであれば蕎麦一択だったと思ったが、比較的蕎麦はお店で食べる機会が多いし、何より今日はご褒美なのだから、カロリーのことは考えないことにした。

おまけ(おみやげ)ベーグル三つ
660円
 カフェを出た時点で駐車場の無料時間終了まであと三十分。駐車場の入り口に向かってのんびり歩いていたら、お気に入りのベーグル屋さんが期間限定で店を出していた。普段は県外や郊外に行ったときにしか買えないので、これ幸いとばかりにプレーンを三つ購入する。色々と魅力的なアレンジベーグルが並んでいたが、私も年を重ねたから知っている、結局一番使い勝手が良いのはプレーン。甘いベーグルはそのまま食べる分にはおいしいけれど、何かを挟んだり、ご飯として食べるには主張が強すぎてしまうのだ。
個性が薄いっていうのも決して悪いことではない。なにものでもないやつほど、なにものにでもなれる。そういうものだよな。妙に納得しながら駐車場までの道をのんびり歩いた。

【まとめ】
支出合計 9,790円
 というわけで、今回のご褒美午後休の行程は無事終了。たまにはこんなご褒美も必要ですよね。それにしても、ランチよりもケーキ単品の方が高いって、なんだか変な感じがするのは私がカフェ慣れしていなからでしょうか。何はともあれリフレッシュ完了。これで明日からバリバリ仕事頑張るぞー!

とはならないけどね。


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