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「セ」アブラマシマシ豚骨ラーメン
『』内の語はショウゴのモノローグを表す
━━━手に着いた血をデニムジャケットの裾の裏でぬぐい、ショウゴはラーメン弥彦へ入った
「へい、らっしゃい!空いてる席どうぞ」
『年中機嫌の良い店主は頭が空っぽなのではないかと思う』
「ネギ醤油ラーメンに味玉付きで」
「ハイ ネギショー アジタマツキデ!」
━━━ショウゴは爪にこびりついた血をおしぼりで拭き取る
『この店のネギ醤油ラーメンは最高だ。黄色い昔ながらのちぢれ麺が、醤油ベースの旨味を凝縮したスープによく絡み、麺を啜るたびに至福の境地へ連れて行ってくれる』
「最近はあれかい?仕事の方は順調なのかい?」
━━━ラーメンを調理しながら店主がショウゴに尋ねた
「まあ、前よりは依頼が減っちゃったけど、それでも何とか暮らしていけますわ。医者にかからずここまでやってこれたのも、ここのネギ醤油ラーメンのお陰っすかね大将」
「んなこと言ってくれちゃあ、大将嬉しいねえ、張り切って作っちゃうよ!」
━━━ショウゴが入り口横の本棚を見やる
『特攻の拓は最高の漫画だ。あれが芥川賞を取らないなんて、日本の文壇は終わっている』
━━━ラーメンが出来上がる
「ハイ!セアブラマシマシ豚骨ラーメン一丁!」
「ちげぇよ!」
『店主は頭が空っぽなのではないかと思う』
幕が閉まり、幕前に演者が整列し、一斉に挨拶をして円山小学校4年3組の劇「ラーメン弥彦」は終わった。
現在、円山小学校の学芸会について語る批評家は、この2010年の4年3組以降の演劇を「ポストラーメン弥彦世代」として論じている。